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登拝の旅、地球の巡礼

 むかしむかし付き合っていた人に、物欲が強く、食べることについての好奇心が強く、においや手ざわりに敏感という人がいた。お酒や人の集まる場所や祭りも大好きで、女ぐせがいいとは言えなかった。
 この人が好きな祭りは、このあたりでは大きな祭りで、観光と合わせて訪れる人の多い伝統的なものだった。『伝統』などに関係する事も、彼の好きなもののひとつ。

 色んなものの欲が強く遊びが大好きな一方で、神仏に対しての礼儀を持っていた彼と初詣に行ったことがあった。彼はこんなことをつぶやいた。

——神様に手をあわせるときは、お願いごとをするんじゃなくて、自分と約束をするとよ(それを神様に見守ってもらうんだよ)。

 別れた理由は彼のふたまただったので、この言葉を思い出すたび「けっ」とおもいつつも忘れられずにいる。

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 どうでもいいことを書いたけど、京都で3つの神山に登った。着いたその足でまず大文字山に向かう。薄曇りの中、火床のところまで自分のペースで登っていった。じんわりと汗をかいた。

 次の日は伏見稲荷大社にお詣りをして、そこから稲荷山。紹介されている辻の方からじゃなく、千本鳥居の先を裏手を通って一ノ峰に向かっていった。大文字山より、起伏があった。

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 その次の日は、三輪山に登る予定だったけれど、ちょっとしたアクシデントのため叶わなかった。変更して耳成山に登拝させてもらうことにした。ちょっと肌寒さを感じるほどにひんやりして、静かだった。

 神仏に向かうとき、先の彼の言葉が浮かぶ。私は何を約束しにきたんだろうなー。自然の中をひたすら歩くと、とってもきもちが良かった。風が吹いて、土や草の香りがして、どこからか水の音や鳥の鳴き声が聴こえる。見上げると木々は新緑のうす緑色。

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 友人は『地球巡礼』と呼ぶ。その言葉をタイトルに借りた。

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片山 緑紗(かたやま つかさ)
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