長唄~鼓~
こんにちは、永井です。今回は歌舞伎や日本舞踊などの後ろで基盤となる音楽を奏でている長唄の、特に鼓についてご紹介をしたいと思います。
長唄とは
長唄とは、そもそも今から三百年以上前の十八世紀初めごろに歌舞伎の音楽として成立し、主に江戸で発展してきた三味線音楽です。十九世紀に入ると、歌舞伎から独立して純粋に音楽としても作曲・演奏されるようになりました。
歌舞伎の三味線音楽は現在、長唄の他に竹本(義太夫節)、常磐津節、清元節などがありますが、囃子(能管/篠笛・小鼓・大鼓・太鼓)と一緒に舞台で演奏するのは長唄の大きな特徴です。小鼓・大鼓・太鼓は打楽器ですから、それだけリズミカルで踊りに向いているとも言えます。
鼓とは
鼓は、この長唄の中の一種の楽器です。
きっと誰もがテレビで聞いたことのある「ぽんっ」という音は、この鼓の音です。
ところで、この鼓ですが、きっと存在自体はほとんどの方がご存知かと思います。では、どのように鼓を担ぎ、鳴らしているのか、わかりますか?よかったらいま、手で担ぎ方を想像して見て下さい。
ここでよく間違われやすいのが、この担ぎ方です。一見ただ肩に乗せて、もう片方の手で打っているように思われますが、正しくはこのように、
逆の肩を使い、打ちます。こうすることによって、より安定し、強い音を出すことができます。
鼓の仕組み
次に、鼓の仕組みについてご紹介します。
鼓は次の写真のようにに解体することができます。
そのうち、実際に手で打つ部分を革と言います。
表革と裏革は、生後3ヶ月から半年の仔馬の革がよいとされています。 その頃の革が、やわらかく早く打ちこめていい音色が出るようになるからです。
そして革を繋いでいる柱のような部分を胴と言います。
桜の木の中心を除き、周りから理想としては5本分の胴を丸太にしてとります。中心部分を使わない理由は、中心部分は硬いため、そこで作られた胴は変形したり 割れたりしやすいためです。少なくとも、直径50cm以上の桜の木からとるのが理想的です。胴は、桜の木から出来ています。
そして最後はこの胴と革を繋いでいる紐のようなものが調べです。
後にもご説明しますが、この調べは鼓を演奏するにあたってとても大きな役割を果たします。
鼓の仕組みがわかったところで、いよいよ鼓の演奏についてご紹介したいと思います。
鼓の演奏
鼓の音には強弱の他に「ぽんっ」と「たっ」の二つの音があります。これらの音の区別は先程ご紹介した「調べ」が深く関係しています。
調べを強く握ると、両革がきつく引き締まり、高い音が出るようになります。それによって鳴らされる音が「たっ」です。
逆に調べをゆるく持つと「ぽん」の音になります。
しかしここで鼓の難しいところは、ただ調べをゆるくもっただけだと、音の終始も緩んでしまい「ぼよん」というだらしない音になってしまいます。なので、手が革に当たる直前から直後まで一瞬だけ調べを緩ませることで「ぽん!」という真っ直ぐで美しい音を鳴らすことができます。
このように言葉で説明すると、簡単のように聞こえてしまいますが、本物の鼓で音を鳴らすには数年かかると言われています。実際、わたしの母も綺麗な音を出せるようになるのに長い時間をかけていました。
鼓について、簡単にご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。質素な中にも大きく迫力、勢いのある楽器は日本の鼓だけだと思います。
特に、歌舞伎などの演技の前に一つ鳴らされる「ぽん!」という真っ直ぐな音は、それまでざわついていて落ち着きのなかった客席、舞台を一掃させるような力を持っていて、言葉には表せない感動があります。
また、それだけではなく、締め太鼓と大鼓との勢いある演奏も迫力があり、観客を鼓舞する働きもあると思います。
百聞は一見にしかずといいますが、この場合は逆です。
鼓の音の影響や力、印象を理解していただくためにも、一度劇場で生演奏を聞いてみていただきたいです。きっと生演奏でしかわからないこの感動と臨場感をお伝えできると思います。
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