020-楽園に境界はない
どこかでD.S.に引っかかってセーニョに連れ戻されるみたいに二〇二〇年の夏と二〇二一年の夏は似たような息苦しさをもって過ぎていったような気がする。汗で湿った不織布のマスクはがさがさと、皮膚をかすかに痛めつけて、ざらつかせて、なにがあっても滅亡を選ばなかった人間はいくらでも傷つくことができるのかもしれなかった。たぶん人間がいなくなるのは地球がなくなるときで、カートヴォネガット・ジュニアの『スローターハウス5』でトラルファマドール星人が語るようになにかのスイッチがぽんと押されて地球はすんと宇宙の闇に掻き消えるのだろう。
ここから先は
1,006字
/
1画像
シメージとはなにか、わたしにもわかりません。わからないけれども書かないといけないようなもののような気がしているなにか、です。今回のシメージは2020年8月に使い捨てカメラで撮った写真に小説・エッセイ・短歌などなにかしらのことばを添えた作品集とします。
シメージ:ある夏の印象
500円
ぶきような作品集。毎月15日・25日に更新します。 ※『nice meeting you』冊子版の購入特典と同内容です。冊子版をご購入さ…
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?