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きみについて /坂本龍一

坂本龍一の膨大な楽曲群の中で、自ら”青春歌謡”と呼ぶジャンルの曲群がある。「Self Portrait」、「Ongaku」、「子猫物語のテーマ」等々。基本はメジャーコードで、♩=120くらいのテンポ感。小刻みにしっかりとリズムを重ねながら、緩やかな坂道を少しずつ前へ進んでいるような視界良好さを感じさせつつ、時折り、逡巡も見せるような。まさに青春という言葉が纏う一種の気恥ずかしさ、自信はあるけれど確信はないというか、てらいもなく突き進む感じを、技巧ではなくシンプルなメロディという「形」で表現している気がする。

軽薄を気取るのだけど根が真面目なサブカル教養番組の元祖、「YOU」(NHK教育テレビ)のオープニング、エンディング・テーマもこのジャンルに入るんじゃないだろうか。この辺の楽曲群は坂本龍一の律儀さというか生真面目な一面が透けて見える感じがして味わい深い。

さて、本題の「きみについて」。調べてみたら日本生命のCMに使われていたようだが、PARCOか西武百貨店のCMだと勘違いしていた。作詞が糸井重里だから「おいしい生活」のコピーから連想してしまっていたか。ちなみにYOUの司会も糸井さんだった。コピーライターという職業の存在を知り、形のないモノがカッコいいと憧れたあの時代。シンセサイザーという楽器もそれを用いて作られた音楽も、どこか吹けば飛ぶような軽さを売りにしていた気がするが、どっこいその音楽は今もこうしてあの時代を象徴する音としてキラキラしたままの状態で残っている。

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