東京駅
「佐伯さん、私、明日会社を辞めるんだ。」
ふとデスクの後ろから懐かしい声がした。
しばらく会えていなかった田島さんだった。
「えーっ?そうなの??
それなら、今日久しぶりに駅まで一緒に帰らない?」
彼女とは以前、会社帰りにエレベーターで会った時はよく駅まで帰っていたが、半年ほど前、同じチームから分かれ、3ヶ月前の大きな移動では、フロアも別の、全く違う部署になっていた。
「佐伯さんは残業しないの?私定時で帰るよ、大丈夫?」
同じ部署だった時に誰よりも遅くまで残業していた田島さんは、わたしにそう言った。
「そうなんだね。わかった、私も早く終わらせるから。定時は少し過ぎるかもしれないけど、6時には休憩室で待ってるね。」
「じゃ、後でね。」
個包装のチョコを2個置いていってくれた彼女の背中は、何故だかわたしには小さく見えた。
『今日は久しぶりに定時で上がろう、そうだ田島さんに何か贈り物あげようかな、でも今からならコンビニでしか探せないなぁ。』
わたしは、帰りのことで頭がいっぱいになっていた。
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