今あの人に会えたなら「会えてよかった、って言うと思う。」
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読書記録 2024年3月
「どうしようもなくさみしい夜に」/千加野あい
書かれた悲痛はリアルすぎるし、一方で希望は超現実のような。夢かうつつかわからなくなるような、風俗嬢にまつわる話。
いつか消えるとは知りながらもただそれに縋って、諦めながらもその何かを抱きしめているときのその隙間の生きづらさや、逆に、生きてて良いんだって思える感覚が、文字を通り越して心にじんわりと沁みた一冊。
内容的には、自分は経験したことがないからわからなかったけれど、行き過ぎたストーカー被害など私にとっては超現実的すぎて安易に手を伸ばすとショックが大きい…と思った反面、現実でよくあることなのならば「自分の身は自分で守る」っていうことの大事さと、大事にしたいと思う相手にはそう思っている今その時点で護らなければいけないよ、とそう思わされた。
短編5篇の共通点として「匿名」というテーマがあるのかも、と途中から気づき最後まで読んだけれど、人をかんたんに陥れるツールにすることもできるのに、それと同じくらいのつよさで人をまもることができるという有用性もあるというのが描かれていて、はっとするものがあった。コロナ禍を乗りこなし乗り越えた2024年現在、インターネット上で人に会える感覚とともに対人で人と繋がる関係があるからこそ、気づけるものがある。そんな感覚でした。
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