スリーピースバンド
ギターボーカル、ベース、ドラムの3人組バンドのライブに通い始めてもう8年ほど。今年は20周年イヤーだ。
一昨日から始まったライブツアー。2日連続でそのライブに行っていて、1日目は左側の席だったからベースの人がよく見えた。9列目だったが、視界が良かった。こんなにいい顔してるんだ。いつもは目を見開いて、口を大きく開けて、ベースなのにめちゃくちゃ動き回って足をあげたりジャンプしたり、寝転がりながらもベースを弾いたりして騒がしい人。それなのに時折見せる普通の笑顔に何度もやられた。カッコ良すぎる。いつものライブなら、左側の席であってもギターボーカルの人を見ているのに、その日はベースから目が離せなかった。輝いていた。
しかし、どんなに前の列であっても目の前に背の高い人がいれば、全体が見えないというのはライブではよくあることだ。2日目は2列目なのに、目の前に背の高い人がいて、ベースの人が見えなかった。ちくしょう、こんなに前なのに。
全体が見えないことで、対象を側面から見ているような気がした。あの動き回るベースが見えないと、お利口なギターボーカルと、熱いドラムでなんとも真面目なバンドにも思える。ギターボーカルの繊細な指遣いや、表情に目をうばわれている。やっぱりかっこいいし、何より歌がうますぎるし、歌詞がとんでもないのによく歌ってるな、と改めてこの人の凄さを実感する。
ドラムのテクニックもよく見えた。彼はよくドラムスティックをペン回しのように回すが、みんなもっと注目した方がいいと思う。カメラさんももっとアップにする機会を増やした方がいい。スタッフがドラムの人にヘッドフォンをつけ始めると、なんかすごい曲がくる…!というワクワク感も感じられた。当たり前だが2列目は全く悪い席ではない。こんなにも近くに彼らを感じられたのは初めてだった。
2人に注目していると、忘れた頃に動き回るベースが顔を出してくる。ステージの反対側まで軽快なステップで(ベースを弾きながら)やってくる。ああやっぱり3人で完璧なバンドなんだ。1人ずつ見ると個性が強くてアンバランスのように見えるが、全体を見ることでなんとも言えない感じのバランスを取れているように思えた。3人でかっこいいな、と思えたのもなかなかない経験だった。
スリーピースっていいな。それぞれの良さが際立つ感じ。
学生の頃、友人たちとつるむときは、なるべく偶数のグループでありたかった。2人組を作る、となったときに自分が余ってしまわないか不安だったから。また自分が2人組になったときに、余ってしまった1人のことを思うと申し訳ない気持ちにもなった。3人はずっと3人の状態でありたい。
そんなマイナスイメージの3人組だったが、大人になって良さを体感することができた。自分は自分にできることをする。周りとのいい距離感を学ぶ。そうすることで3人組はより大きな三角形になれる。1人になったって怖くない。まあライブ中なので、ずっと3人組であることに変わりはないのであるが、前の人の背が高かったおかげで3人組の良さに気づくことができた日であった。