本からは何にも得たくない

 最近会った人が、本は何かあって元気がなくなった時に薬のような解決の言葉やきっかけを探すために読んでいる、と話していて驚いた。自分にとってポジティブな何かを得るために、本を読むというのだ。私は全く逆なのでそれをどうにか言葉にして伝えてみたら、両者ともこういった食い違いを楽しんで面白がれる質だったようで遠慮なく「えー!まじで⁈」と言い合った。そして物語を全く読まないという事にも驚いた。『違国日記』の塔野弁護士のように、そんな人が存在することは知っていたけれど、実在として出会ったのは初めてだったかもしれない。人ってこんなに違って面白いなあ、と思う。
 “ただ純粋に物語だけを楽しみたくて、予備知識とか無しで、何かを得ようともせず、物語や言葉をそのまま受け止めたい”、という事を考え考え口に出して伝えてみたけれどやっぱりうまく伝えられず、読書の動機が不純でごめんねと言わせてしまって大変申し訳ない。これを言うとそういう風に捉えられそうだと予測できたのに、どちらが上とか下とか全くなくそれぞれに楽しみましょうと言いたいのに、信頼している友人にしか伝わった事がない。

 家の中には今日も葛の花の強い香りが漂ってきていて、強すぎる花の香りはやっぱりちょっと恩田さんのホラーを思い出してしまい単純に喜べない。
 来月の試験の勉強を今すぐ始めないと大変なので始めます。

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