2022/11/06

神奈川県立近代美術館 葉山館でマン・レイをみた。「贈り物」と題されたアイロンに鋲が付けられたオブジェと、「障碍物」と題された古びた茶色いトランク(蓋が開いてハンガーがある)がよかった。何故だか安心した。
墓碑に刻まれた「unconcerned but not indifferent」という言葉も、思い出してだんだんよくなってきた。「無頓着に、けれど無関心ではなく」。

海を久しぶりに見た。
砂浜の上にいる人間のことは嫌いではない。
犬が近づくと怖がってしまうのをやめたい。波が迫ってきて慌てるのもやめたい。病気になってからずいぶん歩き方が変わった。遅く、ふらふらするようになり、恥ずかしいことを思い出しては立ち止まってしまうようになった。
ひとりで死んでいくことをのみこめた気がした。

本に線を引いたり、クラリネットで低い音を吹いたりすると安心する。昨日頭が痛いときは冷たい水を何杯か飲めば楽になるとわかって、安心した。美容師さんが最近は二の腕のマッサージをしていると話してくれたときもひどく安心した。

苦しみが多い。でも前歯が一本、神経がないのに頓着せず思いきり歯を見せて笑えるくらいには苦しんでいない。肘を張って餃子を口に入れるとき、とてつもなく誇らしい気持ちになるくらいには苦しんでいない。

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