「今夜、世界からこの涙が消えても」レビュー
前作「今夜、世界からこの恋が消えても」のスピンオフ。映画化もした名作の続編ですな。親友ポジションのサブヒロイン・綿矢泉の回想を交えた大学二年生編。
クールで凛々しい彼女が、実は前作の主人公・亡き神谷透に密かな恋をしていた! という意外な事実とともに、新キャラクター大学後輩の成瀬くん(いわゆる善人キャラ)を加えた後日譚である。
つまりは、新しい恋の物語なのだけれど、そこに前作時間軸における泉の恋の芽生えやら神谷透との永遠の別れ等が、思い出という形で語られる。
今回綿矢泉は、後輩成瀬くんから早々に告白されて、前作ヒロイン真織のマネをする形で、軽く付き合ってみるのだけれど、デート会食後にあっさり関係を解消してしまう。亡き想い人を忘れたくてやった疑似恋愛行為が、むしろ逆効果であったからだ。
しかし成瀬くんは、今回のもう一人の主人公でもある。一度振られたくらいでは諦めない。偶然にも神谷透の夢でもあったカメラ趣味を、彼も同じく持っており、泉が小説投稿しているコンテスト(審査員作家が神谷・姉)に写真部門で挑むのだ!
自分が何も持たぬ凡人でなく、他人に誇れる物を持つ男であることを示すために。
なんと成瀬くん、一年も大学休学して中学先輩の写真家・桜井に弟子入り。このへんの流れは、写真が好きな人にはかなり面白いはず。テクニック論とかは描かれないけど、彼の「みんなの笑顔が好きだから」という写真哲学はなかなかいい。
そして、ついに完成する投稿作品「終氷」(張った泉の氷が溶ける瞬間)
まあ後半は、約4年の時間差あるとはいえ、成瀬も泉も双方コンテスト受賞に成功するというのは、少し出来すぎかな? と思わないでもないが、成瀬くんは将来プロ志望でもないしね。
泉は神谷の思い出をベースに小説を何度も仕上げ、最後は書籍化に成功する上、新たな年下恋人もできて、前作に比べるとかなりポジティブで前向きなストーリーに仕上がっています。
でもせっかくの大学編だし、どうせならハグ→ほっぺにチューだけでなく、もっと進んだ恋愛描写あって良かったかも。
いやまあ、終盤は社会人編入ってるからフレンチキスだけってことは、ないんだろうけどさ(笑)