今日もお茶を淹れる理由

私は30歳になって、何か違う景色が見てみたいと思っていました。
20代にはない、自分が見たことのない景色を見てみたいと思ったんです。
それで、姉を誘って日本の茶道を体験しに行ったのがきっかけで茶道の道に入りました。

ところがコロナになって、茶道教室がなかなか再開できないということで、その先生のお教室からは離れることになりました。
少し家から距離があって通うのも厳しかったのもあったので、お互いちょうど良いタイミングだったのかもしれません。

新たな場所で、やはりお茶の時間が欲しいなと近所の茶道教室を探して回っていた頃、台湾茶・中国茶の先生のお教室に出逢いました。

その先生の存在感に圧倒されて、一瞬で引き込まれました。
私の中のセンサーがバチッと立った瞬間でした。「今とくに生徒さんの募集はしていないけど、今度一度飲みにきてください」と言ってくださり、行った時のお茶の味に衝撃を受けました。

潤った果実のような、静かな湖面を眺めているような、純粋な湧水が重なって生まれた雪の結晶のような、繊細なのに力強くて甘くて渋くて深い、意志のあるお茶に初めて出逢いました。

そこから先生に教えを乞うようになって今に至ります。

初めてのお稽古で「私から直接こうしてくださいという教育のような教えというのはしないつもりです。毎回自分で何を学びたいか考えて、自分で学んでいってください」と言われたのが衝撃的でした。

掃除をして自分の心を整えて、準備をしてお茶を淹れる。その時間は人がいるのに、始終心の中で自分と対話する時間になりました。

先生が教えているのは、お茶であってお茶じゃない。

それまで私が知っていた茶道は、お手前のことだったり、形式だったり儀礼の茶道だったから、こんなにも心と対話する茶道というのは初めてでした。

自分の心が全てを決める、それを映してくれるお茶は鏡だし、その鏡を見て私は自由にもなれるということを知りました。
お茶を通じて心とつながり、世界とつながったんですね。
だから私は今も毎日心と世界をつなげるためにお茶を淹れ続けています。
それは、飽きることのない自分の世界への冒険です。

きっとみなさんにもその鏡になるような存在があると思います。料理だったり、掃除だったり、スポーツだったり、アートだったり。

人は実際に行動をするから成長するのか、または自分の心が成長するから行動ができるのか、どうなんでしょうか。まだ答えは出ないけれど、私は今日も冒険のためにお茶を淹れ続けています。

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