夏
夏は影が青い。じゃあ冬の影は何色なんだろうか? 鈍色? もう冬のことは忘れてしまった。鈍色だと思うとそうだったような気がする。人間というものは、そうやってなにもかも忘れ、そして都合よく思いだす。この夏の鮮烈な青色も冬になったら忘れてしまうだろう。こんなにもうつくしいのにな。
このうつくしいという感情しか憶えていないから、だから夏は、夏にいない僕たちにとって特別な季節であり続ける。夏まっただなかにある僕たちにとっては、この蒸し暑さ。それだけが夏だ。
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小魔術