短編詩的小説「ひとふさの髪の世界」
触れることなく
そよぐその髪をただみていた
深い深い眠りを仕舞おうとして
指を使って土を引っ掻くこと3日
その横には大きな蟻塚のようなものができた
しかし3日目の夜半にはもう
その髪のひとふさも残っていなかった
何も知らせのなかったその裏切りに
ただ沈黙することにした
裏切りだ裏切りだと眼球の裏側が
苦しい暑い冷たい怖い
何をみても
沢山の世界があろうと
横たわる闇の隣には誰もいなくなった
からっぽの墓穴だけが
そこに残った
哀しいなんてものじゃない
自分を弔うかのような甘いそして
皮膚をつねられたような痕に
ただ沈黙するだけしか出来ないのだった。
さようなら、
どうも、裏切りを、
ありがとう
それがあなたの
幸せなのなら。
終わり。