![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121470168/rectangle_large_type_2_f989ed7f55231a6704a5961acd96f3b2.png?width=1200)
見ないようにしてきた現実ー映画「月」レビュー
こんにちは。miyuです。
突然ですが、私は「どんな映画が好き?」と聞かれると、「邦画のドラマ」と答えています。
なんで邦画が好きかと言われたら、微妙な表現の違いや、伏線の回収の仕方に気づくことができるからかなあと思っています。
それを言葉にするのは難しいけれど、あそこが良かったな、という感覚だけはある。
最近は見たい邦画がどんどん溜まってきていて、(今見たいと思っているのは、「アナログ」「ミステリという勿れ」「キリエの歌」「愛にイナズマ」「正欲」です。)
土日にまとめてみるのもいいけれど、ちょっと余韻に浸りたいのが今日この頃の気分。
先週見た「月」について今日は書いていきたいと思います。
深い森の奥にある重度障害者施設。ここで新しく働くことになった堂島洋子(宮沢りえ)は“書けなくなった”元・有名作家だ。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平(オダギリジョー)と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにするが、それを訴えても聞き入れてはもらえない。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだった。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく――。
映画館はいつもワクワクする
あらすじを大体頭に入れてから映画を見るのがマイルール。今回は「さとくん(磯村勇斗)」が何かやるんだろうな、と見当をつけてから映画館へ足を運ぶ。
![](https://assets.st-note.com/img/1700263899086-QGPPtVi2vp.jpg?width=1200)
舞台は重度障害者施設。そこで働くことになった元有名作家の堂島洋子(宮沢りえ)。夫の昌平(オダギリジョー)。施設のスタッフのさとくん(磯村勇斗)と坪内陽子(二階堂ふみ)。キーパーソン4人がみんないい個性を出している。キャスティングつよつよ。
暗い瓦礫の中を懐中電灯を頼りに歩く洋子のシーンからスタート。これも伏線だと気づくのはだいぶ最後の方のお話。
以下ネタバレ含む。※セリフは定かではありません。
小説が書けなくなった。それを理由に重度障害者施設で働くことになった洋子。出会うのはハツラツとしていて「私も同じヨウコです。」と名乗る陽子。そして施設の裏口でハーモニカの練習をしているさとくん。
一見人の良さそうな陽子。さとくんは施設の入所者に対し、手作りの紙芝居をするなど、真面目そうに見えるキャラクター。
しかし二人とも抱える闇は大きい。陽子の父親は不倫をしたくせに、家でのうのうと母が作った食事を食べている。みんな嘘つきだ。彼女は嘘が嫌い、と言いながら自分も嘘をつく。彼女がの方がまだまともだったのだ、この後気付かされる。
さとくんの衝撃的なセリフ。
「ここにいる障害者は会話ができないので、人ではありません。安楽死させます。」
真顔で淡々とこの文章を書くのだって勇気がいるような言葉を言うさとくん。
何が彼をその考えにさせてしまったのか。同じ施設で働くスタッフからの酷い扱いだろうか。これほど負担の大きい仕事なのに、賃金が低いことだろうか。何にせよ、彼をそうたらしめてしまった原因は人ごとに思えない。
一方同じ施設で働く身として、心配になってサトくんに声をかける洋子。家族ぐるみで花火をしたり、家に招いた仲だったのに。
「僕はあなたと同じ考えです。」
今から施設の入所者を殺そうとしている人と自分が同じ考えだというのか。
まさか信じられない。
一人目の子が重度の障害を抱え、一言も話せないまま3歳で亡くなってしまったあと授かった二人目の子。もし同じように障害を抱えてしまったらとても育てられない、と考えて中絶しようとしていた。サトくんはその行為が「障害者は世の中にいらない」という自分の考えと同じだという。
「絶対にそれは違う!」と声を大にして言える人がいるだろうか。
「私は認めない。」と内にある自分の気持ちと闘いながら叫ぶ洋子。
その後もさとくんの主張は続く。
「別の施設と合わせて200人くらい。だから頑張らないと。体力も必要です。」
え?何を言ってる?文法的には間違っていないはずの言葉が、頭に入ってこない。
そして事件は起こる…
「こんばんは。あなたは人間ですか?」
そう声をかけて回るさとくん。返事ができない人は人間ではない。淡々と進めていくさとくんの姿は狂気そのもの。
これは社会の縮図なのかもしれないと感じたシーンでした。映画を見ている観客は、こんな事件が起こっているのに何もしない傍観者。
今まで見ようとしてこなかった現実なのかもしれない。
私は看護師だったので、同じように障害を抱える方への対応の仕方など、どうにもできない現実があることを知っている。家族の苦労が計り知れないこともわかる。
でも看護師を辞めた。こんなに大変な仕事やってられるか、と思ったことも何度もある。相手を尊重すると自分の心が擦り切れていくこともよく実感した。
今なお看護師、介護士として働いている方は大勢いると思う。純粋に尊敬する。あんな大変な仕事を続けていられるのは本当にすごい。
そうやって私は離れたところから見ているだけの人間である、ということをまざまざと知らされる映画だった。
そうして起きてしまった事件。事件のテレビ中継を見ながら、洋子と昌平が「この先何があったとしてもあなたのことが一番好きです」と言い合うシーン。
現実を見ようとしている二人が、お互いを支え合っていることでこの世界で生きていくことができている、という文学チックな終わり方だったけれど、そうでもしないとこの現実を受け止められる気がしなかったので、助かった。
これは作品なのだ。そう思って映画館を後にした。
私はまだ傍観者なのかもしれない。でも見ようとしていない現実がある、ということをこの作品に教えてもらいました。
長くなりましたが、「月」のレビューでした。
今日はキリエのうたを見に行こうと思っています。本当に見たい映画が多くて困りますね。。。今日見逃すともう終わってしまいそうなので、3時間気合いを入れて臨みたいと思います。
以上、読んでいただいてありがとうございました。