いち愛好家のショートショート『味つけ片づけ』
これを使うと、とにかく片づけが、おいしくなる。
もともと片づけは、味気ないもの。
できるなら、先延ばしにしたいもの。
変わった考えだけれど、許して欲しい。散らかるのは、遊んだり、仕事をしたり、生活を営んだ、せっかくの成果と言えないだろうか?
言い換えるなら、片づけは、心が動いた証拠を、無かったことにしてしまう行為。
だから、つまらなくて当然。
しかも、中には、触れるだけで、心を痛めてしまう品もある。例えば、私の場合なら、失恋した相手に貰った、モーツァルトのCD。
でも、いつかは、片づけなきゃ、だ。
そんな時、私は、片づけの醍醐味を感じられる「片漬けの素」を、物に振りかける。
そうすると、無味乾燥だった片づけが、味わい豊かな時間へと変わる。
味は、ジンジャエール・シャンパン・日本酒の繊細な味、ありとあらゆる味が、シュガースティック・スタイルで、市販されている。
ほぼほぼの物が、ひとつまみのそれで、おいしくなる。
CDを片づける時は、甘いチョコで味つけした。
ビターチョコ味になったけれど、そこは、ご愛敬。
なにより、片漬けの素は、心がすっきりするという、天然の後味を引き立てる。