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戦略の長期的固定化とリアルタイムとの乖離がもたらす落とし穴

~顧客起点マーケティング Part 4~

M-Forceがサービス提供するT A M(Total Addressable Market = 獲得できる可能性のある最大の市場規模=100%シェアの枠)の定義サポートから、量的調査設計、実地、分解分析からN1分析には調査の専門性が必要となりますが、そこから導かれる「顧客ピラミッド(5セグマップ)」や「9セグマップ」の概念はとてもシンプルで、マーケティングの専門知識は不要です。
このフレームワークは、その対象とするプロダクトや事業、さらに競合の立ち位置をマーケット全体の中で捉えることができ、かつ顧客のセグメントが競合含めて可視化できるので、実は、C E O含む経営層が議論すべき課題やテーマは、この中に内包されているのです。

経営層が意思決定対象とする事業戦略、投資戦略、組織、人材、開発、営業、M&A、対外的パートナーシップなどは、P L、B S、C F関連の財務指標を見ながら行うことが多いですが、本来は、どの意思決定においても、それは、自社プロダクトに対して潜在的な顧客がいるのかどうか? その顧客の数はどれだけいるのか? 競合に対して非代替性があって収益に継続性が見込めるのか? という点で、その正当性が決まります。

つまり、T A Mを定義し、その中で、自社が提供しうるプロダクトの独自性や便益の可能性に対して、そのプロダクトの潜在的な「顧客」がどれだけいるのか?その組み合わせは実現できるのか? に対して経営層の意思決定は意味を持つのです。自社が提供しうるプロダクトと顧客の関係が、経営戦略を左右するのです。もちろん、経営意志としての戦略は重要ですし、戦略を頻繁に変え続けるとその実行が伴わなくなります。しかしながら、経営戦略が意味を持つのは、提供しうるプロダクトと顧客の関係が成立し、事業としての成長と収益性が正当化できる場合においてであり、長期固定が前提ではないのです。以前に指摘した、スタートアップから大企業化する過程で「顧客起点」が失われる理由は、経営層がリアルタイムの顧客実態から解離するということであり、戦略を長期に渡って固定化し始めるということです。

顧客の心理や行動は、世の中の環境変化や自社商品との関わりや競合の動きに応じて常に変わり続けており、常に変化し続けています。つまり、なんらかのマーケットや顧客の事実に基づいて構築される戦略(何をする・しないの選択)は、決定したその時点から、その根拠とした事実が変質しているという意味で、陳腐化している可能性が高いのです。プロダクトや事業を継続的に伸長させるには、T A M全体のリアルタイムで顧客の心理と行動とその変化を理解し、固体化の罠に囚われず、短期、中長期での戦略を強化改善し続けることが重要なのです。

--------------------------------------------------------------------------書籍紹介:  たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)1000人より1人の顧客を知ればいい。P&G、ロート製薬、ロクシタンを経て「スマートニュース」をアプリランキングで100位圏外からNo.1へ伸ばした著者が確立した「顧客ピラミッド」「9セグマップ」「N1分析」を全公開。

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