夜がくると木も眠る
このあいだ車で走行中に、川のところにウミウ(カワウかも)が見えて、手元にカメラを置いていたから、急いで車を停めて写真を撮りに近寄った。浅いところに立っていたウミウ(またはカワウ)を狙うも、やたらキョロキョロしてあんまりうまく撮れなかった(あとで気づいたけれど手ぶれ補正をオフにしたままにしてた)。
何枚か撮って、振り向いたらヤギがいた。撮っているときに何か、うしろのほうで声がするなとおもっていたのだ。ヤギは2匹いて、草を食んでいた。
このあたりではわりとヤギを飼っている家が多いから、すごく珍しいというのでもなかったけれど、こんなに近いのもあまりないとおもってヤギも撮る。ヤギの目というのは◡となっていてどこかアンニュイだ(ヒツジも)。つまり黒目(瞳孔)のとこが横たわっていて、それがなんだか奇妙といえば奇妙だ。正面からの笑ってるとしかおもえない顔とか、口元をぺらぺら動かす様子を見ていると可笑しくってにやけてくる。
ところでそういえば、友人でヤギが怖いと言っていたのがいた。ずっと昔の同僚のレイコは、どんな小ヤギだってものすごく怖いらしい。
都会に住むのぶりんは、鳥を怖がる。生きている鳥はもちろん、例えば絵に鳥が描かれているような場合や、小鳥の置物みたいなものでも怖くてイヤなんだとか。一度なんか、住まいの戸袋に鳩が棲みついてしまって毎日恐怖に慄いたこともあったと言った。宮崎で一緒に過ごしているとき、カラスの大群に遭遇したんだけれど、のぶりんは冷や汗をかいて表情までかちかちになっていた。
のぶりんには他にもたくさん怖いものがあるらしく、お面の類もすごく怖いといっていた。お面の、表情が変わらないところがすごく不気味で恐怖を感じると言っていた。怖いものがたくさんで、大変そうであるけれど、そんなのぶりんはばりばりのキャリアウーマンである(だから? と言われても)。
ウミウ(もしくはカワウ)はそんなにかわいくないけれど、ヤギはかわいい。このヤギはわりと小さめだったし(でも角があるね)。写真を撮ろうとしたら寄ってきて撮りづらかった。好奇心が旺盛なのかもしれない。私が山羊座だからかもしれない(てきとう)。
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ウミウ(カワウかなあ)とヤギを撮って、また帰るのに車を走らせてたらねむの木があった。この時期にみられる花でネジバナとねむの木の花はとくに好きで、この日も途中にねむの木をたくさん通り過ぎてきたけれど、背が高いし車道脇か山のほうにばかり生えているから、なかなか写真を撮ることができない。
今年はネジバナを見ていなくてさみしいけれど、ねむの木はちょっと車で走ればたくさん見られる。わさわさとした枝に、ワタがのっているみたいにぽふぽふのピンクの花をつけたねむの木は、見つけるたびにうれしくなる。すごくかわいい。
ねむの木の花は、近接して写真を撮るよりも、遠目で枝全体が風に揺れるのを見るほうが好ましいんだけど、せっかくだから写真におさめた。この木のは、少しピンクが薄い個体だった。
いま知ったんだけど、ねむの木って「合歓の木(合歓木)」とも書くらしい。中国の植物名だそうだけど、そう書くとなんだか印象が違う。花言葉は(ふだん気にもしないけど)<歓喜>や<胸のときめき>、<安らぎ>とか<夢想>みたいな向きのものがあるみたい。ふーん。
ここ数日はたしかに梅雨といった感じの、むしむしとした気候でたまらないけれど、ねむの木の花を目にすると少しだけ気もちがゆるむ。どうしてかはわからない。
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今日の「異物」:靴のなかで足に違和感があって、石ころでも入ったかなと脱いでひっくり返したら、正体はコーヒー豆でした。