2018-07-09-11:48

 夏の夜の匂いで宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のことを想起した。というのも、夏休みの読書感想文の課題で読んだ本のなかでゆいいつ刺さったのが『銀河鉄道の夜』だからだ。それに、あの小説の季節はたぶん夏だからだ。どこにも明示されてはなかったと思うけど、空気感が完全に夏のそれだ。だから僕の記憶に強く残っている。
 匂いからある記憶が思いだされるというのは文学的なモチーフだ。プルーストの『失われた時を求めて』では、紅茶にマドレーヌを浸して食べたときのその匂いで、とても長い過去の物語を回想する小説で、これから匂い・味で特定の記憶がフラッシュバックすることをプルースト現象と呼ぶようになったらしい。
 そういえば、雲の切れ間から太陽の光が放射状に射す薄明光線(天使の梯子)のことを、レンブラント光線とも呼ぶ。このレンブラントとは、あの有名な画家のレンブラント・ファン・レインのことだ。こうやって、なにかの現象に科学者ではなく、芸術家の名前が冠されるのはすごいことだな。現代ではもうありえないことだろうな。

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久慈くじら
小魔術