008-凪の鱗(4)
瞼がぱっとひらいて、目がさめたのだ、と気がついた。常夜灯の、なにも明らかにしない夕陽に似た色が天井に小さく灯っている。寝返りを打とうとすると隣に温かい塊があって、狭くて身動きがとれない。ここはどこ、という問いかけが詩になるよりもうんと早く、ここは男の家だとわかり、そうと決まればここでなにがあったのかすぐに理解できた。わたしは、わたしだ。そのことがどうにも悲しくて、だからといって罪の意識のようなものがまぎれるわけもなく、むしろ膨らんでいって、もっともっと悲しくなった。解決方法はない。足のつかない深いプールに放りだされたみたいに、滔々とやってくる不安にただ流されるしかない。
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シメージとはなにか、わたしにもわかりません。わからないけれども書かないといけないようなもののような気がしているなにか、です。今回のシメージは2020年8月に使い捨てカメラで撮った写真に小説・エッセイ・短歌などなにかしらのことばを添えた作品集とします。
シメージ:ある夏の印象
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ぶきような作品集。毎月15日・25日に更新します。 ※『nice meeting you』冊子版の購入特典と同内容です。冊子版をご購入さ…
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