マンガ感想文「アンボックス」:名探偵はいなくても名刑事はいる

最近、よく刑事ドラマを見ていたので、ふと、できるだけリアルな殺人捜査を知りたいと思いこのマンガを読みました。
本編にあたる「ハコヅメ」はアニメ放映分しか観ていないので、外伝的立ち位置の本作主人公は知りませんでした。

しかし、同僚でもある本編のキャラクターたちが上手く絡んでくるのでそれも気にならず、じっくり読めました。

というわけで元警察官である作者が殺人事件を描くとどうなるのでしょうか?

→事件は名探偵の推理ではなく、事件解決の可能性を諦めない捜査官たちが必死に解決する。

たまにニュースなどで目にする、よくある男女の痴情のもつれの末に起きた殺人事件。
本作を通して、実はそれをあばくためにどれだけの努力が費やされているか想像した事も無かったと気付かされました。

アニメ「ハコヅメ」で、警察官もいろんな人がいて、職位階層にまつわる事を除けば、その人間模様はどこにでもある風景だと感じました。本作でもやっぱりそう感じました。

この「アンボックス」は、そのごく普通の人間模様の中にいる人たちが、知恵と力を振り絞り歯を食いしばりながら必死に捜査をしているマンガでした。

ところで、本作の良いところは悪役がいない事です。
現実にモリアーティーのような因縁の相手がいないことが普通ですし、そして犯罪や事故が起こらない事もありません。
作者が事件を通し、それにまつわる悪意を持って接してくる相手と他意のない人物を描くときに、双方の行き場のない感情を表す事で、見事に現実の人間を描写していると思いました。

読み終わると、完全にではありませんが、多少は警官嫌いが治ります(笑)。

あとは、刑事ドラマとは違う被害者/加害者の人生とその描写に、たいていドラマでは描かれない事件とその後のしんどさに、現実のニュースを観る目が変わるかもしれないと思いました。



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