数えきれない人々が、行き交う街の片隅で
レジに並ぶ。初めての場所・初めてのお店。並ぶ列を間違えていたらしく次の人に先を越され、正しい列へと並び直し順番を待つ。次は自分の番。
次の人もやはり並ぶ場所を間違え、自分よりも先に品物をカウンターへ載せた。
店員さんが指摘をしようとしたのだけれど、それをそっと止めた。
『どうぞ、いいですよ、どうぞお先に。』と、また勝手に頭で考えるよりも早く
言葉が飛び出した。
そうしたら間違えてしまった人からも、店員さんからもお礼を言われた。
なんだかみんな知らないひとたちの集まりなのに、ふわんと、その場が和んだ。
店員さんは、その人の会計を済ませ、やっと順番が回ってきた自分へ
『すみません、おまたせしました。』とそう言いながら、さっきまでは
次々に来る人を、どこか機械的にただたださばいているように見えていた
その纏っていた空気が、どことなく柔らかなものに変わっているように思えた。
記憶の限りにおいては、これまでには経験の無かった出来事。またいつか同様の
機会があったなら、今日と同じようにできるような、そういうこころもちで
ありたい。そう、あれたらいいな。
☕️
巻頭の写真は、satomigoroさんのすてきな作品をお借りしました。
どうもありがとうございます。
写真に添えられていた、文章にも心惹かれました。