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やるせなさと立ち向かえる

✎﹏

読書記録 2024年3月
「水やりはいつも深夜だけど」/窪美澄

窪美澄さんに惹かれて、すぐ2冊目📚
こちらは短編集なんだけど、それでもやはり短編でも衰えることない窪美澄ワールドって感じだったな。

とくに「砂のないテラリウム」での、夫婦関係が拗れた感じとそのやるせなさがじんわりと、でも的確に急所に棘が突き刺さってくる感覚。前に読んだばかりの「よるのふくらみ」に似ていた。
タイトルも「水やり」というワードがあるんだけど、短編のタイトルも全部植物やガーデニングの言葉が使われていて、植物の特性をつかった寓話ではないけど、たとえ話?みたいな感じで話が進むのでやけにリアルさが増す。

ただ、今まで窪美澄さんを読んできた中でもこれまでと違うなと思ったのは、「かそけきサンカヨウ」と「ノーチェ・ブエナのポインセチア」という2篇で、これはこの短編のなかでも前後関係がしっかりある話。
前編のほうは、物心ついた時から父子家庭の女の子が、お父さんと子連れの女性との結婚をずっと心のどこかで受け入れられてなくて、その子も煩わしいと思っていたけれど、絵描きをやっている実母の展示会に行ったことで自分の家族のあり方について模索していくという話。
後編は、そのようすをそばでずっと見守っていた男の子のこれもまた家族の話で、彼の家族はお父さんがずっと海外で単身赴任。家には祖母とお母さん。嫁姑関係で悩む母。彼は心臓に異変が見つかり、そのせいで母の立場は尚更弱くなってしまう。母にもう祖母との関係で悩んでほしくないと一心で、父に家族のあり方について方向転換を促す。やるせない気持ちを抱え続ける彼が、友人との家族についての対話を通じて成長していく物語。
「よるのふくらみ」はモヤっとして終わった(話の道筋はあるけど気持ち的に行き場のない感情だった)けど、この2篇はほっこりして終わった☺️という意味でこれまでの作品とは違った印象を受けた。

今からでも、家族の関係を築くことはできるのかな、とかそんな淡い期待を持ちつつ、でもやっぱり半ば諦めモードかな。

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