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吉祥寺ファミリーシアター2024「スーホの白い馬」


吉祥寺ファミリーシアター2024「スーホの白い馬」観劇。

<あらすじ>
モンゴルの草原で暮らす貧しい羊飼いの少年・スーホは、生まれたばかりの白い子馬と出会います。
スーホが大切に育てた子馬はやがて立派にたくましく成長し、毎日のように広い草原をかけめぐります。
スーホと白い馬は、どこへ行くにもずっと一緒です。

やさしい命の物語でした。

大切な人を想うこと。自分の生き方、仲間を守ること。そして、孤独。やさしさ、思いやりと孤独は、隣り合わせだなって。
生きること、幸せについて考えたし、大切な人、幸せになってほしいと願う人がいるってなんて素晴らしいことなんだろう。

人との出会いは、かけがえのないもの。
本当にそうだなって思う。

大切な人とずっと一緒にいたいし、もし遠くに行ってしまったとしても、心の中にいてくれて、季節の訪れと共にきみを感じられる。
大切に想う限り、いなくならないよね。
さみしいけど、あたたかい気持ちになった。

舞台美術と音が、のどかで心地よい舞台。
天にふわりとかかる布(名前わかんない)が、雲のようで、照明の色が変わるたびに表情を変えているのがすごくきれいだった⛅️🌈

開演して、子どもたちとやりとりするのが楽しそうでワクワク〜!私もやりたい!
物語が始まる時、引き込まれていくように暗くなるから怖がってる子いないかとちょっと心配…!

スーホの長台詞から始まる。
それが、まっすぐで純粋な思いを乗せた言葉で、あまりの美しさに一気に込み上げて涙がでた。
スーホの言葉がやさしく降り注いでくるようだった。彼の話す馬、景色が見えてきて胸がいっぱいに。

中西柚貴さんのスーホ、とてもお似合いで素敵だった。やさしくてかわいくて真面目で濁りがひとつもない。私の好きなゆきちゃんの表現だ〜…!って感動してまた今書きながら泣けてくる。
美しい景色を見た時に涙が出るのと同じように泣けてくるのです。

スーホは、おばあちゃんと二人で貧しくも幸せに暮らしてた。
家のことさせておばあちゃんは謝るけど、スーホは、楽しくてやってるから謝らないで、と。スーホとは違うかもしれないけど、私も自分の行動は、自分が選択してやってるから誰かに申し訳なく思われなくないんだよ〜って思う。感謝されたくてやってることなんてなくて、むしろ気遣ってくれてありがとうって思うよねって。

欲のないスーホにおばあちゃんは、手に入れたいもの、守りたいものがあるともっと強くなれると話す。
そこで、スーホは、「友だちが欲しい」と胸の内を吐露する。どこかいつも孤独な気持ち、わかる。いつもどこかさみしさ、心にぽっかり空いた穴があって、人には言えずにいる孤独感ってある。誰にも言えないから、もしかしてこれは自分だけなのかな?って思うとまたそれで寂しくなる。

オオカミに襲われ怪我をした馬と出会う。その馬は、母親を亡くし、行き場のない。スーホが助け、友だちになる。
その馬は、名前がなく、スーホがテグという名前をつける。自分の名前をもらった馬の幸せそうな表情。「テグ」「スーホ」と呼び合う姿がやさしくて幸せであったかい涙が溢れた。
スーホが「人との出会いは、かけがえのないもの」と言っていたけど、本当にそうで、この時二人は、かけがえのない存在となったんだと思う。

スーホ、テグ、おばあちゃんで猛ダッシュするシーン。
「過去も置いつかないくらい走れ〜!」(ニュアンス)ってセリフが、すっごく好きだった。
あれこれ考えて、過ぎ去ってしまったはずの思いが何度も頭に浮かんで憂いてるのではなく、ガムシャラに走って走って、そんな過去も追いつかないくらい先に進むんだって。とても心に響いた。

二人が夜眠る時、オオカミがやってくる。
気配を感じてハッと起きるテグの恐怖心が伝わってきてバクバクした。
客席の子どもたち、テグがオオカミに襲われた話をよく聞いてて、このシーンでオオカミが来たとわかると「オオカミ来てるよ!ねぇ…!」って何度も舞台に向かって言ってて泣きそうになってしまった。このシーンまで重ねてきたもので、ふたりに親しみや情が湧いて、スーホとテグに助かってほしいって思ったんだよね。素敵。
で、影絵のオオカミだったんだけど、自分の手も映るかな?って思ったのか、客席に手のオオカミが大量発生して笑いそうになった。(笑)

スーホと羊たちを守るため、テグはオオカミに立ち向かうんだけど、そこで戦わないことを決めたテグ。
お母さんを殺された恨みもあるけど、復讐しない。戦い、傷つけあうことはしないという心の強さ、決意。それは、スーホに助けられ、スーホからたくさんのやさしさを感じていたからなんだろうなって。
気迫溢れるシーンで、「怖い…!」って言う子もいたけど、身を乗り出して食い入るように観てる子も多くて、この言葉や思いを子どもたちはどう受けとってるのかなって気になった。
悲しみや怒りは返さずに、やさしさを最前線に生きていくこと。とても大切で忘れたくないなって思った。

殿様の後継になるためにテグをレースに出場させることを決めたスーホ。
優勝すれば、跡継ぎになれると意気込むスーホにテグは、今の生活じゃダメなの?スーホは、自分と何のために一緒にいるの?と寂しくなるも、大切な友だちの願いのために走る。
同じ気持ちで一緒にいると思ってたのに、アレ?ってなる瞬間ってものすごく寂しいし、不安になる。その感覚が伝わってきて胸がキュッとしたし、スーホはテグを利用しようとしてたわけじゃないってわかるから、すれ違う二人の思いにもどかしかった。

テグは優勝するが、スーホは身分の差別を受け後継になれず、テグを買い取らせてほしいと言われ激怒。大切な友だちをお金と交換なんてしたくないから。殿様に声を上げるが、滅多打ちにされる。
復讐しない、戦わないことを守るスーホ。
テグは、スーホを守るために自ら殿様の馬になる。


殿様の元で、テグは自分がどうなるのかわかってここに来たと言う。殿様は、テグの態度や言葉に怒り、矢を引く。
最期は、スーホに会いたい、一緒にいたいと思い、スーホの元へ。
自分の最期を感じ、大切な友だち、自分を救ってくれた彼の元に行こうとするテグに涙が止まらなかった。

スーホが殿様に滅多打ちにあうところも矢が刺さるシーンもかなり衝撃的で、私は結構驚いてしまったけど、客席の子どもたちの集中力というか向き合おうとする空気感がすごくよかった。

スーホの元に来たテグは、最期の別れを告げる。
自分が死んだら楽器にして、美しい音色を響かせてほしい、と。

出会いから感謝の気持ち、大好きとありがとうを言葉にするテグ。
こんなつもりじゃなかった、もっとみんなで良い暮らしができればよかっただけなんだって話すスーホ。
色々な思いが絡まって苦しくも、ふたりの思いが尊くて溢れて止まらない。

天に昇るテグ。柔らかい光に包まれて美しい。
冒頭にもあるスーホの語り。やさしく降り注ぐ言葉に胸がいっぱいになった。

心やさしくも孤独な少年、母を亡くした馬。孤独を分かち合い、お互いの心を寄せ合い、かけがえのない時間を共に過ごした仲間。
テグは、姿を変えて、スーホの近くに在り続ける。

小学生の頃は、亡くなった馬を楽器にするの怖い。近くにいたら亡くなったことを感じて悲しいままなんじゃないかって思ってたけど、今は、やさしい思い出がある幸せ、近くに感じたい、見守っていたい気持ちがわかる。
時を経て、気持ちの変化に気づくこと、当時の自分と近い子どもたちと観劇する貴重な時間を過ごすことができた。


ファミリーシアター自体が初めてで、どうかな?って思ってたけど、すっっごくよかった。
こんなにのボロボロ泣くと思わなくて焦ったけど、隣のお父さんもすごく泣いてて、それを隣で子どもたちは感じてて、すごくいいなって。
大人も子どもも関係なく心が動いて、体が反応して、それでいいんだよ。素敵なことだねって言葉にしなくても感じる空気感がたまらなかった。

子ども向けなのかな?と思ったけど、ガッツリ演劇!って感じで痺れた。(伝わる?)
言葉が難しい気もするけど、演者の真っ直ぐで丁寧な表現に言語理解はなくても引き込まれていたし、感情って伝わるんだなって。

言葉選びというか、小学生が好きそうなノリも多くてついニコニコ。「めっちゃえらーい!」とか「え、ちょっと可哀想」とか、ツッコミ方も子どもち好きそう〜!
あと、羊!お母さんたち悲鳴上がってて笑った。(笑)

馬頭琴含む楽器の生演奏も素敵。子どもちが、開演前に「これはなんて言う楽器ですか?」って聞きに行ってるのもほっこり。

ゆきちゃん出演でこの公演を知ったけど、これからも機会があれば観に行きたいな〜と思いました💐

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