#1 青空と逃げる
辻村深月という作家が好きだ。
新作が出るといつも本屋に駆け込んだ。
これも、彼女が書いたという理由だけで当たり前のように購入した一冊。
彼女の作品に、無駄はない。
少しの違和感も見逃してはならない。
夏。小学生男子と近所の食堂で働くその母親。
一見、微笑ましい環境が垣間見える。
しかし、物語が進むにつれて少しずつ全貌が見えてくる。
少しずつ知る彼らの事情と感情に、読者側もぐっと引き寄せられる。
鮮やかに描かれるそれぞれの土地での暮らし、
そこで育まれる温かい人間関係、
そして追ってくる影。
家族の形、友人の形、職場の形…
誰と向き合い何を望むべきか。
読了後、不思議と私は
登場人物全員の幸せを祈っていた。