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曇りのち布団

 明日は布団が空から降ってくるんだって!
その何気なく可笑しい一言が頭の中をよぎり我に返った。
「おい!玉木!授業中に寝るんじゃ〜ねぇ〜!
分かったな?!」こう僕に怒鳴ってきた先生の名前は華宮先生だ。華宮先生は授業中に寝たり、窓の外から景色を見て授業を聞いていないとすぐに怒ってくる。しかも他の学生よりも当たりが強い。
 夏がまだ始まって間もなく、蝉の鳴き声が窓から教室に響き渡る。そして僕の耳にまできた。
「学生時代の中でな、中学生の時期がいっちばん楽しいんだぞ〜」と中学の入学式前にお父さんが言っていたのを思い出した。そして、入学してから三ヶ月たったが、いまいち楽しさは分からない。勿論友達と遊んだり話している時は楽しいけれど、それは日常と化していた。だが、好きな女の子や初めましての人と話す時、部活で新しい事を覚えた、できた時なんかは刺激があり毎日が楽しい。だがそれも長くは続かない事を知っている。それですら刺激に慣れてしまい、日常として認識してしまう。
 夏休み前最後の授業を受けている時、前の友達が「なぁなぁ玉木。夏休みどっか遊びにいかね?」と体をこちらに向け話しかけてきた。「おい!授業中やぞ!話してたらまた怒られるて!」
と言い話を流した。その時は国語の授業で先生は華宮先生だった。よりによってなんで僕の友達はこんな時に話しかけるのかと疑問に思った。多分僕が華宮先生に何度か怒られているのを知っていてやっているのだろう。僕が軽く話を流してもまた話しかけてきた。「おい玉木〜、無視すんなてせっかくの夏休みやん!」そう言うと、「まだ始まってねーよ」と僕は小さな声で言った。そして、何回かこの仲の良い友達特有のダル絡みをしている内に眠くなってしまった。「ちょ、俺眠くなってきたからさー、音読の時とかなんか当てられたら教えてや」前の席の友達にそう言うと僕は眠りについた。隣の女子は「また眠ったよ!」となぜか嬉しそうにしており、周りの友達に報告していた。
 眠ると夢を見る。そう、夢を見るんだ。どんな夢かだって?それは空からものが降ってくる夢だ。日によって違うがチョコや爆弾、きゅうりなど色々なものが空から降ってくる夢を見る。そしてその夢は一度しか出てこなく、忘れたら思い出せない。今日は空から布団が降ってくる夢だ。「布団が空から降ってきたらどこでも寝放題じゃん」と夢の中で冷静に分析した。「は〜あ、僕もこのままずっと寝ていた、、、」
「おい!おい!玉木!起ーきろ!オキロ!なにヨダレ垂らしながら寝ているんだ!」華宮先生ご立腹の様子で流石の僕も寝ている頭を無理やり起こし、あたかも寝ていなかったかのように振舞った。ただ華宮先生が珍しく「どんな夢だったんや!」とエセ関西弁で聞いてきて驚いた。
僕は「空から布団が降ってくる夢を見ました!」とイキイキと答えた。「んな訳あるかい!」と
とりあえずツッコんできた。
今日は曇りのち雨らしい。部活は体育館でやるから関係ないが、帰りに服が濡れるから面倒臭い。今布団が降ってきてくれたらな〜とふと思った。
この小言が聞こえていたのか、前の席の友達が
「雨の中眠れるわけね〜だろ笑」とツッコんだ。

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