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美術基礎✖️科学技術(アーティスト✖️研究者)対談 【特別企画】

こんにちは!
9kidslab -ナインキッズラボは「デザイン」を通じて、クリエイティブ領域を横断し「人生を楽しみながら切り拓く」子どもを育てる、小学生対象のオンラインスクールです。

それを実現しているのは
第一線で活躍する個性豊かな講師陣彼らが作り出す掛け合わせの授業です。

今回のnoteは、アーティストである「美術基礎」の杉本克哉氏
起業家であり研究者である「科学技術」の原田久美子氏が語り合うスペシャル対談の模様をお届けします!

これまでの授業を振り返りながら、

・お互いの専門分野やクラスについてどんな印象があるか?
・「アート」×「サイエンス」掛け合わせクラスの誕生秘話
・「問いのデザイン」クラスってSTEAM教育なの?
・今後「アート」×「サイエンス」クラスで何ができるか?

など、普段のオンラインクラスでは聞けない本音や魅力について伺いました。

子どもがのびのびと自由に発想し、発言できる。そんな授業を紡ぎ出すお二人の人柄に触れ、9kidslab(ナインキッズラボ)の今後の展開から目が離せないと感じる対談です!

問いのデザイン講師 特別対談
(左)「科学技術」クラス 原田久美子氏
(右)「美術基礎」クラス 杉本克哉氏

【質問①】「アート✖️サイエンス」ーお互いの専門分野にどのような印象を持っていますか?

(杉本さん)美術の世界は、科学技術が発達することによって変化する部分もあります。例えば、写真技術が発達することによって絵描きは肖像画を描かなくなり、より自分の物語を描くようになったように、科学技術が発達して美術が大きく変化することもあり、必ずしも遠い分野ではないと認識しています。最近では、AIが絵を描ける技術が生まれてきて、無視できない、常にちょっと隣にあるという感覚で認識はしています。

(原田さん)私も同じです。美術と科学技術は似て非なるものと思われがちなのですが、どちらかが進歩したら、それに合わせてもう一方をカスタムし、お互いが切磋琢磨しながら進化していくものだと思います。基本的には根底の部分が似ているのではないかと思っていて、何か作りたいものに関してどうしたら作れるかとか「思考、設計、実践。成功と失敗と繰り返す」というプロセスは一緒かなと思っています。

(杉本さん)美術の場合だと、「こんなものを作りたい」と思って制作を進めていく中で、全然違う意識になって副産物の方がメインになることもあります。おそらく科学も何かを目指していたけど、実験の結果から他の違う技術が発達することがおそらくあるのではと思っています。

(原田さん)偶発的な出会いではないですけど、「この方法だと違う結果になるけど、面白いからこちらをやってみよう」というのはあります。

【質問②】アート×サイエンスの掛け合わせクラスはSTEAM教育になると思いますが、意識されることは?

(原田さん)あまり意識していませんが、はたから見たら「これってSTEAMなのだろうな」という感じかなと思っています。そもそもSTEAMは分野ごとに分断して存在するものではなく、その根底にある考え方は全て同じだと思っています。それがサイエンスなのかアートなのか、それともエンジニアリングなのか、手段が違うだけかなと思っています。

(杉本さん)そう思います。STEAMモデルを明確に参照したという感じではなく、最初の授業設計の際に、たまたま話し合って出てきた形式が、共通のテーマ設定をし、「美術」と「科学技術」を交互に受ける掛け算型のスタイルでした。意識しているかと言われたら意識はしていないですが、似寄る部分はあると思います。

(杉本さん)言語を選んでテーマを設定するのがすごく難しかった気がします、今回、ターム毎に「光る」「回る」「くっつける」「広がる」の4つのテーマで授業を組み立てています。他に「流す」「切る」「重ねる」「のばす」など様々な候補があったのですが、二つの分野で共通する単語を考えながら、とにかく単語を羅列して決めた記憶があります。

(原田さん)テーマ設計の時、面白かったですよね。
「どのような講座がいいのだろう?」と悩みましたが、あのブレストがアートと科学が混ざった瞬間かなと思いました。

動詞でぶつ切りになって、科学は科学、アートはアートと言う感じでクロスしないのでは一緒にクラスを担当する意味がない、何か共通のワードをテーマにしてカリキュラムを組んだらどうなるのだろう、どんなワードだったら二人で面白い掛け算ができるのだろうというのをとことん調べました。

(杉本さん)確かにこの打ち合わせが一番、我々の授業の中の根幹になってきている気がします。

【質問③】子ども達の個性を引き出す上で、気をつけていることや絆づくりの工夫はありますか?

(原田さん)ケガにつながる恐れのある実験は、間違って覚えてもらいたくないので、授業スタイルで手順の説明をきちんと行いますが、前提として、まず初めに「みんな同じ答えにならない可能性があるよ」、「みんなと違っていいのだよ」という安全な場作りをしています。なぜ違ったのかということは別に考えればいいだけだと思っています。

(杉本さん)美術の場合、そもそも答えが明確にない上に、参加しているお子さんがとても意欲的なので、出てくる表現はかなり個性的でキャラクターが立っている印象があります。意欲的な子は発想を止めないようにのびのびやってもらうことを大前提として、言葉がけを工夫しています。結果として、こちらの想定している以上の面白い作品が毎回の授業で生まれています

【質問④】これまでどのような授業をされましたか?

(原田さん)「光る」と「まわる」のテーマでは、目で見て変化がわかりやすいもの、さらに自分でこうやったら面白いかも?とチャレンジできるような講座の組み立てを行いました。

(杉本さん)絵画、版画、アニメーションなど異なる素材でなるべく被らないように、また、普段あまり触れたことのない素材を使えるように考慮しながら授業を組み立てました。

【質問⑤】お互いの授業に関して

ー杉本さん(美術基礎)から見た原田さん(科学技術)の授業ー

(原田さん)UVライトを当てて光るものを探す「光る」がテーマの授業の中で、子ども達がZOOM画面からフレームアウトし、「これは光るかな」と家中を走り回ってひたすらチェックしていたのがすごく面白かったです。参加された子の一人が、飴を舐めていた自分の舌が光った発見を話していて、授業で聞いた話をすぐ、自分で探し出して、実験として落とし込んでいたのは感心しました。

「飴」がUVライトで光ることを発見し、
舐めた後の「舌」も光るのでは?と見せてくれた生徒さん

もう一つは、「回る」がテーマの授業で、美術だと座学よりは制作する時間がどうしても必要なので、導入部分の座学の展開が理科の授業のようで面白いと拝見していました。

原田さんの授業を拝見して知りたいと思ったことは、実験結果として明確に正解と失敗がある時に、答えではないものをどのように認めるのかどういうふうに捉えられているか気になります。

(原田さん)私の講座はテストではないので、仮に失敗しても、「なぜ失敗したんだろう?」と問いかけるだけで、「ここが違うのではないか?」と自分で仮説を立ててもらえるような声かけや「こうしたらうまくいった」というヒントを画面越しでも他の人から得られるような声かけをしています。

(杉本さん)オンラインの授業だと、子どもたちが制作に没頭していて、手元が何も見えていない状態が結構あるのですが、科学技術の授業ではどのようにされているか気になります。「ちゃんとできている?」「見せて」と声かけをしてしまうことが多々あります。

(原田さん)コロナでオンライン授業が始まった当初は、画角の狭さを感じていました。美術同様、科学も手元が見えないと何にもできないので、子ども達の実験がどうなっているかわからないと気を揉んでいました。今は逆に、見えなくてもこの画角でできるにはどうしたらいいかを考えながら実験しています。

さらに、言語化してみることも心がけています。子ども達は「こうなったよ」と現象を画面越しに見せてくれるのですが、それをきちんと言葉に出すことはすごく重要だと思っています。「どう回った?」「どんなふうに光った?」と問いかけ、子ども達の言語化を促しています。

ー原田さん(科学技術)から見た杉本さん(美術基礎)の授業ー

(原田さん)杉本さんの授業全体の組み立てがすごく上手だと感じました。「これから制作をするよ。その前にこれはちゃんと準備しようね。」という部分を押さえているところや、授業の最初にテーマを伝え、ゴール設定をされているので、受ける側はすごくスムーズにインプットできると思いました。分野の違う他の方の授業を見ることはあまりないので、私も実際に受けているような新鮮な気持ちで拝見していました。

(杉本さん)ある程度のゴールをあらかじめ設定するのは、意欲的な子が多い場合には向いていると思います。ゴール付近のイメージを設定すると、それを軽々超えて、絶対にそれ以上のものを作りたいと思ったり、そこから外したりと自由に発想する子ども達が多いので、最終的にいつも度肝を抜く展開になっています。

美術基礎クラス「ランプシェード」生徒さんの作品

(原田さん)ランプシェードを作った「光のデザイン」の講座では、子どもによって全然違う独創的な造形ができていて、子ども達なりのコンセプトや様々な発想があったと感じる一方で、科学の視点から見ても面白く、「光が散乱するってなんだろう」という講座に繋げられるかなと思いました。

また、ストーリーを考える「終わらない絵」の授業は、導入の部分が科学だなと思って拝見していました。まず、目が錯覚する、脳が錯覚する絵画をフックで出されていて、そこから終わらないストーリーを作って絵に描いて発表しようという流れがとてもいいと思いました。

マウリッツ・コルネリス・エッシャー
錯視を利用した「だまし絵」で知られるオランダの版画家

(原田さん)今回はテーマだけを決めて、お互いがテーマに沿ってカリキュラムを作りましたが、今後の展開として、アートと科学が連続的に繋がるような講座を作っていく、例えば、美術の「終わらない絵」に繋げて「なぜ、動いてないのに動いているように見えるんだろうね」を問いにして実験しても面白いのではと、杉本さんの講座を見ながら想像が膨らみました。

(杉本さん)それでいうと科学技術の「光る」授業の後で、UVライトを当てながら蛍光塗料で光る絵を描く美術基礎クラスに繋げるのも面白いと思います。つながっていくと面白いし、回を重ねるごとに繋げていけそうと思っています。

【質問⑥】サイエンスとアートを掛け合わせることで今後どのようなシナジーが期待できると思いますか?

(原田さん)そもそも科学と美術を掛け合わせた授業は前例がないと思っていて、何が起こるか全くわからなのでワクワクします。

(杉本さん)「光る」と「回る」の講座が終了し、今後「くっつける」、「広がる」と徐々に拡張していけるような講座をイメージしています。回を重ねる毎に、プログラムとして噛み合い、最終的にしっかり掛け合わせられたらと思っています。4回の全てのタームを終了した時に、1年間の通しで考えたことをフィードバックすることで、ある程度形になって、掛け合わせてできたらというイメージでいます。

(原田さん)科学という専門領域としての広がりだけじゃなく、分野を超えた広がりみたいなものが、最後の4回目のタームで行われ「だから美術と化学の掛け合わせだったのね」と答え合わせができるといいなと思います。

(杉本さん)まだイメージできていないのですが、一番初めのキーワードを立ち上げた時に、この4つの言語だったらいい着地点になるのではないかとひらめきがありました。最終的にいい着地点で、一年を通しての答えが導き出せるのではないかと期待しています。

(原田さん)正解はないと思っていて、一年を通して美術と科学というものから、子供達が何か感じ取ってくれると嬉しいです。「別々のものじゃなかった」と少しでも思ってくれたら一緒にクラスを進めた意味があるのではと思っています。そう思ってもらうためにはどうしたらいいか、まだまだ考えないといけないと思います。

【質問⑦】今後の授業で挑戦したいことはありますか?

(杉本さん)個人的な興味として、AIを学校教育でどのようにとり入れるのか、ある程度拒否するのかということを考えています。例えば、画像生成で簡単にイメージが生成できることは、すごくいいことだと思っている反面、本来そこに費やしていたエネルギーがなくなることによって我々人類は考えなくなってしまうのでは、思考を放棄するきっかけになるかもしれないのではと懸念しています。

新しい技術を実験的に取り入れながら、プログラムを作れたら面白いと思いますし、それを逆手に取りながらプログラム作れたらというのは漠然と考えています。

(原田さん)科学から得られた結果やデータをアートにしてもらえないかと思っています。撮影データ、生成物、色の変化で生じたものなど、そういうものを別の視点の人が扱ったらどのようになるのかというところに興味があります。私たちはデータとしてしか残さないですが、別の使い道に活用できると面白いと思います。

また、私の周りには面白い研究をしていた人がたくさんいるので、ゲストとしてお呼びし、クラスをしていただく機会を設けたいと思っています。

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最後までお読みいただきありがとうございます。

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