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君のために生きてみたいと思ったんだ

強く生きたかった。
強い人だと思われたかった。
1人でも生きていけるようになりたかった。

でも本当は、誰かに必要とされたかった。

昔からそうだった。

ひとりでも平気だというような顔をしながら、周りからの評価ばかり気にする人間だった。

褒められては安心し。
頼られては安心し。
甘えられては安心し。
必要とされては、安心した。

だけどいつかは必要とされなくなる。
みんな、もう要らないと私に告げて、サヨナラの前触れもなく離れて消える。
だからいつも覚悟していた。
必要とされる安心感と同じだけ、いつ不必要になってもいいように準備をしていた。

「私、めんどくさいよ」
「気分屋だからさ」
「自由人でごめんね」
「ひとりが好きなんだよね」

友達に、恋人に、時には家族にだって。
笑いながら、冗談めかしてそう告げる。
距離を詰めないように。
距離を詰められないように。

大切には思ってた。
好きだとも思ってた。

でも、結局自分が可愛いのだ。

私は私が傷つかなくて済むように、いつも誰とでもほんの少しの距離を持って接した。

家族とは離れて暮らしている。
学生時代に出会った友人で、今も連絡を取る人は5人もいない。
職場を変わる度に連絡先は新しくなった。

その時出会った人たちと、その時だけの関わりを持って。
浮遊している。
留まってしまわないように。
そこでしか生きれないような人間にならないように。

いつも、いつも、いつも。
捨てられる前に逃げてきた。

ある日突然、目の前から姿を消した。

長く一緒にいたのに、音信不通になった。

君は1番じゃないんだと、急に告げられた。

会いたくないと、突き放された。

0か100しかないんだと、目の前で泣かれた。

約束の日に、迎えはこなかった。

そんな人たちがいた。

その度に泣いた弱虫な自分を捨てたくて、強く生きると決めたんだ。

だから君が好きだと言ってくれた時。
私は、いつものように告げた。

「私、めんどくさいよ」
「きっとすぐ嫌になるよ」

どんな風にと聞かれるだろうか。
そんなことないよと言ってくれるだろうか。
付き合ってみなきゃ分からないと言うだろうか。

君からの返事を待ちながら、そんなことを想像した。

けれど君は、そんなことは言わなかった。
ただ一言。

「そんな貴女が欲しい」

そう言った。

誰かと飲んで酔っ払う度に、会いたくなったから君のところに帰るねと電話してくる。

2人で飲みに行く度に、ずっと一緒にいたいと私の手を握る。

同じ布団に入る度に、おやすみと言いながら足を絡めてくる。

半年。6ヵ月。180日。

ずっとそれを続けてくれた君のことを、私は信じ始めてるよ。
今までずっとはぐらかしてきたけど、ちゃんと向き合おうと思い始めてるよ。

傷つきたくないからなんていって、予防線張って距離置いて逃げながら生きることの方がよっぽど弱い生き方だってこと、本当はとっくの昔に気付いていたんだ。

だから、
変わってみようと思う。
変えてみようと思う。
変わりたいと思う。

これからの日々を。


『君のために生きてみたいと思ったんだ』


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