初めは綺麗な傷だった

今でも心がじくじくとするような痛みがある。

初めは綺麗な傷だった。
ただの小さな傷だった。
柔肌についた、小さな傷だった。
くりかえしつけられた傷が、少しずつ膿んでいった。
傷が治るより早く、そして前回より大きく、深く、傷は増えた。

3年間の大恋愛。小さな大恋愛。
熱っぽく、息ができないほど冷たい、そんな経験だった。

たった3年間のうちの、ほんの1年半の出来事を何度も何度も反芻して、鮮烈に思い出し、そしてその影が薄れていくことを知る。

初めは小さな傷だった。
ただの小さな傷だった。

それをくりかえし、くりかえし、掘り返して。いじくりまわして、ぐじゅぐじゅにしてしまった。
それはもう最初とは似ても似つかない姿だった。

何度も何度もいじくりまわしたその傷は、やがて瘡蓋になって剥がれ落ちた。
そこには大きな痕が残って、私はそれをそっと撫でる。

今でも傷跡は鮮明に痛みを覚えている。
きっと一生消えない傷跡。

きっと彼は私に傷をつけたことすらもう覚えていないだろう。
そしてその傷がこんなに大きな痕になってるとも、思わないだろう。

それでいい、私の痛みは私のものだから
私の人生は私のものだから

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