私と餃子の意志ある出会い
大学一年生の冬、19歳。
入学してからやっと、もうすぐで、1年が経とうとしている。
とにかく人見知りの私は、自分から人との距離を縮めようと近付いていくことが苦手だ。
自分から話しかけるのは気が引けてしまう。愛嬌がない。
大学の先輩ともなれば、それはそれはさらに壁が分厚い。中高の体育会系な上下関係とも違うし、ただの友達とも違う。難しい。
「え!○○さん、今日この後ご飯行きませんか!ありです?!じゃあそこの○○先輩も!一緒に!」
サークルの同期の友達は、私とは真逆だった。
するするっと先輩の隣に入り込み、可愛げを遺憾なく発揮する。
先輩の方も、「馴れ馴れしいな笑」とか言いながら、近寄ってくる後輩に満更でもない。
同期は、さらっとご飯の予定を取り付けて、気が付けばみんなの中心にいる。
輪の内と、外。
あまりノリが良くなく、堅めな学部の私は、真面目っぽいキャラだった。
ほんとうの自分は、こんなんじゃない、気がするのに。
そう思えば思うほど、「自分」なんてものは消えてなくなっていく。
学年が終わる頃。
ある先輩とふたりで会うことになった。
あまり群れないその先輩は、少しだけ怖かった。髪は黒く、ズバっと何かを言うタイプだった。そしてたぶん、彼女も、自分から後輩と仲良くなる性格ではなかった。
けど、近寄ってみたかった。
食べに行くお店をラインで相談していた時。
餃子。
ふと出てきた餃子。
それまで餃子が好きだと意識したことはなかった。
別に普通に食べるし好きだけど、好きだと言ったこともなかった。
自ら進んで街に餃子を食べに行ったこともなかった。
Googleマップで餃子のお店にピンを立てたこともなかった。
シティーボーイ達が餃子を好んでいることも知らなかった。
餃子。
それは、私と餃子の、意思を持った出会い。
渋谷で先輩と餃子を食べた。
餃子のチョイスはなんだかとても褒められた。
餃子は私たちの会話を広げてくれた。
他の同期とは違う、私と先輩だけの、餃子を挟んだ関係。
私は餃子が好きになった。
好きな食べ物を聞かれれば、餃子と答える。
それは餃子そのものというより、餃子がもたらしてくれた場の高揚感と、地味だった私が手にした「餃子好き」というアイデンティティ。あの日のぬくもり。
餃子と共に、私は私を作りあげてきた。
これからも餃子が、私と人をつないでくれる気がして。
どうでもいいですが、サムネの餃子くんは、昔作ったラインスタンプの絵です。
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