投資の正当化 - 「眼から鱗」の潜在的顧客ニーズを掘り起こす
~顧客起点マーケティング Part 2~
スマートニュースの急成長は、実はマーケティングの手法ではなく、本来プロダクト自体が持っていた優れたUI/UX/コンテンツにありました。マーケティングが行なったのは、元々プロダクトが提供し得る代替性のない(独自の)便益を開発し、そのニーズがある潜在的な顧客の組み合わせを洞察し、それを効果的に結びつけたということです。
つまり、そもそも、スマートニュースはNo1アプリになりえるプロダクトの強さを持っていたが、それを十分に生かし切れていなかった。のちに、大成長を支えた「英語ニュース」や「クーポン」や米国での「政治関連ニュース」の提供や訴求は、本来、顧客の潜在的なニーズであり、かつ、スマートニュースが提供しうる独自便益だったということです。
顧客起点のマーケティングは、顧客分析のフレームワークを駆使して、この潜在的顧客ニーズを洞察し、顧客が高く評価してくれる形で新コンテンツとして開発し、定量的にその投資価値や投資効果の正統性を明示しつつ、顧客の潜在ニーズと、新コンテンツと、それを提供するスマートニュースというプロダクトを結びつけたということです。
顧客起点マーケティングのフレームワークを活用して継続的に成長したビジネスの共通点は、プロダクトが独自の便益を提供しているか、独自の便益を提供しうる機能やUI/UXをそもそも備えていたかどうかです。プロダクトが競合劣後していたり、顧客への独自の便益が提供できない状態では、投資は正当化できません。その場合は、投資を急がず顧客起点でプロダクト自体を見直す必要があります。
年間20億円から160億円まで売上拡大し、日本No.1販売本数を誇る化粧水となったロート製薬の「肌ラボ」は、圧倒的な独自性とその便益化の可能性を有していました。売上の鈍化と利益縮小が4年以上続いていた南仏発祥のコスメブランドのロクシタンが、2年間で過去最高の売上と利益を達成しえた理由は、あらゆる「ギフト」機会に独自便益を提供しうるプロダクトの独自性があったからです。
プロダクトに独自性が無ければ、マーケティングの手法だけでは継続的な成長はなしえませんし、マーケティング担当者の属人的なセンスや経験だけでも継続的な成長は叶いません。一過性の成長になりがちです。
実際のマーケットの顧客を起点にした「顧客起点」マーケティングのフレームワークは、継続的な成長を実現しうる「非属人的」リーダーシップをもたらします。特定の役職者、部門、経験者が決定権や影響力を持つ、「属人的」リーダーシップが働いていると、社内の意思決定は、実際の「顧客」から離れていきます。「お客様が最も大事」と宣言しつつも、実は「“顧客とはこうあるべき”という思い込み」「昔の顧客に関する古い記憶と成功体験」に基づいた意思決定になり、「顧客」不在の「提供者起点」ビジネスになってしまうのです。
M-Forceでは、これまでに顧客分析・戦略構築サポートを数多く提供させて頂いていますが、リアルな顧客調査と分析後に、多くのクライアントからお聞きするのが「知らなかった(新しい発見)」「想定と違っていた」「眼から鱗でした」です。これこそ顧客起点の始まりであり、ビジネス大飛躍の可能性を示しているのです。
--------------------------------------------------------------------------書籍紹介: たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)1000人より1人の顧客を知ればいい。P&G、ロート製薬、ロクシタンを経て「スマートニュース」をアプリランキングで100位圏外からNo.1へ伸ばした著者が確立した「顧客ピラミッド」「9セグマップ」「N1分析」を全公開。