見出し画像

パイオニア

私は「物言う知的障害者」第一世代だったのだと思う。
私がブログとTwitterをほぼ同時に始めたのが、今から約三年前。

軽度知的障害や境界知能とはどういう障害なのか、それによってどの様な苦痛を感じているのかを自分の言葉で書いた。

それは当時、画期的な事として迎えられた。
文章で自分の障害を表す知的障害者は恐らく私が初めてだったから。
そしてその後、文章で知的障害を説明出来る当事者は多分現れていないと思う。

特にTwitterの反応は大きかった。

何か言えばそれなりの反応を示される様になり、それは概ね好意を持って受け入れられた。

しかし同時に数えきれない悪意も浴びせられた。
私を貶める為にひねもす私の一挙一動に目を見張る連中も現れた。

ツイートやブログが外部サイトに流出しだしたのは、Twitterとブログを初めて一年位経った頃だ。

流出されてどんな言われようをしているか見たいなんて酔狂な人間では私はない。
言葉のリンチにあっている事は確かめるまでもない事た。

この頃から徐々にTwitter内の人間とは距離を置き始めた。
関わるのは信頼出来る人間のみ、と決めた。

Twitter内の人間と距離を置いたのはもう一つ理由がある。
私のツイートはしばし議論の対象になった。
もとより私はTwitterを主張の場として利用していて、誰かと議論するつもりはなかった。
最初は返信していたが、相手は論証を曲げて私を打ち負かそうとする様な輩ばかりで、返信をするのはこの辺りから控える様になった。

しかし私のアカウントでは私をそっちのけにして、知らない人同士が争う様になった。
この段になって人間が嫌になってしまった。
元々人間嫌いだったが現実世界で関わる人は優しく、人間嫌いは治りつつあった。

しかし匿名になった人間は容赦なく攻撃をしてくるし、常に私が原因で諍いを起こしている。
これ以上人を嫌いたくなくてリプ欄さえ見なくなった。

ブログにも多少、障害を揶揄するコメントが来るようになり、コメント欄を完全に封鎖した。

いつの間にかフォロワー数は増えていた。
フォロワー数が増えると反比例する様に誹謗中傷は減った。
しかし完全に誹謗中傷は排除しきれていないし、今も私を観察し、弱みを見せれば攻撃しようとしている人間が居るのは知っている。

誰からも嫌われず生きれる人はいない。
分かってはいたが見えない視線が怖くて少しずつTwitterでの発信は控えるようになった。

また当たり前の事だが、私の正義が正しいとは限らない。
ある程度の人間がその意見に賛同するなら、その意見はある程度正しい、のだろうが、人の数だけ正義は存在する。
そして私の正義は誰かに取って悪だったりもする。
誰かにとって悪なだけならいいが、自分の正義が誰かを傷付けている事もあるのだ。

その事を深く考えるようになり、よりTwitterの利用に慎重になり始めた。

結果今となっては言いたい事が自由に言えなくなっている。

昔は歯に衣着せぬ物言いをしたものだが、最近はめっきり丸くなったな、と自分でも思う。
らしくないな、とも。
でも色んな意味で他人が怖くなってしまった。
自分が発言する事も怖くなってしまった。

今となっては辛うじて昔の様に言いたい事を言えるプラットフォームは誰もコメント出来ないブログだけ。

マイノリティが開拓者になる事は楽ではないんだな、と身を持って感じた。

それでも今まで発信してきた事に一切後悔はない。
軽度知的障害について正しい知識を説いて誤解を解けたという実感はあるし、境界知能の認知には貢献した自負はある。
かつて誰も歩いた事のない道を歩くのは楽ではなかったけれど、努力はある程度報われたと思う。

問題は今、自分がひよっている事だ。

まだ開拓すべき部分は多く残されている。

他人と自分の間にどう折り合いを付けるか。
発信する事が怖くなった自分をどう変えるか。
何だかんだで一番影響力が強いのはTwitterで、ここで発信出来なくなるのは大きな痛手である。
だから私は自分と向き合う必要がある。
昔の私に戻る為に。

今は知的障害や境界知能の人も少しずつ自分の発信を初めている。
でも忘れないで欲しい。
光を浴びれば影は必ず出来る事を。
時にその影は心に入り込み精神をも曇らす。
その覚悟が出来ない人には障害の発信はお勧め出来ない。

それでも私が拓いた狭い道を誰かがたどり、いつか大きな道になってくれれば、開拓者冥利に尽きる。

私もその為に道を歩きやすく舗装しよう。
次の世代が歩きやすい様に。
昔みたいにがんがんショベルカーで土をどかす事が出来なくても、スコップで道をならす位はきっと出来るよね?
私は私に問いかける。

昔みたいに威勢のいい返事は返ってこない。
でも確かに、一つ頷いたのを私は見逃さなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?