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#06_目は口ほどにものをいう

電車に揺られながら、たま子は去年の夏を思い出していた。結局十代に残してきた思いは、いつまでも視界の隅に転がっていて、消すことができない。気が付けば、電車は彼が乗ってくる駅のホームへ、ゆったりと滑り込んでいた。ホームに彼の姿をみつけて、たま子はにやける口元をマフラーで隠して、俯くように文庫本へ視線を向けた。

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日常に懸想する

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