Zさん 〜 未熟者 〜
長年高齢者を相手に仕事をしていると、
たくさんの出会いと別れがあります。
15年間で体験した たくさんの出会いと別れ。
その中でも印象に残っている利用者さんとの思い出を
記していこうと思います。
***
私の一生忘れられない、忘れてはいけない出来事です。
15年前に勤務していた施設は、
主に介護度3〜4の利用者30名と
介護度3〜5で認知症の強い利用者40名の
2フロアに分けられていました。
午後からは入浴介助で介護職員は全員浴室へ向かい
30名フロアは1人、40名フロアは2人の看護師が
カルテ記入等の業務を行いつつ様々な対応をします。
どうしても業務がまわらない日は声かけしあい、
介護職員にも助けて貰いつつこなしていました。
その日、私は30名フロアにひとり。
ナースコールの多い日でした。
鳴ればすぐ行かなければならない人も数人いて、
終始バタバタしていました。
15時になれば おやつを配ってまわり、
ひとりで起きられない人を起こし、
ひとりで食べれない人は介助して、
合間にトイレやオムツ交換。
ナースコール対応。
30分ほどでお皿の回収をし、
数えてEVに乗せて厨房へ連絡する。
というのがおおまかな流れです。
遅くなりすぎると厨房から催促の電話も入るため
手早く丁寧にしなければいけません。
あっという間に時間が過ぎていき、16時。
入浴介助を終えた介護職員も少しずつ戻ってきますが
30名フロアに人が増えるのはもう少しかかります。
小雨の降る、肌寒い日でした。
♪ ピリリリリリリッ
漸くひと段落着いた頃、事務所から内線が入ります。
「Zさんはいますか?」
こっちは今までバタバタしてたのに、自分で見に来てよ
なんて呑気に思いながら部屋へ向かいます。
部屋に…いないなあ。
トイレかな?
いないなあ。
ソファにも座ってない。
え、どこ?なんで??
当時の施設は階段やEV等の全てに鍵がかかっており
職員に配布されているマスターキーを使うか
暗証番号を押さないと使えない仕組みになっていました。もちろん鍵は壊れていません。
また内線が鳴ります。
「Zさんを保護したと警察から連絡がありました」
どうやら面会に来ていた人が一緒にEVに乗せて降り、
事務所の横やら浴室やら何人もの職員の目をすり抜けて
玄関に辿り着き、外に出てしまった。
事務所では人の出入りを映像監視していたはずですが
Zさんに気付かず通過したようです。
Zさんはのんびりとした性格のおじいさんで、
見た目では認知症と分かりません。
しかし、雨の中傘もささずフラフラ歩いていたこと
裸足にスリッパであったことを不審に思った人が
警察に連絡してくださったそうです。
離設してから20〜30分は経過してただろうという
見解だったと思います。
幸い怪我ひとつなく、笑顔で戻ってこられました。
当時は自分を責め、後悔し、泣かない事に必死でした。
泣いても仕方ない。私が悪い。Zさんに申し訳ない。
Zさんの家族にも何て謝罪すればいいのか…。
見守りすら満足に出来ない私は向いてないのでは
辞めたい、辞めたい、辞めたい。
『そんな顔してたら利用者さん達が不安になるでしょう。
無事だった事を喜んで、二度とこんな事がないように皆で反省しよう。色んな人の目をすり抜けてるし、30人をひとりで管理する事に無理があったんだから。あなたひとりだけの責任じゃないから。』
そう声をかけてくれた介護職員がいました。
『そもそも責任とか取れる立場でもないでしょ。そういうのは上の人間がとればいいんだよ。そのための管理職なんだから。利用者さんが無事で、色んな問題点を改善するきっかけになった。良かったじゃん。』
その言葉通り、翌日から業務改善が行われました。
ひとりきりで対応する時間は減り、
面会者は帰る時に必ず事務所へ寄るようになりました。
私自身も、この一件からより一層利用者さんの言動に
注意をして過ごすようになりました。
今では「心配性過ぎる」と周りに言われるほどですが
心配に“しすぎる”事は無いと思っています。
心配して警戒して何も無ければそれでいいじゃないか。
利用者さんが安全安楽に過ごせる事が1番大切だもの。
Zさん、本当に無事で良かった。
15年経った今でも後悔・反省しています。
***
今の私なら同じ状況で離設を防ぐ事が出来るかな?
うーん、、
たぶんバタバタしはじめた段階で応援よんでるかなあ。
厨房からの催促もそこまで気にしないだろうし。
「そこまで急ぐなら取りに来たら?」って思うし。笑
当時は業務や他職種に振り回されてたけど、
今は利用者さんの安全が1番大切って主張出来る。
まだまだ毎日反省することはあるし、未熟者ですが。
利用者さんには日々成長させていただいてます🙆♀️
というか、今ふと思ったけど
あの時 先輩看護師達からのフォロー無かったよな…
師長に何か言われたのかも覚えてないや 笑
そう考えると
今の私がいるのはあの介護職員のおかげでもあるな〜
今さらながらに感謝🙏