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エクスカーションのご紹介③放射線影響研究所見学コース

学会のご用意しているエクスカーションをご紹介しております。エクスカーションをご利用されない方も広島観光の参考にしていただければ幸いです。

トップ画像は広島の建築・都市を紹介するサイト(一部近県もあり) arch-hiroshimayより(https://arch-hiroshima.info/arch/hiroshima/rerf.html)

放射線影響研究所見学コース

HIROSHIMAが世界に知られる平和都市になったのは原爆投下により壊滅的な被害をうけましたが、そこから見事に復興を遂げたためですが、放射線影響研究所は被爆者を対象とした疫学研究を長年実施し、放射線被ばくの健康影響について多くの知見を発信してきた研究所です。

この場所でずっと研究されてきたLSS(Life Span Study)、AHS(Adult Health Study)はぜひ知っていただきたいですし、新しく始まる2世ゲノム調査等の研究の概要を聴くだけでも、疫学研究の奥深さ、興味深さ、難しさを感じることができると思います。

また、学問的価値は素晴らしいのはもちろんですが、建物にも一見の価値があり、研究所のかまぼこ型の建屋は特徴的です。この放影研は2025年度には今の場所から、広島大学霞キャンパスに移転することが決まっており、今の場所を見学できる最後の機会かもしれません。

おまけとして、もしも前川國男氏設計の比治山ホールを見せてもらえるのであれば、こちらは芸術的な面で建物として一見の価値があります。

放射線影響研究所

広島の建築・都市を紹介するサイト(一部近県もあり) arch-hiroshimayより
https://arch-hiroshima.info/arch/hiroshima/rerf.html

広島デルタを見下ろす小高い丘、陸軍墓地の跡地に建てられた、放射線の人体への影響に関する研究所。「放影研」と略されることが多い。日米共同運営の放影研となったのは1975年で、それ以前はアメリカ主導の原爆傷害調査委員会(ABCC)であった。ABCCの目的は被爆者の調査であって治療ではなく、「アメリカが広島を核実験地と見なしている証拠」などと批判され続けた歴史を持っている。ここではABCCの存在の是非については触れず、その建物について見ていきたい。
本作の外観上の特徴は一見すると分かるこのヴォールト屋根だ。この形状はデザインに凝ったためではなく、米軍の「かまぼこ型兵舎」又はそれに類するものを再利用したためと考えられる。ヴォールトとは要するにアーチをたくさん並べた形態であり、構造が簡単な割に頑丈で大容量を確保できるので、第二次大戦期に米軍が前線基地用の兵舎として大量生産していた。終戦後間もない日本では建築資材に乏しかったため、払い下げの「かまぼこ型兵舎」を校舎や教会などに利用したケースが相当数あったらしい。ただしこれほどの規模の施設が現役で使われ、しかも間近に見ることができる場所は国内には少ないと思われ、貴重な存在と言える。やはりアメリカの大きな影を感じずにはいられない、そういう場所だ。

arch-hiroshimaより

LSS(Life Span Study)

寿命調査(LSS)は、疫学(集団および症例対照)調査に基づいて生涯にわたる健康影響を調査する研究プログラムで、原爆放射線が死因やがん発生に与える長期的影響の調査を主な目的としています。1950年の国勢調査で広島・長崎に住んでいたことが確認された人の中から選ばれた約94,000人の被爆者と、約27,000人の非被爆者から成る約12万人の対象者を、その時点から追跡調査しています。
LSS対象者にはまず被爆状況について面接調査を行い、その後、質問票による郵便調査で連絡を取っています。その調査により、生活習慣など、疾病発生と死亡に関連する放射線被曝以外の因子に関するデータが得られています。この集団に基づいて、放射線やその他の因子に関連するがん発生率や死因の調査を行うことができます。
LSS集団から得られたデータの定期的解析が、死亡率(がんやその他の原因による死亡)やがん罹患率(発生率)に関する一連の報告書の基盤となっています。この集団はまた、症例対照調査を通じてしばしば行われる、部位別がんのより詳細な調査の基盤にもなっています。このような調査では、放射線に関連するがんの発生メカニズムやその他の因子の影響の程度について更に解明を進めるため、被爆者のがんの病理組織の分子的解析を行っています。

https://www.rerf.or.jp/glossary/lss/

藤原佐枝子, 山田美智子, 高橋郁乃. 大規模疫学研究の現状─広島・長崎の成人健康調査─. 脳卒中. 2009;31(6):439-442.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/31/6/31_6_439/_pdf/-char/ja

比治山ホール


前川國男氏


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