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#01 はじまりました, NUS交換留学 -(exchange report)
常夏の国、シンガポールについてから全ての曜日を生活して、あっという間に1週間が経った。
外に出ると、じっとりとした生暖かい空気が全身にまとわりつくが、不思議と不快感はない。東京のようなビル街独特のムワッとした重たい暑さはここにはなく、思ったより過ごしやすい気候だった。信じられないぐらい縦にも横にも広く伸びた大木が、キャンパスの至るところに生えていて、熱帯気候独特の植物たちの溢れんばかりの生命力に圧倒される。
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5月までの2学期間、シンガポール国立大学(NUS)School of Design and Environment にて交換留学が始まった。真新しい毎日の連続をどうにか倒れないように必死に生きてると、あっという間に留学終わってそうなので言葉に残さなくては…! と思っている。 note書くのをおすすめしてくれた人、ありがとう書いてみます。
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初めて見た時リゾート地かと思ってニマニマしちゃった
学びたいこと、ザックリと
留学に行くことは、大学入学前から決めていた。地球はこんなにもどデカいのに湘南の同じ環境に4年もいるのはどうも飽きちゃうと思っていた。(実際は、色々見えてきた学部3年春学期があまりに楽し過ぎて留学行っちゃうのが惜しいとさえ感じるようになってたけども…)
留学の目的はこんな感じ↓
①美大のような体系的なデザイン教育機関で過ごしてみたい
木削ったり, スケッチしたり, 粘土こねたり
tangibleな物体・素材と対話してモノを作りたい
造形力が欲しい!!
SFCでの学びは、基本的には研究室・教授を中心に設計されてゆく。既に約2年間所属している田中浩也研究室にてデジタルファブリケーションを応用した新しいデザインの在り方の探求を行ってきたが、この学際的な領域は、世界中で建築の大学院のラボ単位で取り組まれていることが多い。スケッチや粘土造形などプリミティブな特訓なしで、コンピュータと向き合い、RhinoやGrasshopperやらを触ってできた「なんとなくいい感じ」のものしか作れない自分に嫌気が差していたので、留学中はカタチを描く特訓や個人的な嗜好の探求に時間を使えたらいいなと思っている。
②都市の生物多様性について学びたい
昔から動物好きで, 特に共に暮らす犬is everythingだったので、人間中心的に設計された都市環境における他生物種の在り方・生き延びる余地 などについて興味がある
周囲環境・異生命との調和的なデザインとはどのような形があり得るか検討したい
緑あふれる都市国家シンガポールの豊かな植生・野生生物に触れて、帰国後東京で何ができるか考えたい
私は、クラシカルデザインに興味があるわけではなく、プロダクトデザイナーになりたい!というような明確な職業を目指しているわけでもない。だったらなんなんだよという感じだけど、ecoLogic Studio や OXMANのように真に学際的な領域で未だ見たことないオモロいものや概念を生み出し続ける場所にいきたい。そのためにまずは自分の何を極めるか、まだグラグラと定まっていないけどゆっくり考えていきたい。考えを形にして他者とのコミュニケーションを進めていけるのがデザイナーの役割だと思うので、その基礎的な力を養いつつ、自分の興味分野を開拓していけたらいいな!
主に顔を出すインダストリアルデザイン学科
Division of Industrial Design (DID) は建築学科と共にSchool of Design and Environment の中にある教育機関だ。1999年に建築学科の内側で設立され、その後独立してから約13年とかなり若い学科らしい。
"Become an innovator in any industry."をキャッチコピーに、企業との協働でデザインプロジェクトを行う授業が多かったりと、実験的より実用的という言葉がしっくりくる土壌を持っている。
Industrial Design is a course that brings the most creative aspects of technology, engineering, artistry, and business entrepreneurship together. We align these aspects with a deep understanding of how human beings perceive, adopt, and use innovative solutionsー
We strive to create new products, services, spaces, apps, user experiences, and businesses that people love.
同じく交換留学生として世界各国から30名ほどインダストリアルデザイン学科に来ているようだ。他の学科に比べて圧倒的に少人数で落ち着く。オリエンテーションで仲良くなった人は、フランスのSTRATE , オランダのEindhoven University of Technology , 米国のGeogia Tech の空間デザインやインダストリアルデザイン学科から来ていた。皆デザイン留学の枠として各学校から2名程度派遣されているので、デザインスクールでもなければデザイン学科もない秘境の地(笑)SFCからは、1人だけしか来てないのかい?と珍しがられた。
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教育機関への所属や専攻として自分の興味分野を簡潔に表せない故に自己紹介に手こずったが、実際に制作しているものや今まで自分が関わってきたプロジェクトを丁寧に紹介していくと、クールだね!と皆が興味を持ってくれた。魅力的に語れるような流暢な英語力がない中でも、よく耳を傾けてくれるのは "from Tokyo, Japan" が持つ "カッコいい〜" フィルターにだいぶ助けられている気がする。全ての日本文化の担い手にありがとうです…
そして、学科内をザクッと見学し現地生と話してみると、世界では全く無名のSFCのデザインの方が遥かにイケてるなと思う側面も多々あったので、デザイン領域でのアカデミアはさして重要ではなく実体を持って何をやってきたかだ。ということを改めて認識させられた。
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キャンパスが面白い
東京ドーム30個分の広大な敷地を持つNUSキャンパス。無料のバスが周回していて授業を受ける教室に徒歩でくのはかなり渋い…という感覚の大きさだ。1週間の滞在ではまだ街に出たい!と思わないぐらいキャンパス内がとにかく面白い。多国籍の生徒が集い、歩いているだけで様々なアクセントの英語と多言語が自然と耳に入ってくる。(大半は中国語)食堂に行くとアジア圏のご飯はほとんど何でもあり、日本食にも困らない。多民族国家シンガポールであることに加えて、アジア圏トップの大学で世界各国から留学生が集う、文化的にカオスな環境がそこにある。そんなソフト面に加えて、キャンパスの建物などハード面もかなり面白い。例えば私の居住区であるUtownは、大きな芝生を環状に囲む形で屋根付きの歩道があり、スーパーマーケット・食堂・アパートへのアクセス全てが、日陰のみを通って可能になっている。よくある土砂降りスコールが唐突にきても、濡れることなく生活できる。半屋外の環境は風通しがよく、さらに大型のファンが天井についていて案外過ごしやすい気温が保たれており、PCを持ってきて作業する人が多く見受けられる。
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他にも、インダストリアルデザイン学科と建築学科の建物であるSDE4は、東南アジアで初のNet Zero Energy Buildingとして認められた建物らしい。(certificated by ILFI) 屋根は太陽光発電を行い、風通しの良い建物の構造は効率よく建物を冷やし、エアコンなしでも過ごせる屋内をつくっている。周りのランドスケープも興味深い設計になってるようだ。まだまだ掘り切れてない&長くなるので、今度詳しく調べてまとめてみたい。
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荒波の1週間, 生活について
誰も知らない異国の地で生活の根を生やすのは、笑い飛ばすしかないぐらい予想外のカオスの連続だった。自分に非がないのに部屋からロックアウトを計2回も食らったり、(2回目は寝起きパジャマでスマホも財布も何も持たず…) 睡眠サプリグミを試食して、強すぎる睡魔に襲われ外出先で眠りに落ちたり、そのグミを食べてないはずのルームメイトがやたら寝るなと思ってたらコロナ陽性が発覚したり…etc
また、自分にあるありったけの社交性を引き出して、いろんな人に身ひとつで絡みに行った。気づいたらポーランド人パリピガールズ集団とでっかいクラブに来ていたり(その後耐えられず帰宅を試みた。がタクシーなかなか捕まらず1:00amのマリーナベイで1人途方に暮れたりして過ごしていた) バスや列で目の前の人に話しかけたり、と頑張った。英語もまだまだ難ありだけど勢いつけたら何とかなった。しかし、旅人気分で社交性を一時的にかっ飛ばすコミュニケーションでは持続可能じゃないことが理解できたので、旅人はやめて生活者として地道に根を生やしていきたい。
気のおける人が誰もいないところからのスタートは初めてで、自分を自分らしく表現できる言葉(英語で)も持たないまま、同じ場所に留まり続けるのは正直怖くて怖くてたまらなくなる。逆に、何もない白紙だからこそワクワクして動き回れる時もある。自分から声を上げ続ければ、助けを求めれば、絶対何とかなるさという精神を忘れないでいよう。わからないこと、表現できなくて悔しいことに対しては、地道に知り勉強していくしかないので頭抱えてないで努力の初動を素早くしていきたい。
明日からついに授業が始まる!まずは最初の学期Semester1, 心躍る瞬間をできるだけ欲張りにたくさん詰め込んだ毎日になりますように!