![名称未設定のデザイン__1_](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/11959499/rectangle_large_type_2_bd731e2af49be6463cea54d160efd84a.png?width=1200)
悲しい黒
黒ばかり着ていた。
なにせ田舎。
近所や親戚で不幸があると、手伝いに行かなくてはいけない。
その時に着用するのは黒。
一日中台所にいても、だ。
最初のうちは、エプロンが黒ならばいいと思っていた。
ところが、こう言われる。
「出棺だから、お見送りして。エプロンはとってね」。
黒でない服を着ていると、目立つ。
紺色でも目立つのである。
嫌だった。
春夏用と秋冬用、それぞれの予備、一通りそろえた。
他の服をあまり買えなくなってしまった。
それで、黒を着ていたのである。
しばらくして、私は大変な事実に気づいた。
「黒は、悲しいくらい白(または赤)茶ける」。
これがまた、喪服の中で目立つのだ。
買い替えか。
しかし、手伝いに呼ばれなくなっていた。
家族葬が増えたからだ。
葬祭会館で行うことも多くなった。
色あせた黒い服は、今でも着ている。
貧乏くさいが、実際に貧乏なのでしかたない。
服を買う際は、霜降りグレーにしている。
色あせが目立たないから。