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抗がん剤が「効く」ってどういう意味か知っていますか?
ここまでコロナやワクチン関係の話を中心に進めてきましたが、ここで少しテーマを変えて抗がん剤のお話をしたいと思います。
抗がん剤の「奏効率」って何?
説明の仕方で最も誤解を生んでいるのが抗がん剤の有効率の説明ではないでしょうか。よく医者は患者さんに「この抗がん剤が効く可能性は30%です」と言った説明をします。もう少し正確に言うならば、「この抗がん剤の 奏効率は30%です」と言うのですが、そのような専門用語を使っても一般の人はわからないので「有効率」とか「効く可能性」という表現の仕方をします。当然、患者さんからすると、「この抗がん剤を受けると30%の人はがんがよくなる」と聞こえてしまうのですが、それは大きな誤解です。一部の例外を除いて、転移しているようながんに対する抗がん剤治療は、完治を目指すものではなく、あくまでも延命を目的としたものなのです。
では、医者が言うところの「抗がん剤が効く」とはどういう意味なのでしょうか。実はこれはかなり医療者側に都合のよい定義になっています。なぜならば「4週間以上にわたり、がんの大きさが30%以上小さくなった状態が続いた」場合、「抗がん剤が効いた」と判断されるからです。ということは、4週間は30%以上小さくなる状態が続いたが、その後再び大きくなり、結局3ヶ月後に亡くなってしまったとしても、この抗がん剤は「効いた」と評価されます。これが医者が言うところの「抗がん剤が効く」という意味です。よく医者の常識は患者さんの非常識と言われます「奏効率」の定義など、まさにその典型だと言えます。
なぜ小さくなる期間は4週間でよいのか
なぜ、がんが小さくなる期間が4週間以上と定められたかはよくわかりません。せめて3か月(10週間)や6ヶ月にしてくれていた方が患者さんの実感にはあうだろうし、理解もしやすいのではないでしょうか。もっとも、3ヶ月とか6ヶ月にしてしまうと、「効いた」と判断される抗がん剤が極端に少なくなってしまう可能性はあります。せっかく開発したのに、結局は効かないというレッテルが貼られてしまうのは、開発した製薬会社からすれば大きな損失です。その損失をできるだけ少なくするために、開発した抗がん剤をできるだけ使ってもらうためにも、敢えて4週間という短い期間を設定したのではと勘ぐりたくなってしまうのは私だけでしょうか。
医者の説明で患者さんをミスリードしている可能性
「抗がん剤が効く」の意味を知っていれば、つらい副作用を我慢しながらも抗がん剤を頑張って受けたいと思う人はかなり減るのではないでしょうか。抗がん剤を受けるのがよいのか悪いのかは一概には判断できませんが、医者の説明の仕方いかんで、患者さんの判断を正反対になることは十分にあると思います。このような医療者しか知らない好都合な定義が医療の世界では当たり前のように存在していること自体、ほとんどの患者さんは知らないでしょうし、そのため患者さんの判断をミスリードしている可能性が大きいのではと思います。
実際、治る可能性に賭け、つらくて苦しい抗がん剤を亡くなる直前まで受け続けることを希望する患者さんも少なくありません。私自身、多くの末期がんの患者さんを診ていますが、抗がん剤を受けなかった方が最後の時間をもっと穏やかに過ごせたのではと思う患者さんがたくさんいました。
抗がん剤は本当に有効なのか
さらに問題になるのが抗がん剤の有効性につて研究した論文です。何が問題なのかと言うと、有効だと言われている抗がん剤を実際に調べてみると、そうではなかったという研究があるのです。例えば1995年から2020年までに欧州医薬品庁(EMA)に承認された抗がん剤の追加効果について評価したところ、その63%は利益が極めて少ないか有効性が認められなかったという論文が2024年にブリティッシュ・ジャーナル・メデスン(BMJ)という一流の医学雑誌で発表されました。患者さんにとってほとんど利益のない抗がん剤のために、世界中で1年間で10兆円以上の無駄な費用をがん患者さんは支払っており、これらは製薬企業の利益として回収されているとこの論文の著者は批判しています。
また他の論文でも生存期間の延長や、生活の質(QOL)の改善などに関して抗がん剤を調べてみると、承認された抗がん剤の80~90%は患者さんにとって意味のある有益性は示さなかったという研究もあります。
こうしてみると、抗がん剤とはいったいどの程度、患者さんに役に立つものなのか考えさせられてしまいます。
イラスト:子英 曜(https://x.com/sfl_hikaru)