君の手に花束を
だいぶ前の話なのですが、以前の直属の上司であり、今もとてもお世話になっている方から、「(私がいる部署の持ち物の中に)白い養生テープって無かったっけ?あったら欲しいんだけど」と言われたことがありました。
見覚えが無かったので「いや〜ないと思いますね……。」と答えた数日後、部署の倉庫の中からそこそこな数の白色の養生テープを見つけてしまいました。嘘をついてしまったなあと結構長い間引きずっていたら、何故かつい先日「すみません、白色の養生テープまだ使いますか?あったんですけど……。」と上司に聞くという夢を見ました。
さすがに引きずりすぎだろと思っていたら、その日の午前中にその上司から電話がかかってきて、「そこに白いガムテープって無かったっけ?」と聞かれました。まさかの予知夢。(テープの種類は違うけど)
これでまた数日後に白色のガムテープを見つけてしまった際には、私はまた夢の中で申し訳なさそうに上司に「白いガムテープまだ使いますか?」と尋ねるのでしょう。
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さて、話は変わりまして、今回はあるバンドのある方のことについて書きたいと思い、noteを開きました。
ある方とは、先日MUCCを脱退したドラムのSATOちさんです。
「脱退」という2文字を打っただけでちょっとウルッときてしまったのは、まだ完全には受け入れられていないからなのだろうなあと思います。
以前に別の記事で書きましたが、私は大学時代に行ったフジソニックでMUCCと出会いました。
そこから大学時代の先輩にほとんどの音源を貸していただき、しばらくずっとMUCCばかり聴いている時期がありました。
その後cali≠gariと出会ってしまったが故、アルバム『脈拍』以降の音源は全然追っていなかったのですが……。
正直、MUCCは絶対誰も居なくならないと思っていました。だから聴きたくなったら聴けば良いし、いつか機会があればライブも行けたら良いだろうしと考えていたんですよね。
この世に"絶対"なんてないってわかっていたはずなのに。
去年の12月、突然発表されたSATOちさんの脱退は、MUCCから離れていた私にとってもだいぶショックでした。
ファンの皆さんはもっともっとショックだったことでしょう。
でも、中にはそんな気がしていたという声もあって、MUCCを昔から見てきた人には何かずっと違和感みたいなものがあったのかもしれません。
私も、『脈拍』の付属DVDを観た時に、MUCCってこんなにピリピリしているのかということを知ってしまって、それ以降ちょっと怖くてそのDVDが観れていなかったので、その雰囲気がずっと今まで続いていたとなると、まあわからなくもないなと思います。
発表から間もなくして発売された『音楽と人』のSATOちさん単独インタビューも、読んでいてすごく辛くなってしまって、SATOちさんはこんなにも長い間苦しんでいたのかとさらにショックを受けました。ファンの皆さんも同様のようでした。
↑この記事です。読み返したらやっぱり辛くなってしまった。
同時に、私を含めたくさんの人が同じ気持ちを抱いていることがわかりました。
SATOちさんには、幸せでいて欲しい。
MUCCにいた期間にも楽しかったことはそこそこあったとは思うけれど(本人もそう言っていてホッとした)、MUCCを離れたとしても、ずっとずっと幸せでいて欲しいと最終的には思うようになりました。
そこからもMUCCを聴くモチベーションがあまり上がらなくて(ごめんなさい)、配信も色々やっていたみたいだけれど全然観れなくて、でも最後のライブだけは配信があったら絶対に観ようと思っていました。
その最後のライブがめちゃくちゃ延びましたが。笑
春に行うはずが、コロナの影響で延期になり、SATOちさんがコロナに罹ってしまい再び延期になり、さらには緊急事態宣言でライブ会場が使えなくなって延期になり……と延期に延期を重ねて、先日の10月2、3日にやっと開催することができたわけです。
SATOちさんがコロナに罹ってしまった時、入院しているという発表もあって、これはかなり重症なのでは?ととても心配になりました。実際、血中酸素濃度が86しかなかったレベルで重症化していたらしく(YouTube番組での発言)、本当に無事で良かったです。
自分のせいでライブが延期になるのが怖くて、誰にも言えずに、12日間くらい(本人談)ずっと1人で自宅に引き篭って苦しんでいたSATOちさん……。そりゃあ怖いよね……。
不謹慎of不謹慎ですが、なんだかSATOちさんがMUCCを去ることを寂しがった神様が、どんどんどんどんその日を先延ばしにしたのではないか?と思ってしまう程でした。
そんなこんなで迎えたラストライブ
「MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world」@ザ・ヒロサワシティ会館大ホール
2日目公演を配信で観ました。
SEが流れる中1番最初に現れたSATOちさんは、胸をトントンと叩いていて、最後なんだと自分に言い聞かせているように見えました。
その後次々と他のメンバーもやってきて、ライブスタート。
逹瑯さん歌うまっ!ミヤさんキレッキレ!YUKKEさんのベースの安定感!SATOちさんのドラムのパワフルさたまらん!やっぱりMUCCかっけーな?!となりましたね。
最新アルバム『惡』を中心としたセットリストでしたが、そのアルバムを聴いていないので、ほぼ初聴きの曲ばかりでした。それでもやはり1度好きになったバンドの音楽は好きに決まっていました。
アルバム曲以外にも、合間合間に昔の曲をやっていましたが、それがまた本当に良くて。「娼婦」とか「スイミン」ってこんなにかっこいい曲だったっけ?!って驚いたくらい。密室系と括られていた頃の曲たち、曲の構成が意味わからなくて好きすぎるな。
「パノラマ」という曲のラストの方で
今日から 僕「等」それぞれの夢を
飽きもせず笑ったここから(歩き出して)
さぁ行こう 僕等 鮮やかなパノラマへ
どこまでも道は続いてく 続いてく
という歌詞があるのですが、今のMUCCそのものだと思ってグッときていたら……SATOちさんが泣いていた。
1度目のアンコールの時のMCで、SATOちさんが「パノラマとかやばかったー!」と言っていたので、同じようなことを感じていたのでしょうか。こんなに心に刺さった「パノラマ」は初めてでした。
さらに、「スーパーヒーロー」という曲では
会いたくなったらいつ来てもいいんだぜ?
という歌詞があって、そこで逹瑯さん、ミヤさん、YUKKEさんが一斉にSATOちさんの方向を見ていました。打ち合わせとか全くしていなくて、本当に偶然だったらしい。これまた泣けたし、SATOちさんはバッチリ泣いていた。泣かないわけないよねあんなの。
「My WORLD」では、逹瑯さんにドラムスティック(先の方に丸いクッションみたいなのがついているやつね)で頭をポクポク叩かれて泣いていました。水戸組……。
逹瑯さん、ライブ中に泣きはしなかったけど(たぶん)、脱退発表時のコメントとか、MC中のSATOちさんへの優しい言葉とかから、やっぱり1番付き合いが長いこともあって、1番SATOちさんを想っていたのではないかなあと勝手に推測しています。
この曲が来たら絶対SATOちさん泣くんだろうなと思っていた曲、「優しい歌」。案の定泣いていました。笑
最後に全員で歌う部分があって、夢烏(ファンの皆さん)たちがスマホのライトで会場を照らしながら一緒に歌うんですよ。さすがにこの状況下なので歌えはしないけど、鼻歌なら大丈夫だということで、会場にいた夢烏が一斉に鼻歌で歌い始めたのですが……これが本当に良くて。
夢烏の団結力ってすごいなって結構前から思っていたのですが、ここでも全員が1つになっている感じが画面越しでも伝わってきて、めちゃくちゃ泣けました。
途中、逹瑯さんが
「ぶっちゃけね、バンドなんてさ、楽しいことばっかりじゃなくて、みんなの生活とか仕事とかも一緒だと思いますけど、辛いことがたくさんです。楽しいことばっかりだったらいつまでも続けていられるけど、やっぱり辛いことのが沢山ある中、SATOちバンドの最後の思い出、最後のライブがすっげえ楽しかったなっていう記憶・思い出で送り出してあげたいと思っています。」
「(ミヤさんとYUKKEさんを見て)ウチらはもうちょっと辛いの続くね。頑張りましょう。」
と言っていて、MUCCはここまで色々なものと戦ってやってきたんだなということがわかった気がします。
戦うことを辞めて去ることを決意したSATOちさんも、戦い続けることを決意した3人も、どちらも正しいのだとその言葉を聞いて感じました。
その後SATOちさんが涙を流しながら、
「マジで、MUCCに入れて本当に良かったです!ありがとう!」
と言っていて、SATOちさんからその言葉を聞けたことでなんだかホッとしました。きっとずっと苦しんできただろうけど、それでも楽しい、幸せだと思える瞬間が確かにあったのだということを、その言葉から感じ取ることができて本当に本当に良かったです。
あと、SATOちさんすごいなと思うのが、泣いていてもドラムはバシバシ叩いているんですよね。本人はへっぽこだったって言ってたけど、そんなことはなかった気がします。
「優しい歌」の後に演奏されたのは、私がMUCCを好きになったきっかけの曲で、今でも1番好きな曲である「ハイデ」でした。
この曲が、私の中のヴィジュアル系のイメージを変えてくれました。この曲に込められた優しさによって救われたことが何度もありました。特に"悲しみに花束を"というフレーズによって、少しだけでも悲しみを受け入れるための勇気を与えてもらいました。そんな曲を、SATOちさんの最後のライブで聴けて嬉しかったです。もっと大好きになりました。
このライブでは2回(正確には3回になってしまうのかもしれない。理由は後述。)のアンコールがあったのですが、2回目のアンコールが非常に胸熱でした。
まず、SEが「ホムラウタ」であった時点で優勝。MUCCといえばこのSEなんだよな〜。マジでかっこいい。
そして何よりも、ステージに立っていたのはメンバー4人だけ。そこまでサポートキーボードの方がずっといらっしゃったのですが、この時だけはいませんでした。粋な計らい……。
茨城愛が込められた「1997」。ミヤさんが「おいSATOち!今のスピードじゃ終われねえよなぁ???」って曲のラストの部分をもう一度やり直した時、意味わからん早さで弾いてて笑った。鬼かな?(割とそう)
MUCCといえばこの曲!なド定番曲「蘭鋳」。
始まる前にミヤさんが
「終わりは終わりなんだよ!始まりでもあるんだ!受け入れて、次へ行かせてくれよ俺たちを!!!」
と叫んでいて、まさにこの人こそがMUCCのリーダーなのだと実感しました。
ミヤさんのパワーバランスが圧倒的すぎて、バンドの関係性が不安定に見えてヒヤヒヤする場面を今まで何度か見てきたのですが、それでもきっと、ミヤさんがいる限りはMUCCは続いていくのでしょうね。
ラスサビ前の死刑宣告(いつからこのコーナー?出来たんだろうってちょっと気になっている)は、もちろんSATOちさんが担当したわけですが、「俺、夢烏好きだからなあ。死刑にしたくねえよ……。」と言っていて、ここでもSATOちさんの優しさが出ていましたね。その後バッチリ全員死刑にしていましたけど。笑
そして最後の曲は「明星」。
SATOちさんが脱退すると発表されてからしばらくして発売された曲で、実はこの曲に関しては聴いたことがありました。ああ、MUCCというよりかは昔懐かしいムックだし、これこそがムックだというような曲だなと思っていました。
いつか聴いたことがあるかのような懐かしさや哀愁を感じる曲調に、別れや旅立ちを彷彿とさせる歌詞が、MUCC(ムック)らしくて、良い曲なのです。
途中にギターソロがあるのですが、ミヤさんがSATOちさんに捧げるかのように弾いていて、さらにはMUCCに残る3人がMUCCを去るSATOちさんの方向を向いていて、照明でSATOちさんの姿はほぼシルエットしか見えなくて……という演出がこのライブの中で1番グッと来たし、実際アーカイブで観直してはその度に泣いてしまいました。
愛しき日々よ 夢見る明日を
さよならだけが答えではないと
幼き日々を映す明星が 僕等の未来を照らす
この曲こそが、4人のこれからを照らす歌になっていると感じました。
最後に全員が「謡え 笑え」と歌うところでメンバーそれぞれの顔が映されましたが、"最後の4人のMUCC"の瞬間をそれぞれが噛み締めているかのように見えて、これがまた泣けたんだよな。
SATOちさんが何度も「ありがとう」と呟いているのが見えました。ありがとうと言いたいのはこちらの方だ。
すべての曲が終わり、逹瑯さん、ミヤさん、YUKKEさんがステージを去った後、SATOちさんが1人ステージに残って客席に向かって喋っていました。それがマイクを通ってなかったので、リアルタイムでは全然聞き取れなかったのですが、ファンの方のツイートやアーカイブで聞き直したら次のように話していたことがわかりました。
「帰りたくないけど、前に進むためだから……。
今度から俺、夢烏になるんで。マジで。全通するんで。よろしくお願いします。」
先にあげた音人のインタビューの中で、「MUCCのライブを観てみたい」と言っていたのが印象に残っていて、その言葉は本当だったんだな(全通はわからんけどw)と思いました。
会場は拍手が鳴り止まず、私も感傷に浸って動けず、静かにライブは終了…………と思いきや。
突然流れだす聴き覚えのあるピアノの伴奏
上がる緞帳
そこから現れるボーリングのピンのコスプレをしたSATOちさん
ま さ か の ム ッ ク 体 操 第 一 特 別 版
リアルタイムで観ていた時、ライブ本編ではギリ泣かなかったのに、ここで初めて泣いた。笑いで。嘘じゃん……。さっきまでのかっこいいMUCCはどこ……笑。
※通常のMUCC体操はこちら↓。公式から動画があがってるの知らなくて、知った瞬間マジで笑った。
無駄にアップグレードしていて割と戸惑った。でもたぶん1番戸惑っていたのは会場にいた夢烏だと思う。おかげで泣いていた夢烏も笑顔になっていたような気がします。笑
体操が終わり、緞帳が下がってきた……が、SATOちさんが締め出されて再び1人ステージ上に取り残された……。
最後に泣かせて終わらないのがMUCCらしいなって思ったし、SATOちさんもそう言っていました。
SATOちさん、
「俺も前に進もうと思うし、これからもMUCCがずーっと進んで欲しいし、負けないバンドでいて欲しいと心から本当に思っています。なので一緒にね、MUCCを一生応援し続けましょう。」
と言っていて、もう充分立派な夢烏なのではないかと思いましたよ。
続けて、
「私ね、一般人なんで、その辺で俺に会ったら『おい!』って(声かけてもらって良いし)、『飲み行くか?』って言われたら行くんでね。
なので、おれも、むっくも、あたたかいめで、ずっと、みてください☆」
との発言。
なんだよ!最後の最後までてんち(天使+SATOち=てんち)じゃんか!!!可愛いんだよ!!!!!あとたぶん私は緊張して声をかけられない!!!!!!!!笑
そんなこんなで本当にライブ終了。MCで逹瑯さんが、「SATOちの人柄が滲み出ているようなライブになっているなって気がしますね」と言っていましたが、本当にその通りでした。とてもとても気持ちが温かくなるようなライブでした。
改めて、SATOちさん、24年間本当にお疲れ様でした。
SATOちさんは自分に自信が持てないままだったみたいですが、私はSATOちさんのドラムが大好きです。ドラムだけじゃなくて、見た目はハンサムなのに中身はゆるふわで可愛くて、話す言葉は全部ひらがなに聞こえて、どこまでも優しくて、たくさんの人に慕われているSATOちさんが大好きです。
これからは、今まで以上に幸せになってください。心から願っています。
そしてこれは我儘ですが、趣味で良いので、またいつかドラムを叩いているところが見れたらいいな、と思っています。
【追記】
書いたものを見直したら、YUKKEさんのことを全然書いてなくて申し訳なくなってしまった。笑
YUKKEさんのベースはもう言わずもがなかっけえのですよ。安心感がある。
私はMUCCのリズム隊が本当に好きでした。音楽面でも、人物面でも。
脱退発表時のコメントや、音人のインタビューからもわかる通り、YUKKEさんは最後までSATOちさんの脱退を引き止めようとしたんですよね。
恐らく、MUCCで1番メンバー思いなのはYUKKEさんなのではないかな。
YUKKEさんもSATOちさんと一緒で、ライブ中に泣いているように見えました。リズム隊、最後の最後まで愛しくて大好きだったな。
今後YUKKEさんのTwitterで、SATOちさんの生存確認とか出来たら嬉しいな。笑
超余談ですが、私はYUKKEさんの影響でユッケ(食べ物)が好きになったんですよね!
おわり!