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盛欲2

 マッサージ店に行く当日になった。今日は7時に起きたからか、いつもより頭の中がすっきりして、日光を浴びていると気持ちよくなった。性的なオーガズムとは違う快感だった。こんなに気持ちが良い朝を迎えたのは久しいので、サカナクションの「忘れられないの」を掛けながら顔を洗った。鏡に映る僕の顔はハリがあった。

 10時になった。今日は11時に美容院を予約していたから家を出た。家から美容院までは自転車で行った。ロードバイクのBianchiが愛車だ。
自転車で走っている時も今日あるマッサージの事が頭の中をぐるぐる回っていた。そして、美容院に着いてから髪を洗っている時も切っている時も頭から離れなかった。
好きな曲を繰り返し繰り返し聴いていると錆のように頭にこびり付いて離れない感覚と似ている。
そして、髪を切り終わりお腹を満たしたいと思いマックまど一直線に自転車を漕いだ。

 お店に入り、マックシェイクを頼んだ。支払いの時、たまたま先週の土曜日僕のバイト先に来た少し可愛いお客さんが店員としていた。
髪を直そうとしたが、ワックスを付けている事を忘れていた。うっかりしていた。そのお姉さんは笑顔が素敵な人という第一印象を抱いていた。笑顔が素敵な人は自然と綺麗な上品な女性に見える。将来結婚するなら笑顔が素敵な女性としたいものだ。

 家に帰ってきてから、マックシェイクを急いで飲んだためか、お腹が痛くなりトイレに駆け込んだ。座った瞬間勢いよくうんこが出た。若干水分が多めのうんこだった。僕は基本うんこをした時トイレの中を見ないように流す癖がある。なぜならもし、それが食事中だったら食欲が下がり最悪だからだ。
トイレをしてスッキリしてから出かける準備を始める。汗を拭くハンカチ、財布、家の鍵、文庫本、スマホと。準備ができて靴を履いて、電車の時間を調べる。調べ終えたらそれをスクショして扉を開け鍵を閉めて歩いた。
いつも歩き慣れているはずの道だが今日はなんだか初めてくる場所に来たような冒険心が働いた。今すぐ逆立ちしたいような気分だった。逆立ちは補助か壁がないとできないのに。なぜ逆立ちしたいのか自分でも分からなかった。

 15分歩いて駅に着いた。改札に着いてカードを通した。残高は1023円だった。余裕で足りるので、特に心配はない。ただやはり、マッサージ店がどういう所でどんな人が施術するのかが心配だ。電車に揺られながら景色をぼーっと見ていた。ひたすら景色を見ていた。駅に止まって扉が開くたびになだれ込んでくる人達を見たりしていた。世の中色んな人間がいるからか、これもなぜか見ていて飽きない。それも飽きてきたら積読していた文庫本を1冊読んだ。本は現代社会における唯一自分と向き合う事ができる至高の機会だと僕は思うのだ。自分と向き合うことで今自分に何が足りないのか、どういった人間なのかなど自分を客観的に見れる事が良い。定期テストの見直しをするのと同じような感覚に近い。

 暫く本を読んでいると、目的地である豊田に着いた。遂にここまで来た。来たからには逃げずにいきたい。途中で逃げては腰抜けの男として神様に汚名を着せられる。人生初のマッサージなのだ。こんな機会早々ない。これも人生経験として自分に言い聞かせてみるか。豊田駅に着いてからは目的地の店まで歩いて行った。まだ夏の蒸し暑さが肌にへばり付いて離れてない。もう残暑はとっくに過ぎているのに。


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