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視覚についてのあれこれ

 私が住んでいる建物には出入り口が2か所あって、表は小さなメインストリート、裏は車も通るけれど交通量はごく少ない通りになっている。今日、裏口から出たところで白杖を手にした年配の女性に声をかけられた。私は手にゴミ袋を持っていて、先にそれを裏口の脇にあるゴミ出し所に入れてから、何かお困りごとですか、と訊いてみた。

——この道の右手に、古い階段があるんです。私の家の入り口なのですが、その階段はここよりまだ先ですか?

 その道を歩くときに見かける古い一軒家のことかな、とおもった。進む方向が一緒だったし、まだもう少し先ですよと言いながら隣を歩いた。女性は助かったと言いながら、歩いて疲れちゃったものだから厄介かけてすみませんねえと言った。どこへお出かけされたのかと訊くと、2ブロックくらい向こうの、近所のコンビニエンスストアに行ったらしい。午前中は日差しが強くて眩しかったから外に出られなかったのだと言った。私が出かけたこのときは、午後1時くらいで午前よりはいくらか雲が広がって日差しが穏やかになっていた。
 ふーん、視力が弱いとあまりに強い光は辛いのか、とおもった。
 そういえば父の友人ワタベさん(仮名)も、病で視力の多くを失ってからは少しの光でもしんどいと言って、四六時中サングラスをかけていた。

 その女性と歩いたのは100mくらいだったか。彼女の右側を歩いていたんだけど、だんだんこちらに近寄ってきた。身体の中心がずれていた。ずっと前のことだけど、姉と並んで歩いていたときに姉に「くっつかんで!」と言われたのを思い出した。両目の視力バランスがとれていないのかもしれないとおもった(私は左目がよく見えない)。
 目的の階段に着いて、女性は階段をゆっくり登って行った。助かりました、ありがとう、と何度も言われた(大したことはしていない)。

 このときは、光と闇の関係について思考がめぐった。片方だけ強くっても良くないんだな、とか、闇ってやっぱり必要なんだな、みたいなぼんやりしたやつ。それでしばらく経って家に帰って、アニメを観ていたらキャラクターの女の子の科白にこんなのがあった。

——ここら辺の動物は目が退化しちゃってるから、光に弱いはずだよ!

 ここで視力と光の関係ってどうなっているんだろうなと疑問が浮かんだ。視力が弱いから光を取り込む量も少ないのでは、という考えは単純すぎるみたいである。視力が弱い場合(あるいは退化していると)光というのはどんなふうに作用するんだろう。
 目が退化っていうか視覚がないという生き物として、モグラが浮かんだからとりあえず調べてみたら、「光に当たると死ぬ」とかいうのは噂であって事実ではないというのが出てきた。視覚の必要性に関しても、地中での生活のための適応みたいなことで、天敵とか生態系とかが理由みたいである。

 それで光と視力の関係性がよりわからなくなってきたところに、ゲーテの色彩論の中の言葉が出てきてさらにちょっと混乱する。

眼が眼であるのは、光のおかげである。動物のとるに足らない補助器官のなかから、光は光と同一なひとつの器官を作り出した。つまり、内なる光が外なる光に呼応すべく、眼は光に則し光のために自らを形成したのである。

ゲーテ「色彩論:教示篇」序文より

 ゲーテは置いておいて、じゃあなんで引用したのかというとちょっと記憶しておきたいからです。すみません。
 あの年配の女性やワタベさんみたいに、視力の弱い人が光に過敏になるというのは、目の機能のうちのどこか、網膜とか水晶体に異常が生じてそうなっているということなんだろう。アニメの科白は、まあ、アニメ(おはなし)だから・・・ということにしておこう。モグラに限っていえば、視力が弱い、ないからと言って光に極端に弱いということもなさそうである。彼らは視覚を必要としない生活環境に適応した、ということみたい。深海魚とかについては知らない。

 友人で、目の色素の薄い子がいた。黒目が薄茶色をしたその子は、体育の時間など屋外でえらく眩しがっていた。私はというと黒目がすごく黒くて、だから薄茶色をしたガラスみたいなキレイな目が羨ましかったんだけれど、色の薄いのも大変なんだな、とおもった。黒目は黒いままの私だけれど、年齢を重ねてなんとなく昔より眩しさに弱くなった気がするが、年齢とも関係があったりするのかな。

 ゲーテというと色彩論で、色の三原色のあたりでなんとなく知った気になっていたけれど、きちんと読んではいなかった。光と色の関係のあたりをもっと知りたい。視力と光の関係性はよくわからないままだけれど、とりあえず『色彩論』を読んでみたくなった。

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今日の「おいしい」:この週末、寒さが目盛り5つ分くらい急に増した感じです。ほかほかの海苔の味噌汁がとてもおいしかったですよ。

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