劇場版スタァライトオケコンrevival 九九組の歌唱の素晴らしさを語る 【アドカレ2023】
Prologue
舞台想像科の皆様、こんにちは。はじめまして。
naruという名前でTwitter(X)している者です。
この度、めのフェさん主催のアドカレ企画に参加させていただきました。
ノリと勢いで登録したものの、既にたくさんの方の記事が公開されており、明日以降も錚々たるラインナップが控えていて大変恐縮ですが、自分なりに何か書ければと思います。長文ですが最後までお読み頂けると嬉しいです。
さて、年始の劇場版オケコンrevivalに始まり、舞台#4Climax、中等部舞台、九九組の日、バンドライブrevival、劇ス追加舞台挨拶、エルドラド朗読劇(明日開催!)など、イベント目白押しだった2023年のスタァライト。
私が現地参加したのは九九組の日とバンドライブ2daysのみでしたが、 記事執筆時点ではどちらも配信映像のアーカイブ期間が終了している……!ということで、今回は
「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト オーケストラコンサートrevival」
(2023年1月7日@パシフィコ横浜 国立大ホール)
の楽曲を振り返りながら、「九九組の歌唱面の素晴らしさ」や「推しポイント」について、主にソロパートにフォーカスして書き連ねたいと思います。(といっても、歌の専門知識がある訳ではございませんので、あくまでただの感想と捉えて頂ければ幸いです)
※本記事の『』内で引用させて頂く全ての楽曲の歌詞の作詞は中村彼方さんです。
Act:1
再生讃美曲 「九つの個性、九つの魅力」
『選ばなかった過去たちへ 静かに捧ぐ讃美歌を』
オケコンの幕が開き、私たちが最初に聞くのが三森すずこさんの声。入りも結構難しいのですが、完璧に決めるあたりはさすがです。
続いてはこの曲の主役、大場なな。
『あの日の私の続き 未来は笑えていますか』 はとても伸びやかな声ですね。原曲CD音源だと少し薄めに感じましたが、今回は大場なならしい繊細さと小泉さんの持つ力強さが良い具合にミックスされていて、オケにも負けない主役の歌声になっていたと思います。あとは『未来』の言い方にちょっと癖があるのが小泉さんらしいです。
revivalの主役、待ちに待った生田輝さんの石動双葉は、この舞台に立てた歓びのようなものをひしひしと感じるパートです。かといって、ここはあくまでBメロの繋ぎのパートなので昂ぶりは頑張って抑えていそうです。
伊藤彩沙さんの『追いかけてあの子は』 、こういう短いパートを、難なくさらっと歌いこなせるのが伊藤さん! 『あの子は』で徐々にフェードアウトしながら、去り際にビブラートをかける表現がめちゃくちゃ上手いです。
『何を燃やして 生まれ変わる』は、小山さんが音程を外さない理由が詰まっているなという歌唱です。『て』の伸ばす部分、ほんの気持ち低めの音で入ってしまっているのですが(初演は分かりやすいです)、伸ばしながら音程を上げていって、『生まれ変わる』では出音から完璧に歌っています。この修正が見事ですし、自分の発する声に対する感度と操作力が頭抜けている方なんだと思います。
この後の9人のハーモニーも素晴らしいのですが、割愛させて頂き2番に移ります。
真矢クロは富田麻帆さんの声の豊かさと、相羽あいなさんの鋭いけれど耳にすっと入る声が100000000点。
ふたかおを挟んで、初登場のまひるちゃんボイス。初演と比較して岩田さんの進化を感じたのは『歩くかのよう』の出だしの「あ」の低音です。サビ前でオケの音量も上がるパートですが、初演はそれに負けないように声を張っているところがありました。しかし、今回は流れの中で声が下降→上昇しており、元々岩田さんの持つ金属質で通る声が自然体でオケを背負っていて、サビへの高揚を感じさせます。
しばらく飛んで、満を持して最後のソロパートは星見純那。『ああ 私たちは 今どこへだって』は、全曲の中で私が最も好きな純那ちゃんのパートです。佐藤日向さんの歌唱は、純那の性格のように真面目でキッチリ安定感! という印象ですが、「再生讃美曲」では、大場ななに寄り添うような優しさと湿度感が表現されています。このぐらいの中高音域の佐藤さんの声が美しいのもありますが、いつもよりも吐息の入れ具合を多くしてるのかな? と想像してみます。
以上、初っ端から長〜くなってしまいましたが、オケコンrevivalの幕開けに相応しい9人の歌声でした!
wi(l)d-screen baroque 「七変化のカメレオンボイス・小泉萌香の狂気」
wsb、イントロで小泉さんが出てくると分かっていてもテンション上がりますよね。
『あなた 分かります か?』からの最初のパートはこちらに問いかけてくる教師のようなはっきりした口調で、『次は 次は 次は』では抑え気味に空想するトーンで聴かせる。『キラめきがどうした』からは一気に怒りの沸点がピークへ、感情もあらわに。『足りないの わかってる』からは気怠げに。
『la la la la la la la la ♪』では狂気の慈しみスマイル。『自然の摂理なのね』で一気にドスを効かせる。『美しきマドモワゼル』で一旦鎮めた不安定な嘆きが『最後まで生き残るのは』で急上昇。『誰かが誰かの〜』でそれを全ブッパ。
劇的な幕切れは、レコーディングでも通しで録ったという『生きる 生きない 生きない』 『生きる 生きない 生きたい』 6つの異なる感情を単語に込めているそうですが…… 5つ目の『生きない』は、なんですか、これは。ここでオクターブを下げるなんて、何を食べたら思いつくんでしょうか。意味不明。魔王。強いお酒。喝采。生で聴けた方は一生自慢できるレベルです。おめでとうございます。小泉さん、絶好調だったんだなと思います。
約束タワー ~echo~ 「歌声もオケ仕様にドレスアップ」
revivalのセットリストでは新たに「約束タワー」の歌唱が加わりました!
イントロのコーラスから、難しい入り方で始まる小山さん。歌声は荘厳なオケに合わせて、一音一音を大切にしている印象を受けました。
バックで鳴るウィンドチャイムの如く、キラめくお声の三森さん。曲の世界観を一気に拡げる開放的な歌唱でBメロに繋げます。曲全体を通して、三森さんの美しすぎる高音がなかったら「約束タワー」は成立しないといっても過言ではないです。
じゅんななな、声のそっくりっぷりを発揮しています。しっかり伸ばされた語尾のロングトーンが心地よいです。
1サビは主人公組3人のユニゾンから、華恋→まひるのソロパートへ。岩田さんの『“一”緒に』で寄り添う優しさがもう泣けますよね。手を取って、目線を合わせて言ってくれたみたいな。
ふたかおは伊藤さんの安定感は言わずもがな、加えて生田さんの声の伸びが凄まじいです。
真矢クロの掛け合いは、普段のアタック感は仕舞っておいて調和を意識し、遠くに響かせるような声を聞かせてくれます。
2番はななの温かい歌唱からスタート。言葉(音)の繋ぎ目をカッチリさせすぎず、なめらかに繋いでいる感じは小泉さんらしいです。
佐藤さんの低音は唯一無二。こういう沈み込む音域で暗い印象を与えずに歌うのって結構難しいんじゃないかと思います。
続く岩田さんはリズムが(音程も)難しいです。原曲では四つ打ちのビートがありますが、今回のアレンジはテンポも遅く、バックでは複雑な演奏が流れています。特に後半の『君の隣に行けるから』は1番の『選んでたはずだけど』よりも2文字も多いので、より難易度が上がってる気がします。
そしてここで登場! かれひか! レヴュースタァライトのポジションゼロといえば、やはりこの二人なんだな(※異論は認めます)という安心感すら覚えます。
この後もそれはそれは素晴らしい歌唱が続きますが、さすがにそろそろレヴュー曲に入らないと尺が足りなくなりそうなので、このあたりで終わりにしたいと思います。一つだけ推しポイントを挙げると、佐藤さんの『頂上見上げて走る』の伸ばし方が好きです!
打ち込み系の原曲とは大きく変化を付けた遅いテンポのアレンジだからこそ、“オーケストラ仕様”となった九九組の声の個性がソロパートやコーラスワークで発揮されていました。しかも、ソロでもユニゾンでもロングトーンをここまで味わえる曲はなかなか贅沢です。スタァライト九九組、全員めっちゃ歌上手いんだぜ! って布教する機会があったら、是非この曲を紹介したいです。
Interlude
怒涛のレヴュー曲ブロックの前に、ひとつ振り返りを。
スタァライト九九組の“ボス”(音楽プロデューサー)こと、ポニキャンの野島鉄平さんが夜公演前に贈った言葉です。昼公演を観ていないのでなんとも言えませんが、この言葉を意識して歌ったのかな? と思える箇所もあり、野島さんの観察力や九九組との熱い絆を感じました。
野島さんはオケコンrevivalの時点で既にスタァライトから離れていらっしゃいましたが、今後もご活躍を祈るばかりです!
Act:2
わがままハイウェイ 「念願叶った二人のレヴュー」
劇場版の他のレヴューは、芝居がかったシーンから始まり、曲途中からレヴュー服に着替える構成ですが、「怨みのレヴュー」ではイントロの口上&デコトラアタックの後、歌い出しからレヴュー服に着替えて戦っています。「わがままハイウェイ」でも最初から2人のありのままの感情をぶつけ合っています。
『いつかきっと』から始まるAメロも、いきなり強い感情の喧嘩が始まるのですが、二人のすれ違ってるな感や温度差が声色から感じられます。
そして見どころは、色気たっぷりのセクシー本堂。『鬱陶しいじゃない』からの『目も合わさないで』は歌というより台詞のような喋り方で、音程を崩さない範疇で色気と気怠さを取り入れた絶妙な歌唱です。『han…』はもはやほぼ吐息なんですが、ここだけ聞いても香子の声なんだなってしっかり分かるのがやはり凄いです。
清水の舞台に煌々とデコトラが輝いた後(照明も素晴らしかったです)、『孤独はLong time no see』からはイケ輝大会の幕開けです。少し芝居ががったように回想する生田さんの爆イケボイスを堪能しましょう。生田さんが持つ地の声のかっこよさという武器がさらに磨き上げられています。
ラストシーンの『『ガキのワガママには、勝てんわ』』は香子、ちょっと泣いてない? と感じるほど。コロナ禍での劇場版収録に、生田さん欠席のオケコン初演。双葉と香子が向かい合って「怨みのレヴュー」をしたのはオケコンrevivalが初めてだったのかもしれません。万感の思いが詰まったこの一曲だけをとっても、revival公演が開催された意味を大きく感じました。
MEDAL SUZDAL PANIC◎○● 「舞台少女は日々進化中」
まひるとひかりが華やかに競技を繰り広げる…… と思いきや、あっさりボタンを弾かれてしまうひかり。カラフルで明るい映像が一転し、まひるの狂気が露わになる歌唱がこの曲の見どころです。
しばしの沈黙の後、『さっき落としたメダルは何色?』からの一連のフレーズは、ブレス音がはっきり聞こえてきて、静かに諭しつつも着実にひかりを追い詰めていく様が見て取れます。直前の無音も長く、しかもアカペラなので「ここから喋ります」と宣言するようなブレスが怖さを倍増させています。分かっていても逃げられない。
『そんなふうで 大丈夫かなあ』から『ねえ ちゃんと答えなさいよ』までは、時に優しく、時に嘲笑、時に呆れ、時に陰口を言い、最後は本気で胸ぐらを掴みにかかる。Interlude で紹介した野島さんのアドバイス「歌をパート毎に仕掛けて」の如く、あらゆる表現でひかりをボコボコにしていきます。まひるちゃん、怖すぎる。難しいメロディーでここまで多くの変化をつけられる岩田さんは凄すぎます。
2度目の無音の後、今度は吹っ切れたような明るい声で、ひかりを奈落に落とします。『最後の告白タイム』と『映し出されるよハイライト』の気持ちいいロングトーンが良いですね。
でも、まひるがこんなに怖かったのはひかりを想って演じていたからでした。最後の『怖いよね 眩しすぎて』からは「パート毎に仕掛け」た歌声からは一変、岩田さんのまひるにしか表現できない温かさや、ひかりに寄り添う優しさが全面に出ています。
CD音源の岩田さんも勿論素晴らしいのですが、劇場版のレコーディングから約2年の時を経て、まひるの歌声は人間味が増した印象です。今はCDだとちょっとだけ無機質に感じてしまいます。ガラスのように繊細だけど力強い芯はそのままに、しなやかなと深さがプラスされました。ですので、大らかだけどプリっとしている(エビみたいな言い方だけど伝わるだろうか)三森さんとの声の相性もより良くなったと思います。
実際どうなのかは分かりませんが、たとえば声質があまりにかけ離れた二人が一緒に歌ったら、声がぶつかり合って綺麗に聞こえない気がするんですよね。逆にあまりに似すぎていたら、今度は二人で歌う意味がなくなってしまう。似ている部分と似ていない部分のバランスがちょうど良いと、心地良く聴きごたえある歌になる、というのが持論です。
そういう意味で、岩田さんと三森さんは程よく輪郭が重なってずれ合う声のペアになったのだと思います。「舞台少女心得」をリフレインした最後のユニゾンは、もう言葉はいらないくらい素晴らしいです。
ペン:力:刀 「全身全霊のぶつかり合い」
民族音楽的不穏メロディー、次に謎にこだわりを感じる「ガァオ」が聞こえたら、まもなく純那の歌い出しです。
「歌の成長を見せつけて」とアドバイスされた佐藤さん。私もオケコンrevival の映像を見た時は、めちゃくちゃ歌上手い!! って思いました。いや、元からとても上手ではあったんですけどね。上から目線な書き方になってしまうのは非常に申し訳ないのですが、以前よりも余裕を感じるというか、土台が大きくなって安心感が増したというか。ピッチの高低、リズムの速い/遅い、どれもとっても無理がなくて自然に力強く歌えている感じがしました。
『さあ その牙抜きましょう』から『私は舞台へ 流れ着く』までは、純那の真面目さや安定感(ときれいな声!)が存分に表現されながらも、後のななとのぶつかり合いを考えるとやや受動的で意志が欠けるような、絶妙な塩梅で歌われています。
そこから長い間奏でいろいろあって、いよいよ大場ななとの本音の喧嘩が始まります。ななのパートは歌詞カード的には2行、秒数にして40秒にも見たないのですが、とにかく存在感が凄まじく、鬼気迫るものがあります。
『煙る景色 果てる夢』は、大場なならしい繊細さと小泉さんの低音の狭間で揺れ動き、初演では裏声になっていた『霞を食え』の「か」は、再演では地声のままいっているところに気迫を感じます。
『借りた台詞 こなすだけは』 『お前の星は屑星だ』は食い気味での入り、そして魂の咆哮。後先考えず、この瞬間に全てを賭けるような叫びを一度味わうと、もうCD音源には戻れなくなってしまいます。
小泉さんの声は物に例えるなら、チューニングキャンディーですかね……? 特に、細い糸がずーーっと伸びていく感じが。決して野太い声じゃないのに、なんでそんなに伸ばせるの?って、いつも不思議で仕方ありません。
ななの叫びを受けた純那は『まだまだ此処から』で拳を強く握りしめて諦めずに立ち向かう意志の強さを宿し、『殺して見せろって!! ねえ!!』でそれを剥き出しにしています。初演では小泉さんの歌唱に佐藤さんが火をつけられた感じにも見えましたが、今回はお互いに炎を焚べ合っていた歌唱だと思いました。
そして、限界もポジションゼロも踏み越えてななを斬った『時に剣より 刀よりも強く』は、タメからの音の切り方が鳥肌ものです。100パーセントで声を出しつつ、絞るように声を切る佐藤さんがかっこ良すぎました。
エピローグの『幕を下ろそう』と小泉さんのコーラスでは、最後の『会え“る”』のシ♭とコーラスのドの響きが個人的に微妙だと思っていたので、偶然なのか意図的なのか分かりませんが、初演と異なり小泉さんが少し早めに音を切っていたのが良かったです。
CD音源や初演からさらにパワーアップした二人の全身全霊の歌唱に心が震えましたし、大場ななが眩しいと感じた星見純那の折れない信念が、この曲を通して鮮烈に表現されていました。
美しき人 或いは其れは 「研ぎ澄まされた自然体へ」
相羽さんの『舞台人よ 俺様を呼んだか』 から始まる最初のブロックは、二人ともバチバチに激しすぎず、やや抑え気味で歌唱されているようにみえます。言葉数が少なく、ロングトーンが多めなので空間の拡がりを意識し、口の中で歌声を響かせてマイクにのせるイメージでしょうか。
少し話が逸れますが、同じく相羽さんが演じているRoselia 湊友希那の歌声は、バンドリ! ガルパのイベントストーリー内で「繊細で力強くて(中略)まるで恋い焦がれているような焦燥感」と評されています。これは、西條クロディーヌとは真逆のアプローチだと思っていて(特に後半)、ファルセットも多いこの曲では、低音の悪魔→等身大のクロディーヌに歌声が変化する流れの中で「伸びやかさ」や「しなやかさ」が重視されて、いつも通りのブレない芯の強さはありつつも、より気持ちよく歌い、聴かせる歌唱になっているのが魅力的な点です。
一方、舞台人らしい“強者の余裕”がつよつよマシマシな富田さんの歌唱は、普段よりも大らかにタメて、そして多少のリズムアレンジも厭わない、包み込むような器の大きさを感じさせる点が特徴的です。特に『そして水面よ映せ 無限のこの私よ』 は、初演では少しリズムを取りづらそうにしていましたが、再演ではタメ&アレンジを入れていたのが見事です。
ぶつかってくるクロディーヌに対して、格が違うと言わんばかりに圧倒してきます。さすがは首席! 強い!
2022年の劇スオケコン初演では富田さんがコロナ感染直後(出演できるのか直前まで心配されてました)で、ややパワー不足に感じたのですが(勿論それでも素晴らしかったです)、再演ではフルマックスの火力を見せつけて頂きました。
曲が進んで、レヴュー服を身に纏ったクロディーヌの『舞台はいま私のもの』で再び開かれる幕は、ここでも前述の「伸びやかさ」が詰まっています。音域的には地声とファルセットの間くらいの難しいところだと思いますが、めちゃくちゃ良いですね。(語彙力消失してます)
そして最後は本音の殴り合いパート!
『まやかしの微笑み 布切れを破いてやる』と挑戦的に謳うクロディーヌに対し『見せてみたい くろに染められゆく感情』と吐露する天堂真矢。ここの富田さん、かなり情緒的に歌っていて「天堂真矢って実はそんなこと思ってたんだ……!」と感じさせる説得力が凄まじいです。包み込むような歌声はそのままに、後半では“強者”から一転して、等身大の人間・天堂真矢の本音が垣間見えます。
『この私だけを見てればいいの』は、文字に起こすなら「みぃーてえれーぇばいいのぉおーー」といった具合でしょうか。舞台少女心得でもそうでしたが、2人のユニゾンはタメがすごい。リズムをはみださない限界まで引っ張り、最後はギリギリまで伸ばしてスパッと音を切る。バチバチにやり合う真矢クロらしくて、大好きです。
『いつまでも いつまでも 剣を交えていたくて』は、初演で気になっていた『剣を』の部分のリズムが、原曲通りに変更されていたのが良かったです。revivalポイント!
『二人にはライバルを』は原曲とは違い、地声で。からの『ああ あなたは…!』は完璧なファルセット。各所で言われている富田さんのブレス音が今回も入っていて、クロディーヌの美しさに思わず息を呑んでしまった真矢とシンクロしますね。
全体を通して、再演を経てさらに進化した素晴らしい歌唱でした!!
スーパー スタァ スペクタクル 「全てはこの曲のために」
『お願いよ 華恋』と語りかける神楽ひかりの歌い出しは、三森すずこさんの独壇場です。音程の概念を取り払った『華恋』の呼び声は感情のこめ方が何度聴いても素晴らしいです。『信じてる“の”』で伸ばしつつビブラートをかけて最後にピークを持っていくのは、もう歌うますぎとしか言いようがない。言葉、抑揚、表現力、声、ピッチ、ビブラート、何を取っても最高です。改めて三森すずこさん、神楽ひかりでいてくれてありがとうございます。
T華恋後の過去回想は、突き抜ける高音域『ホシクバ ホシツメ』のパートが、地声と裏声が混じる(小山さんの抑えた裏声ってなかなか珍しい気が!)『あなたは私』〜『次の舞台へと』の部分を挟んでいます。
そのあと愛城華恋が復活し、この曲で初めて二人が一緒に歌う言葉が『スタァライト』なのも好きです。
互いにリードし合うような掛け合いは、口上のような力強さとキレが眩く、『スタァライト』のハーモニーはカーテンコールを見ているような多幸感さえあります。
小山さんの声は「愛城華恋ボイス」でいる時と、中の人「小山百代」のキレが出てきてる時があり、私はどちらも好きなのですが、『綺麗で』 『痛くて』から『夢中になるの』は完全に前者です。レヴュースタァライトにおける愛城華恋の本質的な心情が明かされる歌詞が、華恋の声100%で出力されているんですよね。上手く言えないんですけど、凄く心にきます……
劇場で映画を観ていても、オケコンを観ていても、やはり最後の「スーパー スタァ スペクタクル」のために、2時間じっと椅子に座っているのだなと思います。そこに至るまでにいろいろな情緒があれど、最後はこの曲が全部持っていってしまいます。主旋律もハモリも非常に難易度が高そうな楽曲ですが、目まぐるしい展開に合わせた情緒が歌い方にもしっかりと反映されていて、キャスト二人の表現力の高さを改めて感じることができる一曲です。
Act:3
私たちはもう舞台の上 「そこに舞台がある喜び」
レヴューを演じ切ったら、エンドロールのお時間です! それぞれの担当パートを振り返っていきます!
小山さんのパートで私が一番好きなのは、『ハジマリはキラめくよ』です。舞台少女・小山百代のキラメキ全開! という感じで、見てる側まで自然と笑顔になってしまうようなパワフルな歌唱です。
三森さんは、アウトロの『たくさんの光届けるよ』が格別。9人でおそらく5パート(コーラス3、華恋、ひかり)に分かれていると思いますが、複雑さ故に一歩間違えるととっ散らかった印象を与えかねません。しかも三森さんパートは高音&言葉数が多い。この難局を鮮やかに歌いこなし、さらに7人vs1人vs1人でも埋もれない声の映え方がある! 毎度最高すぎますね。
岩田さんは真っ直ぐな音の捉え方がまひるっぽくて好きです。しかも、岩田さんの声が聞こえるだけで世界がパッと明るくなるような雰囲気を持っています。歌は関係ないですが、『愛しすぎて抱きしめた』で抱きしめる振り付けをする九九組が愛しすぎます。
佐藤さんの持つ低音は曲のブギウギ感にマッチしていますね! テンション高めのこの曲を引き締めるような落ち着きを与える良いお声です。『“何を”入れておいたっけ』の抑揚の付け方に滲み出ている委員長の優しさ。
小泉さんはとにかく本人の楽しんでいる様子が声に出ています。ワイルドスクリーンバロックを経て、まるで憑き物が落ちたような大場ななのよう。『閉じてしまっても“いっか”』だし、「神様も憎いよね」じゃなくて『神サマもニクいよね』ですからね!
富田さんは、たまにある気がする“2番出だしの天堂真矢”。2番から曲調の変化をつけたい時に富田さんの声が入ると一気に空気感が変わります。『ひとりにひとつずつ 役があるなんて』は、バックの重厚感あるオケに合った味わい深さを堪能できます。
相羽さんは、『ひとまず踏み出そう“か”』が好きポイント。1番の岩田さんの『キミは今ごろどん“な”』の音の合わせ方とは対照的です。「か」で1音というよりは、「か」+母音の「あ」の2音で歌っている感じです。この絶妙な揺らぎこそ、世界一いい女・西條クロディーヌです。
『晴れには晴れの収穫が』 『雨には雨の実りがある』は、初演だと全て香子が担当していたので、晴れも雨も司る全知全能のつよつよ女っぽさ(?)があったのですが、今回は生田さんと半分こです。生田さんのまみむめもからしか得られない栄養素は確実にあります。伊藤さんも生田さんも「どんな時でも、たとえ短いパートでも、出音から語尾まで完璧に花柳香子/石動双葉である」点が素晴らしいのですが、短いソロパートの多いこの曲だとそれが顕著に表れています。
劇場版の主題歌という肩書きで何度も披露され、スタァライト九九組の看板曲に育った「私たちはもう舞台の上」 。九九組が今この瞬間舞台に立てる喜びを全身で表現するかのように歌っているのを見ると、それを目にする私たちにまで幸せが伝播してきます。
Star Parade 「私たちはまだ旅の途中」
全舞台創造科待望の一曲。9人揃っての歌唱はこのオケコンrevivalが初めてでした。私自身もスタァライト楽曲の中で1,2を争うくらい大好きな楽曲が、オーケストラをバックにした歌唱で後世に記録されたことが大変嬉しいです。
『円陣ぎゅっと組み 走り出してった』は、 言わずと知れた3rdライブの情景。三森さんらしく温かく深みのある歌声。『見送る背中 いつか』の「背中」あたりからは音程とともに声もパッと明るくなり、最後の『凛々しくて』では、いつのまにか頼もしさを感じるようになった8人の背中に対して、ふわっと笑みがこぼれたような心境が表れている歌声です。
『出番を待っている〜』 の小山さん、優しさが溢れすぎています。このパートでは小山さん本人の歌というよりも愛城華恋らしさが出力されており、華恋の声の優しい輪郭ごと、丁寧にメロディーに寄り添いながら歌に乗せています。
続いての岩田さんasまひる。起承転結でいえば「転」を担うBメロですが、私が好きなのは『誇っていいよ』と歌い切った後の息を切る音。歌というより会話や台詞みたいな魅力があります。太陽のように朗らかな笑顔でみんなを元気づけてくれるまひるちゃんらしく、続くサビへの最高のバトンを渡してくれています。
サビの9人パートは…… もう言うことないですね。ザ・多幸感!! 全員でこの曲を歌いたかった! という九九組の想いが伝わってきますね。
『キラキラこれから〜』の小泉さんは、相変わらず音域お化けっぷりを発揮しています。かなり高いパートなのに難なく歌ってみせる素晴らしく伸びる声。大場ななの純真さがかわいい。『一緒にいられる』のリズムの跳ね感もサイコーですね!
『そしてまた先へ進んで行けるの』はBPM的にも結構早くて、「さしすせそ」の多い歌詞はもたもたしてると置いていかれそうなのですが、佐藤さんのリズムの捉え方が抜群に上手いです。例えるなら、4分音符ではなく2分音符で歌っているような。大らかに、でも確実を芯をとらえた拍感は直前の小泉さんとは対照的で、星見純那の視野の広さや真面目さみたいなものも感じさせます。『九つの色に染めて』では九九組みんなを見ながらクルっと回転! なんだこの幸せ空間は……!
『一番負けたくない人は一番大切な人!』組はCD音源だと声のバランスが絶妙な4人なのですが、ライブだと輝ちゃんの声がめちゃくちゃデカくて笑っちゃいました。もはや8割生田輝。
振り付きだと「あいあいミュージアム」から始まる2番。『ドアから通じる』は相羽ディーヌさんの声のシズル感がたまらないです。伸びやかでキュートな西條クロディーヌさん、良いお声です。
続いての真矢パート。Star Paradeの真矢はスタァライト楽曲の中でも指折りに優しい声なんじゃないかと思います。良い意味で力が抜けていて、自然体。
そして、誰よりもrevivalを待ち望んでいたであろう、ふたかおの2人にこの歌詞をあてるのはズルいですよね。少しアンニュイな双葉からの、香子は突き抜ける高音。生田輝さんのこういうボイスにオタクは弱いですし(断言)、伊藤彩沙さんに関しては「今日調子悪いのかな?」みたいな日が全くないイメージです。すごい。
2サビの個人的ハイライトは、小山さんパートの『強い気持ちならどんな不可能な未来だって変えられる』です。特に『不可能な』あたりからは小山百代全開放! といった感じで、CD音源にはない力強さを見せてくれました。1番Aメロでは柔らかい輪郭の華恋ボイスでしたが、こちらでは煌々とした座長ボイスがかっこいいです。
他にもたくさんありますが…… 特に印象的だったのはこのあたりです。Star Paradeは、3rdライブというキャスト9人のエピソードから生まれた異色の楽曲です。それでも、歌詞や歌声からキャラクターらしさをこれだけ感じることができるのは、スタァライトというコンテンツが現在まで積み上げてきた歳月の賜物だと思います。
Epilogue
想定を上回る文字数になってしまいました…… もはや怪文書です。
ここまで辿り着いた方…… もしいらしゃったら感謝感謝感謝ですよー!
オケコンはTVシリーズと劇場版合わせて3度行われていますが、まだまだ聴きたい曲がたくさんあります。「逆境のオリオン」「Dream of You」「罪がないのならばそれが罪だ」あたりは、オーケストラ映え間違いないですし、「約束タワー」のような打ち込み系の楽曲のオーケストラアレンジも気になるところです。舞台想像科が望めば次なるオケコンが開催されるかもしれないので、これからも私なりにスタァライトを応援していきたい所存です。
最後になりますが、素敵な企画を考案してくださっためのフェさん、本当にありがとうございました!
Credit
上記で紹介したスタァライト九九組の楽曲クレジットを掲載します。(敬称略)
再生讃美曲
作詞:中村彼方 作曲/編曲:佐藤純一(fhána)
オーケストラアレンジ:椿山日南子(Dream Monster)
wi(l)d-screen baroque
作詞:中村彼方 作曲/編曲:三好啓太
約束タワー
作詞:中村彼方 作曲:shilo 編曲:中土智博
わがままハイウェイ
作詞:中村彼方 作曲/編曲:谷ナオキ(HANO)
MEDAL SUZDAL PANIC◎〇●
作詞:中村彼方 作曲/編曲:広川恵一 (MONACA)
ペン:力:刀
作詞:中村彼方 作曲:佐藤純一(fhána)
編曲:矢野達也、小高光太郎
美しき人 或いは其れは
作詞:中村彼方 作曲/編曲:藤澤慶昌
スーパー スタァ スペクタクル
作詞:中村彼方 作曲/編曲:加藤達也
私たちはもう舞台の上
作詞:中村彼方 前奏作曲:本多友紀(Arte Refact)
作曲/編曲:佐藤純一(fhána)
Star Parade
作詞:中村彼方
作曲: 本多友紀(Arte Refact) 編曲:中西亮輔
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