『てんどん記』感想記

男性ブランコのコントライブ『てんどん記』を観ました。
アーカイブ視聴期間も終了したので、感想を述べていこうと思います。
ネタに関してそこまでネタバレはしていませんが、このnoteは『てんどん記』を観た上でご覧いただくのが1番良いと思います。



単独ライブの形

これまで私がコントの単独ライブで観てきたのは、東京03やさらば青春の光など、ネタに特化した芸人さんのものでした。
なので、「単独ライブ=その年の新ネタをたくさん観られるもの」的な認識でした。(きっとこれが一般的な形)
しかし、今回の『てんどん記』。これは全てのコントが繋がっていました。
言えばオムニバス形式のようなもの。1つの大きな世界観があり、その中から派生した物語。まずこの形に驚きました。
そのため全体を通して観た時に、"たくさん笑った満足感"と、"小説を読んだ後のような満足感"で心が満たされていたのです。


男性ブランコ特有の言葉遣いの面白さ

以前から独特な言葉は使われていましたが、今回は特に多かったように思います。
「腹筋旅行」「常、腹、空」「差し支えは滅された」「寝ずに動いて」………などなど。
普通の言葉を少し回りくどく言う、別の角度で言う。これが私は本当に大好きです。
漫才でも「ガチ女将」「全治癒」などありましたが、これらは俗に「パワーワード」と言われるもの。
私は個人的に漫才中のパワーワードは気になりませんが、コント中のパワーワードは現実に引き戻される感じがして、"面白いけどあんまり好みではない"と感じていました。

しかし、男性ブランコのコントで使われるパワーワードは本当に自然なんです。そのキャラが確かに言っていそう。違和感がない。だから自然に笑える。
特に平井さんは、元々の人柄も相まってより自然でした。
この言葉遣いは男性ブランコの魅力の1つだと思うし、それがより強く感じられたライブだったと思います。


平井さんのアタマの中

平井さんのアタマの中が気になりすぎる。
考察記でも「平井さん怖い」なんて話が出ていましたが、こちらとしても「やっぱそうだよね?!」でした。
最初の段階ではゼロだったらしいですが、そこからどうしてあそこまでの世界を生み出せるのか。

考察記でも似たようなことが言われていましたが、「全てが繋がってくることの面白さ」と「辻褄が合わないことの面白さ」が共存していました。
それは平井さんの脚本力と、最初から創られた設定ではないこととが奇跡的なバランスで融合し出来たことだと思います。
2回3回と観て、台本を見て、「あ、繋がってる!」「あれとそれは同じで…」「これさっき出てきた!」__。
映画と小説の楽しみを混ぜたらこんな感じなんだろうなぁと思います。

古事記、日本書紀、創世記、進化論など、元々の知識の広さに感動すると共に、それをコントに落とし込む上手さに脱帽です。
考察記からの話が多くなりますが、「ダーウィンが辿り着けなかった進化論をコントで示した」、これにはただただため息が出ました。
平井さんこれからどうなっていくんだ?一度でいいから覗いてみたいです。


それぞれの魅せる力

あくまで主観なのですが、コント師のコンビやトリオでは「どのキャラクターでも人柄が残る人」と「何者にも染まれる人」に分けられることが多いと思います。
男性ブランコでいえば、平井さんが前者で浦井さんが後者かなと。(個人的見解。逆だと思う方もいると思います。)

平井さんの演技は前々から素敵だと感じていましたが、今回それをまじまじと見せつけられたのは「ふと思った」です。
それまで掛け合いでテンポ良く見せていたものが、平井さん一人になった途端に浮き立つ不思議な世界観と少しの狂気。
これは設定や展開だけでは出せない、平井さんの人柄が滲み出た結果だと思います。
あの瞬間は時がゆっくりと流れていて、めちゃくちゃ惹き込まれました。

今回浦井さんは
「弟想いの兄」
「ちょっと変わった彼の友達」
「水族館職員」
「優しい大家さん」
「悲哀溢れるサラリーマン」
「母に若干反抗期な大学生」
「巻き込まれていく一般人」
「神様」
様々なキャラクターに憑依していました。

男性ブランコのコント特有のファンタジーがちゃんとリアルに感じられているのは、浦井さんの芝居の賜物だと感じています。
どんな設定も受け入れさせる、浦井さんの説得力。
もともと03やさらばのような「人」「日常」を描くコントが好きだった私がファンタジー系コントを受け入れられるようになったのは、浦井さんの力があるように思います。浦井のりひろ、恐ろしい男。


コントで伝える人間観と心の内

男性ブランコのコントは心温まる展開も多く、それが魅力の1つですが、今回は「人間こうだったらいいよね」みたいなものを感じ取れたように思います。特に「友達」というものについて。

バカなことに付き合ってくれる友達、
友の変化を受け入れて後押しする友達、
良き理解者、
言っても仕方のないことだって言える友達。

全部全部、刺さりました。
大事にしたい、大事にしなきゃいけない、そう感じました。

そしておそらく、平井さんの心の内。

「やりたいことをやり続けるんは、とても立派で凄いことや、でもな、誰かのやりたいことにずっと寄り添ってあげることも、とても立派で凄いことやとわしは思うなあ」

「そっちの方がおもろいなって」

「ストレートが肝心なのであります
こういうことを包み隠さず、言うことで、人柄を好きになって欲しいんです!」

「関心を持って欲しい!関心の外にいたくない!関心の中にいたい!」

「お互いの進化を認めることで人間は進化していくねんで」

てんどん記パンフレットより


平井さんの心の叫びが聞こえたような気がして、心がギュッと掴まれました。(もちろん、ただの考えすぎかもしれません。)


まとめ?

私はKOCからファンになった新参者ですが、男性ブランコの底知れない力を感じ、さらに大好きになりました。
この人達はもっともっと凄いコント師になっていくんだ。そう感じました。
まだ終わったばかりですが、次の単独ライブが楽しみで仕方ありません。さらにこの形を進化させていくのか、はたまた全く別の形を生み出すのか。

まさに2人は私の関心の外から中へと入ってきた。ネタだけじゃなく2人の人柄も大好きになった。
2人の魅力にどんどん落ちていってます。

浦井さん平井さんに絞って書きましたが、このライブを創り上げたスタッフさんにも大感謝です。素敵な最高のライブをありがとうございました!


男性ブランコ、おもろいで

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