スーツケース1つで暮らす。都会の喧騒から逃げたかった
私には実家が無い
住民票を置く場所にすら困るような生活
もう当たり前になっちゃったけど、よくよく考えたら、この暮らし方は特殊だな〜と思う
虐待の恐怖に怯えるのが嫌になって、スーツケース1つ持って家を飛び出したような形だった
でも、意外といける
この前、同じくリゾートバイトをしてる友達が、私の退寮の日の装いを見て言ったの
「荷物それだけ?そういえば、いつも荷物少なかったね」って
確かに他の人は登山リュック+スーツケースで出て行くのに、私は小さいハンドバッグ+スーツケース1つだった
しかもスーツケースの片面は使ってなくて、中身ガラガラだった
こんな生活になる前は、すごく荷物が多かったのにな〜って、ちょっと寂しくなったり
でも同時に、生活スタイルに適応できてる自分が誇らしくなったりした
実家に居た頃はオシャレが好きで
靴だけで7足くらい持ってた
鞄も同じか、それ以上
アクセサリーも山ほど持ってた
全部、安物だったけど、私の宝物だった
靴は7cm以上のヒールしか買わないっていうこだわりがあって、基本的に10cmヒールを履いてた
一番高い物で15cmのヒール
それが今や、NIKEのスニーカーと仕事用の3cmヒールのパンプスだけ
服も色んな形の物を持ってた
肩が出るデザインのブラウンのトップスとか、ピンク色のタイトなセーターとか、灰色のワンピースとか、黒いコートとか、白いポンチョとか
お気に入りだった
全部捨てちゃったけど
今持ってるのは、ユニクロで買うような黒い無地のセーターとか、何の変哲もない普通のジーンズとか
オシャレできなくなったのに、不思議と、今の方が息がしやすい
大阪は凄く栄えてる街だった
いつも背筋を伸ばして、アクセサリーで武装して、高いヒールを鳴らして堂々と歩かないと、
何かに押し潰されるような気がしてた
でもそこから一歩はみ出てみると、一気にモヤが晴れたような
人生で初めて、深呼吸できたような感覚があった
北海道は空が綺麗で
大阪に居た頃に住んでた家の階段の窓から見る景色が大好きだったけど
それ以上に、北海道で通勤の時に見る景色の方が好き
空気が綺麗で、水が美味しくて、ご飯が美味しくて、どこ見ても緑いっぱいで
大阪で私がしてたような、おへそ出して耳にピアスいっぱい付けて高いヒール履いてるような人間は誰一人として居ないの
同じ日本なのに、時間の流れが明らかに違って、ゆっくりゆっくり毎日が流れる
人によっては「ありえない!」って思う環境なんだろうな〜と思う
6畳の部屋に、テレビとベッドと冷蔵庫だけが置いてある
そこにスーツケース1つと、小さいハンドバッグ1つを置いて
借りた布団を敷いて、シーツを整えて
生活が始まる
でも幸せなんだよなあ
最低限かもしれないけど
私の人生で初めて、殺されるって怯えずに眠れた場所だった
その6畳の部屋は、私の人生で初めての、城だった
小銭を数える生活から解放されたのも、初めてだったかなあ
自分だけの力で毎月20万くらい稼いで、手取りはもっと少ないけどさ
友達と旅行したり、ご飯行ったり、カラオケ行ったり
幸せだったなあ
北海道に帰りたい
今は別の場所に居る
スーツケース1つで来た
同じような6畳の部屋
居心地は悪い
出て行きたい
今日パッキングしようと思う
安心できるところに、自分を住ませてやりたい
たくさん傷ついてきたから、もう今後は、優しくしてあげたい
がんばろう、負けるな