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手紙


彼女は、わたしにとって憧れの存在だった。
ハッキリとした顔立ち、少し低い綺麗な声、風に靡く髪も、とにかく目で追いかけてしまうような人だった。
女子高育ちの清楚な子とは、こういうことをいうのだろう。
きっとわたしが男性として生まれていたら、恋に落ちていたかもしれない。
そのくらい魅力的な人だった。

この言い方だと今は違うかのように聞こえるけれど、そうではない。
ただ、今の彼女に会っても上手く話せないような気がして、複雑な気持ちから曖昧な表現になってしまうのだ。

彼女の真っ黒なロングヘアは、脱色を重ねた明るい色へ。少し低い綺麗な声は、酒やけしたような声へと変わり、目で追いかけていた彼女は、夜の街へと消えてしまった。

人は変化する生き物で、彼女もまた環境が変わり変化したのだ。
それは、悪いことではない。
過去の彼女に思いを馳せて、その寂しさから「変わってしまったね。」と彼女を否定したくない。

わたしは本当に好きなものを自分の中で留めてしまうから、あの子には「わたしがどれだけ好きだったか」伝わっていないと思う。
そう、これはある種のラブレターなのである。

彼女は彼女のままでいい。
わたしのエゴに付き合う必要なんかない。
いつも貴女が幸せでありますようにと、願っている。


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