【六畳一間で愛してる】忘備録と感想文その②
六畳一間で愛してる、後半の忘備録兼感想文です。
物語の核心にも触れてますので、前半も併せて読んでいただけましたらうれしいです。→【六畳一間で愛してる】忘備録と感想文その①
前半が終わって10分間の休憩が入ったのですがこの時
「え、あれで終わりじゃないんですか??!」という衝撃に襲われた私でしたが、10分間の休憩の間で「ここから予測できるであろう事態を想定して、受けるダメージを軽減しよう。」と考えました。
あの幸せな結婚式からまだ話続くくらいだから、最悪の事態くらい想像しておかないと、私が持たない気がする、と10分間の休憩でよく思ったものです。
そして、後半が始まりました。
あの六畳一間で、沙織里に話しかけながら真一は会社に向かう準備をしてました。
すいません、真一さん その棚の上のお写真…。
予測していた事態の1つに見事にぶち当たり、ここで俺のハートが打ちのめされかけました。
あくる日、真一の弟、健二とその嫁真由美、そして真一と同じ会社に勤める人事の田島さん(中村舞)。異様にギクシャクした空気が六畳一間で流れ始めます。
真一は沙織里の料理をほおばりながら話をしていますが、その料理は真一以外には見えていないようで、料理に手をつけない皆を真一は不思議に思います。
一旦真一が部屋を出ていくと、改めてその様子のおかしさを弟夫婦に訴える田島さん。なんと彼女は真一の婚約者であり、結婚式も控えていたのでした。
それなのに突如再び六畳一間に真一は引っ越してしまい、亡くなったはずの沙織里との生活をしていました。
異様な空気の中で平然と終わったはずの日常を独り繰り返す真一。
健二は知り合いの精神科医に相談することを決めました。
後日、真一の部屋には田島さん、弟夫婦、そして浪人生だった矢崎くんがやってきました。
矢崎くんは、努力の甲斐あって、お医者さんになってましたが、真一には精神科医になったことは伏せていました。
いないはずの沙織里とやり取りする真一、一見普通と感じていた矢崎くんですが
待ち受けていたのは無茶ぶりパントマイムでした。
果たして矢崎くんは、見えない食事を食べることができるのでしょうか。
(なお、この後健二にも飛び火する。)
何とか真一を刺激しないよう話を合わせるのに四苦八苦する一同。
ギャグの風味が流れる中で、いち早く不穏な気配を感じる田島さん、突如の停電の中鏡に映る沙織里、なぜか増えているグラスに気づいた真由美。
物語は冷たい空気を確実にまとい始めました。
真一と沙織里の結婚式がきっかけで神父になった丈治、霊媒師になっていた佐藤さんも合流し、何とか沙織里の成仏を促そうとしますが、容赦のない沙織里を前になす術がなく、他の面々とすれ違いながらも真一は沙織里との日常を送っていました。
そんなある日、真一は会社の同僚の和田くんから四国への異動の話を持ち出されました。せっちゃんとの子供も2人、家族との話を踏まえながらも、ギクシャクしてしまった関係性が非常につらい。
「つかれてるんだよ」と和田くんから告げられつつ、相変わらず見えない料理を食べ続ける真一。沙織里にプレゼントのネックレスを渡し、六畳一間で変わらない生活を続けていきました。
いよいよ目に見えておかしくなった真一は、自身の婚約者でもあるはずの田島さんに敵意を向け始めます。
何とか弟夫婦と霊媒師佐藤さんと協力して、矢崎くんからもらった薬を真一に飲ませて、眠らせることに成功しました。
しかし現れた沙織里の霊は、田島さんに手をかけ始めます。
兄をこれ以上苦しめないでくれと懇願する健二に、田島さんのお腹には赤ちゃんがいることを告げる真由美。何度も「実香」と田島さんの名前を呼ぶ真一。
自身には叶わなかった、新しい命と愛する人を前に沙織里の霊は泣きながら真一に何度も「愛してる」を告げ田島さんに自身がプレゼントされたネックレスを手渡し消えていきます。
目を覚ました真一、安堵しながら、式の話をする一同。
お腹が空いたと告げる真一に、ご飯を作ろうとする田島さんですが、体に無理をさせたらいけないと、外食に行こうと提案する真一。
皆で出て行ったあと、財布を取りに戻りそして沙織里の写真を引き出しにしまった真一、紆余曲折経て、物語は終幕を迎えました。
うろ覚えな部分とか、忘れてる部分とかありそうな気はしますが←
【六畳一間で愛してる】
前半と後半とで違った密度の物語が展開されたお話でした。
昭和40年という、懐かしさと戦後の希望的な意味で新しい時代の中で繰り広げられた話の中で改めて「愛とは何ぞ」と考えさせられる作品でした。
これだけ感想文を書きましたが、舞台を見ながら私は
「酒が呑みたい」とかそういうこと考えてました。
ぬおおおおい台無しだよ。
舞台終了後、アクリル板越しですが役者さんとお話しできる機会もいただけて、人に飢えてたおいらには非常にありがたかったです。
本当は皆さん一人ひとりに感想を伝えたかったのですが、この情勢の影響もあったのと
舞台前日にガオレンジャー吼えたせいで声がとんでもなくかすれてしまいまして(泣)
ですので、こちらに全部役者さんへの感想も載せていきます。
(パンフレット掲載順)
・坂井真一役 仙谷智彬さん
とても以前まで髪が紫だった人とは思えないくらい、めちゃくちゃ昭和の男の人だったのには驚きました。(おい)
亭主関白の気配と思いきや、沙織里さんに甘えるというこの切り替えの早さ、からのだんだんと目に見えてむき出しになっていく狂気の演技はさすがだなと思いました。
あと沙織里さんいないのに、膝まくらのとき「え、腹筋辛くないんすか??!」と思ってしまった私がいました。
いろんな人の愛に包まれてた人だというのが、ひしひしと伝わってきました。
・坂井沙織里役 夏巳りかさん
いろんなことの狭間で戸惑い苦しみながらも、確実に一歩一歩真一と夫婦としての道を歩んでいく姿が実に印象的でした。
いろんなことを悩んで、でもそれを独りで抱え込んでしまって、一生懸命な人だったんだろうなというのが伝わってきた次第です。
いろんなことがあったうえでの、最後の「愛してる」には全てが集約されているのだなと感じた次第です。ウェディングドレスも浴衣もめっちゃ綺麗でしたよおおお。
・矢崎豊役 飯島康平さん
瓶底眼鏡に学生服と、ある意味THE昭和の風格ある矢崎くん、でもいろいろ惜しいところがまた愛嬌的なものを感じてある意味良いキャラをしているなと思いました。
きれいごとを並べたてながらも、なんやかんやで娯楽を堪能しているあたりが特に引き立っていたと思います。
競馬で負けたとき「全然歌詞の内容と合ってないのに、神田川ってこんなに合うんだな」とめちゃくちゃ爆笑させていただきました。お医者さんになってもその魅力が健在だったことが個人的に良かったです。
・坂井真由美役 成宮伊吹さん
旦那だけでなく義兄ですらもまくしたてる強い嫁、これぞ関西の嫁という風格が見事でした。
でも強いだけじゃなく、優しさも備えてる人で、健二と一緒に楽しいことを一緒に楽しむ嫁さんなんだろうなと思いました。
沙織里さんの気持ちも田島さんの気持ちもわかるからこそ、最後の説得には真由美さんもいなきゃいけなかったんだろうなと感じた次第です。
・田島実香役 中村舞さん
物語の流れの中で、ある意味一番難しい立場の役だったろうな、と個人的に思いました。
一番に真一の異様な気配を察知して、非現実の状況に怯えている悲鳴は、とても美味しかったです。(こら)
それでも沙織里さんのことを知ろうと、理解しようとしたうえで物語最後のあの状況で「私が覚えている」というセリフが出てくるあたり、覚悟決めたんだろうなというのが伝わってきました。
・坂井健二役 佐藤勇輝さん
「ああ、この人めちゃくちゃ苦労人なんだろうな」というのが第一印象でした。
兄と父のいざこざの中で「兄ちゃんの気持ちもわかるけど、親父の気持ちもわかる」からこそ、親父が沙織里さん訪ねたこと兄ちゃんに言っちゃうし、結婚式の話親父にしちゃうし、幽霊になって兄ちゃん連れて行こうとする沙織里さんに必死に訴えるし、一番しんどいことを言わなければいけないところが、本当苦労人なんだろうなと…←
でもそんなことを感じさせないくらい、明るく楽しい人柄で、誰かの喜びを一緒に喜んだりできる人なんだなと思ったし、そこが魅力的で真由美さんも結婚したんだろうなと感じました。
・古谷昭子役 相原美穂さん
仕事仲間に悪態をつきながらも、なんやかんやで心配や愛情の裏返しだったり、優しさゆえに説得をする、パワフルな女性と感じました。
一緒にいて元気をもらえる人だなという印象でした。
自分の状況を淡々と観察しつつ語りながらも、笑顔で周囲に馴染んでる安心感も良いなあと思いました。ブーケ持ちながら独りで踊るところめちゃくちゃ好きです。友達に居てほしいタイプ。
・高木節子役 田原遥菜さん
登場時に漂うあの悲壮感と和田くんを振った自覚がないところ、それでもお店に誘う天然小悪魔ガール(言い方)
てのひらで転がされたいな 俺もな とかそういう気持ちを抱かせてくれました←
舞台鑑賞後この役を現役JKが演じたということに私は衝撃を隠せませんでした。マジで?!え??!
・佐藤洋吉役 西藤東生さん
当方を知っている方なら存じていると思いますが、私オネエの類には目がなくてですね…。
もう本当コッテコテのオカマ(誉め言葉)を堪能させていただけたことで、私の心はターミネーター状態になりましたよ。
親父さんが持ってきた大吟醸を何も言わずに優しい顔で棚に飾るところとか「ああー!!そういうとこだよ!!」と心が叫んでおりました。
https://twitter.com/NVoiceactor/status/1408771203053932547?s=20
(心が叫んだ結果、初対面なのに声をかけたのは私です)
・佐藤丈治役 大月利貴さん
少々やんちゃな雰囲気を醸し出しながらも、同居人の洋吉には逆らえないあたりとか、さりげなく深い言葉を言ったりとか、矢崎くんの決死の告白シーンをバナナほおばりながら眺めてるところとか、美味しい存在感を感じたのが丈治くんの印象です。(幸せに関する言葉にはなるほどと思った)
結婚式の際のユーモアあふれる誓いの言葉とか競馬に勝って皆に焼肉おごりにいく気前の良さとか「いい子なんだなー」ってのがこちらにも伝わってきました。
矢崎くんとは違うタイプでも、居ると笑わせてくれるキャラクターだなと思いました。
・和田勝役 佐々木旅人さん
前半のドタバタ劇の一要員と個人的には思っております。せっちゃんとのやりとりではめっちゃ笑わせてもらいました。盛大な振られ方したのに、甘えられたら根負けしちゃう見事に情けないサラリーマン。
でもちゃっかり旦那の座に収まったところとか花嫁のブーケとっちゃうところとかちゃっかりしているなーと笑わせていただきました。
後半のシリアスな空気間では、前半の楽しかった雰囲気があったからこそ、引き立つ悲壮感がありましたね。言いたくなかっただろうなー真一に四国への異動の話。
・坂井勝次役 小松大介さん
六畳一間を訪れた際に滲み出る厳格な雰囲気には、息を飲みました。でも話を聞いているうちに、義理と人情にはめっちゃ厚くて自分の子供たちへの愛情が本当に深い人だというのが伝わってきました。
結婚式には相変わらず厳格な雰囲気を出しながらも、カバンから見える大吟醸で「とーちゃん!!!」ってなるし、和解のあとちゃっかり花嫁口説くあたり「とーちゃん(笑)」ってなりました。
個人的にもっと演技を見たかったなーと思わせていただきました。
前半のドタバタ劇、後半のホラー、そして全体の懐かしさをひっくるめたうえで、面白い作品だと感じさせていただきました。
足を運んで本当に良かったなーと思わせていただいた作品でした。
出演者の皆さま、並びにスタッフの皆さま、お疲れ様でした。
綴れるもの全部綴ったので、これから俺はウィスキー開けるぞ。