中判フィルムと大切な日々。
今回は中判フィルムとの出会いをお話しようと思います。
数年前、自分の好きだと感じる写真に対して「なぜ好きだと思うのか?」という理由を深堀りし、自分と写真について考えるという機会がありました。
今まではただ漠然と好きだと思うことはあってもその理由について深く考えることはなかったのですが、そのときに選んだ写真のほとんどが中判フィルムで撮影されたものだという共通点があったのです。
中判の写す写真にはすぐそばに在るかのような立体感があり、優しく透明感のある色やそこに漂う空気感にあっという間に魅了されてしまいました。
その中でも、大好きな写真家である濱田英明さんが使用しているPENTAX67で撮影された写真に惹かれ、このカメラを使用してみたい!と強く思うようになりました。
それから少し後になって偶然にも知人が貸してくれることになり、2ロール程撮ってみたのですが、バケペンは私の体にはあまりにも大きくて重く、このカメラを扱うのは難しい・・と思い泣く泣く諦めることに。
それでも中判フィルムカメラへの憧れは捨てきれず探していたところ、川原和之さんや、久慈鈴奈さんの写真を拝見しました。
Hasselbladで切り取る日常があまりにも優しくて素敵で、実際にカメラ屋さんに見に行って手にしたときのしっくり感もあり、気付いた時にはハッセルが手元にありました。
このカメラでの撮影体験は唯一無二で、
1枚の写真を撮るためにひとつひとつの動作を丁寧に行う時間が好きでした。何より、ファインダーを覗いた時の感動は忘れられません。
現像から帰ってきた際、うまく撮れていないものもありましたが、ピントや露出がバチっと決まった写真は思わずため息が出るほどでした。
1ロールたったの12枚。
いつも以上に丁寧に丁寧にシャッターを切りました。
また、海外では中判フィルムで結婚の写真を撮る『ファインアートウェディング』というものがあることを知り、「いつか結婚するときは中判フィルムで前撮りをしたい」と密かに思い描いていたのですが、一昨年その夢を叶えることができました。
満開の桜の下、一生に一度の写真をこのような形で残してしてもらえたことは私にとって大切な宝物です。
近年フィルムの高騰が止まらずハッセルの出番がほぼなくなってしまったため、たくさん使ってくれる人の元へ・・と思い手放してしまいましたが、もう一度あのカメラで撮りたいという気持ちが強いです。
最近は35mmフィルムのカメラで撮るか、デジタルで撮影し、中判フィルムの写真を再現できるよう試行錯誤していますが、やはりあの空気感や質感に近づけられるようになるには一生かかっても難しいかもしれません。
なによりも、フィルムで撮ること自体に、デジタルでは感じることのできない時間が流れているような気がしています。
この先もフィルムがなくならない世界であることを願っています。
最後にハッセルで撮影した写真を少しだけ。
スクエアがとっても可愛いです。
やっぱり中判フィルム、いいな・・・