星と翼のパラドクスはなぜ死んだのか

　独断と偏見で考えた、確たる証拠や統計もないチラ裏です。文章のもまとまりは無く、稚拙な文ですが、野獣先輩新説シリーズを読むノリで読んでいただければ幸いです。

　斜陽産業のゲームセンター事業へ一石を投じる気概を持って現れた星と翼のパラドクス。皮肉なことにそれは莫大な設備費と維持費で店舗に負担を強い滅亡へと歩みを進めることとなった。

　某脅迫事件、世界的な感染症による外出自粛によって彼は殺されたのだろうか。後者はゲームセンター事業のみならず、様々な業界へ致命的な打撃を与えた。旅行業界の相次ぐ倒産は記憶に残っているだろう。確かに、これらいくつかの避け難い不幸は閉幕の原因の一つとなったことに違いはないと言える。しかし、私は彼が生まれながらに矛盾を抱え、その矛盾が死因となったのではないかと考える。

星と翼のパラドクス、「パラドクス」が意味するものは

　星と翼のパラドクスの売りは何と言ってもその「体験」にある。エア・リアル（本ゲーム内でのロボットの総称）を二つのレバー、二つのペダルで操作する。エア・リアルの動きに合わせて座る椅子が稼働するのは、本当に自らが操縦席に座り操っている気分にさせてくれる。臨場感である。ヴァーチャルリアリティが急速な発展を見せるゲーム業界でも、椅子はまだ椅子である。少なくともこの日本の9割以上の国民がこの体験を家では味わうことができないだろう。

　しかし、その体験は遊園地アトラクションのそれと変わらない。いや、それ以下かもしれない。いやそれ以下じゃないかもしれへんわ。ｲﾔ断定すんのやめとくわ。確信がないわ。あってるかどうかわからへんから。
ゲームセンターに人が来る。家族連れ、学校の友人同士は、その存在感ある筐体に目を惹かれるだろう。「機体の操縦に合わせて椅子が動く」のはなんとも面白そうであり、――おお、なんと！足場にペダルまである！１回プレイしてみたいとなるのは不思議なことではない。微妙に高いプレイ料金を乗り越えレイカに分からされた（分からせた）プレイヤーは「難しいけど楽しかったな」と個人差はあれど満足感を得るだろう。そう。これで終わりである。「またやりたい」や「これを目的にゲームセンターに来たい」と思ってくれる人はどれほどいるだろうか？
もろちん、これは運営が一回きり さん達をメインターゲットにしているなら問題はないだろうが、十中八九そうではない。継続してプレイしてくれるような人々がメインだろう。では、個性的な「椅子が躍動するハイスピードメカアクションゲーム」がなぜ十分なファンを得ることができなかったのだろうか？それは、ある要素が原因だろうと私は推測する。

その要素とは「ゲームシステム」である。端的に言えば「難しすぎる」のである。ルールはこうだ。８対８、ポートと呼ばれる陣地を取り合い、それにより攻撃可能となる相手コアのゲージを０にした方が勝利だ。いくつかマップはあるがポートは全体で５つ。そのうち３つ以上占拠することで、その間相手コアの障壁が解除され攻撃が通るようになる。単純に聞こえるが、非常に多くの要素が絡むうえ、切り替わりが速い。有利に思えても10秒と経たず形勢が逆転することは少なくない。このゲームは陣取り合戦であり、敵機の撃墜は手段に過ぎない。最終的にものを言うのは対人の腕だが、ただ目につく相手を片っ端から撃墜しても勝てる場合は多くない。マップ全体でのポート占拠数、敵味方の状況、残り時間これらが目まぐるしく変化する中でそれらに気を張ったまま目の前の相手を倒さなければならない。これは一定以上の階級で渡り合うために必要な技術であり、身に付き始めると非常に楽しさを覚える。無意識にこれらが行える境地であれば問題はないだろうが、普通は思考がそちらに持っていかれ、椅子が動いていることは忘却の彼方へ追いやられる。ゲームシステムの複雑さが、ゲームの個性を消す方向に作用してしまっているのだ。ホラーゲームで有名な「SIREN」のレビューにはこんな一文がある。

異常なまでの難易度――何度も死んでいるうちに恐怖より理不尽なゲームオーバーに対する怒りの方が上回ってしまうという事態になりがち。『ゲームカタログ@Wiki ～名作からクソゲーまで～』より抜粋

ホラーゲームのアイデンティティがゲームのシステムによって殺されてしまっている。星と翼のパラドクスでも同様の現象が起こっているのではないだろうか。これは矛盾という意味では「パラドックス」といえる。

ゲームのプレイ料金もユーザーの定着を妨げる要因だと考えるが、これに関しては開発云々ではないと考えるのでここでは割愛させていただく。
あと飽きたので言いたいこと箇条書きで書き殴ってお開きとさせていただきます。

• テコ入れに鳴り物入りで現れた2on2は致命的なバグをひっさげて8on8に多方面から追い打ちをかけた！ただでさえ16人必要なのに分散させたらあかんのちゃう？しかもフリーズバグでさらに人減るの狙ってるなら秀才

• 「難しすぎて椅子揺れ体感微妙」問題は、PvE（協力してNPCのボスを倒す）モードをもっと掘り下げればよかったのでは？現に筐体を買い取って既存の家庭用ゲームとつなげて楽しんでいる人いたし。チュートリアルであんな長距離フルドライブできたのにいざ始めるとあんなシチュエーション無いの酷くない？WowWow

• いろいろ文句はあるけど、稼働初日から最終日までなんだかんだ楽しませてもらいました。ありがとう。全国のすべてのゲーセンからから星翼の筐体が消えた日にはまた何か好き勝手語ろうかな。

終わり！閉廷！