調香師のリアル〜「パリの調香師 しあわせの香りを探して」鑑賞記〜
こんにちは、9th-perfumeの調香師yusukeです。
今回は、調香する身としてずっと気になっていた映画『パリの調香師〜しあわせの香りを探して〜』を鑑賞して思ったことを書きたいと思います。
パリの調香師〜幸せの香りを探して〜
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この映画は、格差はあれども同業の調香師目線で拝見してとても感慨深い作品でした。
その目線で大いに偏りのある映画レビューですが、最後までお付き合いくださいね。
天才調香師の栄光と苦悩を描く
CRISTIAN DIORの名香『j'adore(ジャドール)』を調香した天才調香師アンヌ(敬称略で失礼します)の苦悩と自信を取り戻すヒューマンドラマを描いた本作品。
簡単なあらすじをAmazonプライムさんから引用しますと、
ざっとあらすじを記憶の限り書いていきますね。
まず、嗅覚に衰えが見え始めていた主人公の調香師アンヌ。
市場関係者もそれに気づいてか、
アンヌは香水を創る調香師としての仕事がほぼ皆無に。
代わりに舞い込んでくるのは、トイレタリー用品の仕事、工場で発生する汚臭除去の仕事のような、本来のエルメさんがやりたくない仕事ばかり。
そんな中で運転手として新しく派遣された運転手・ギヨーム(主人公)
不器用ながら、気難しいアンヌの良き理解者に
意外に鼻が利き、営業力や交渉力もあり、アンヌに才能が見出される
というストーリー展開で、アンヌが『嗅覚の衰えを感じ自信を失い、やりたい仕事が出来てない自分への葛藤』をいち早く気づき、最終的にはタッグを組んで『本当にやりたかった仕事=メゾンブランド香水の調香』に前向きに挑戦するところでストーリーは終わっています。
ここからは調香師目線で、この作品の素晴らしさについて書いていこうと思います。
見どころ①:調香師の生態がリアルで安心しました
劇中によく出てきた仕草や所作が、本当に面白かったです(笑)
身の回りにあるもの何でも匂いをまずチェックしてしまう。。
僕は人生でこういう仕草は恥ずかしくて人目を盗んでやるものだと思っていましたが、いざこの世界に入ってみるとそういう人ばかりで安心したんですよね。
この映画でも、滞在先のホテルのシーツに『ガラクソリドの匂いがきつい』と難癖を付けるセリフが出てきたり、出先の仕事で洞窟に入るシーンがあるのですが、その壁画のインクや土の匂いを嗅いでいたり、、、、
『よし自分も大胆にこういう事やっていこう!!』と勇気が出たものです(どんな視点だよw)
見どころ②:調香師の格差と現実を知れる
次にメインのストーリーラインの部分ですが、真面目なキャリア形成については考えさせられましたね。
スポーツ界、アート界、芸能界、ビジネス界、どんな世界でも『プロ』としてスポットライトを浴びられるのはほんの一握りですが、
調香師の世界でもそれは同じで、一流の世界に入れば大手メゾンでサンプルを提供するだけで数百万円というくらいの報酬で仕事を与えられるけど、その枠に入れるのは、ごく僅かな世界で。
それ以外の調香師は、おそらく花形の仕事であろうファインフレグランス(香水)の仕事にすらありつけず、香りのちょっとした監修とか、困りごと解決のような仕事ばかりになってしまうんですよね。
見どころ③:ギヨームの能力開花に、自分を投影できる
ギヨーム目線で見たら、まさか気難しい調香師に出会って、自分が調香に手を出すだなんて思ってもなかったでしょうね。
出会いとは交通事故のようで、不思議なもんです。
・家族も背負っていて自己犠牲が求められるお年頃
・だから致命傷を負うようなチャレンジはしづらい
・もうこれだけ生きてきたら自分に能力なんて眠ってない
大なり小なり年を重ねるにつれて『自分のことを諦めてくる節』があるんじゃ無いかなと思うんですよね。
そんな自分も何か踏み出せそうな、そんな勇気を貰える映画でした^^
最後にこの言葉も素敵だったので掲載して、この記事を締めたいと思います。まさに香料の組み合わせのように人生も多様性の時代ですね〜!
🔽10/14からマルイ有楽町店様でpopupをやる予定です〜。
オーガニックでナチュラルで物珍しい香料や、僕自身が2023年に制作した作品も展示予定です。お近くに来られた方は是非遊びに来てくださ〜い。