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【読書記録】2024年11月3日〜11月9日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 気がつけば立冬を過ぎて暦の上では冬。
 そして今年も残り50日あまり。
 早いもんです。
 私が登録している読書支援サイト「読書メーター」でも、今年読んだ本のベストを決める「読書メーター OF THE YEAR 2024」の投票が始まりました。

…で、運営さんが選んだ今年のベスト20のラインナップをみてみたら、なんと、一冊も読んでなかったという。
 まぁ、この時期になって慌てて今年流行った本を読むというのは、毎年のことなんですけどね。
 読書好きの皆さんの今年のイチオシ小説はなんですか?
 よかったら、コメントで教えてください。

 では、今週出会った本たちの紹介に移ります。

【2024年11月3日〜11月9日に出会った本たち】

⚪️一線の湖

著者 砥上裕將

【内容紹介】
 主人公・青山霜介が、ライバル・千瑛と湖山賞を競い合った展覧会から2年が経った。大学3年生になった霜介は水墨画家として成長を遂げる一方、進路に悩んでいた。
卒業後、水墨の世界で生きるのか、それとも別の生き方を見つけるのか。優柔不断な霜介とは対照的に、千瑛は「水墨画界の若き至宝」として活躍を続けていた。千瑛を横目に、次の一歩が踏み出せず、新たな表現も見つけられない現状に焦りを募らせていく霜介。そんな折、体調不良の兄弟子・西濱湖峰に代わり、霜介が小学一年生を相手に水墨画を教えることになる。子供たちとの出会いを通じて、向き合う自分の過去と未来。
そして、師匠・篠田湖山が霜介に託した「あるもの」とはーー。墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画を通して、霜介の葛藤と成長を描く、感動必至の青春小説!

出版書誌データベースより

【感想】
 色鮮やかな水墨画の世界、再び。
 前作から2年。大学3年生になった青山霜介は将来のビジョンが見えず、未だ水墨画を続けてはいるもののそっちの方でも自信が持てずにいます。
 前作もそうでしたが、水墨画を描いているシーンは、実際には見たことがないのに、読んでいるだけでその絵が頭の中に浮かんできます。特に最後の篠田湖山と四人の弟子たちの共演はダイナミックでありながら繊細で、読みながらドキドキワクワクが止まりませんでした。そして、
 「答えが出ない問いを考え続けること」
「見えないものを感じて描くということ」
の大切さを知りました。
 水墨画がある意味「引き算の芸術」であることも。

⚪️スピノザの診療室

著者 夏川草介

【内容紹介】
 雄町哲郎は京都の町中の地域病院で働く内科医である。三十代の後半に差し掛かった時、最愛の妹が若くしてこの世を去り、 一人残された甥の龍之介と暮らすためにその職を得たが、かつては大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕医師だった。 哲郎の医師としての力量に惚れ込んでいた大学准教授の花垣は、愛弟子の南茉莉を研修と称して哲郎のもとに送り込むが……。

出版書誌データベースより

【感想】
 海堂尊さんの「チーム・バチスタ」シリーズが医療問題の最先端の物語だとしたら、こちらは地域医療という別の意味での最先端、言い方を変えれば医療の最末端(こういう言葉があるかは知らないけど)の物語とは言えないだろうか。
 数々の難しい手術を成功させた凄腕の医師・雄町は、ある事情をきっかけに大学の医局を退局し地域医療に身を投じます。
 高齢者の看取りや治療拒否などそれまでとは全く違う医療の側面に戸惑う主人公。医師には「科学者と哲学者の二つの顔がある」という言葉と、「飲み過ぎで病気になったのは自業自得だから生活保護は受けない」という高齢者の生き様が心に残りました。

⚪️成瀬は天下を取りにいく

著者 宮島未奈

【内容紹介】
 「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。各界から絶賛の声続々、いまだかつてない青春小説! 中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。

出版書誌データベースより

【感想】
 遅ればせながら参戦!
 なるほど、これが「読書メーター OF THE YEAR 2023」そして「本屋大賞2024」第1位の実力か。
 確かに読み始めると、危なっかしいのにカッコいい成瀬あかりから目が離せなくなりますね。
 思春期の溢れんばかりのエネルギーを全力で発散する爽快感。かなりローカル色の強い物語で、ちょっとついていけない部分はありましたが、ブルドーザーのような物語のパワーに圧倒され、読みながらなんだかニヤニヤが止まりませんでした。
 もし自分の子供が成瀬みたいだったら、心から応援してあげられるだろうか。うーん、孫だったら手放しで応援しちゃうかも。
 主人公は一応成瀬ですが、キーパーソンは相方の島崎。

⚪️成瀬は信じた道をいく

著者 宮島未奈

【内容紹介】
 唯一無二の主人公、再び。その前途、誰にも予測不能! 成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応えますますパワーアップの全5篇!

出版書誌データベースより

【感想】
 「成瀬」シリーズの第二弾。
 今回は高校から大学時代のエピソード。
 語り手は成瀬本人ではなくて、成瀬に憧れる小4の女の子、成瀬の父親、成瀬のバイト先のクレーマー、成瀬と一緒に大津観光大使に選ばれた女子大生、そして相方の島崎。
 みんな何かしら心にモヤモヤを抱えているけれど、そこに成瀬がクールに、でもストレートに問いかけたり行動することで勇気をもらい、それぞれの一歩を踏み出すことができます。
 最終話の〝探さないでください〟はミステリー要素もあってハラハラドキドキ。まさか成瀬失踪事件の真相が、あの有名番組に出演することだったとは。

⚪️作家刑事毒島の嘲笑

【内容紹介】
 右翼系雑誌を扱う出版社が放火された。思想犯のテロと見て現場を訪れた公安の淡海は、作家兼業の刑事・毒島と出会う。犯罪者をいたぶることが趣味の彼は公安の考えも小馬鹿にし、淡海は反発。衆議院選挙が迫る中、さらに極左集団が絡む事件が勃発、ついに魔の手は候補者に向かう。テロは防げるのか? 歪んだ正義を毒舌刑事が斬る痛快ミステリー。

出版書誌データベースより

【感想】
 多少偏った思想の有名出版社への放火事件、大学での思想の対立をベースにした殺人事件、ブラック企業の労働環境を苦にした自殺、そして沖縄の基地問題。これらを陰で操る組織。それに立ち向かうのは毒島の毒舌と名推理。
 踊らされた犯人たちの信じる主張を完膚なきまでに叩きのめす毒島の鋭利な毒舌は爽快。
 「上級国民」という言葉は知っていましたが、「プロ市民」という言葉はこの物語で初めて知りました。
 結局のところ頭のいい人たちが、自分は頭がいいと思っている人たちをその気にさせて一般市民をコントロールし、事を起こすという手法には恐怖を感じます。

⚪️ミニシアターの六人

著者 小野寺史宜

【内容紹介】
 銀座のミニシアターで、二年前に亡くなった末永静男監督の追悼上映が行われている。二十一年前に公開された『夜、街の隙間』、上映は一週間だけ。最終日前日、午後四時五十分の回。天気は雨、観客は六人だった。
この映画館で働いていた三輪善乃は、公開当時にチケット売場の窓口にいた。山下春子にとっては、大学の同級生と成り行きで観に行った作品だ。自主映画を撮っていた安尾昇治は、末永のデビュー作でその才能を目の当たりにし、道を諦めた過去がある。沢田英和は、この作品に元恋人との苦い思い出があった。誕生日デートのはずだった川越小夏は、一人でスクリーンを眺めている。映画監督を目指す本木洋央は、生物学上の父親が撮った作品を観に来ていた……。観客たちの人生と、『夜、街の隙間』のストーリーを行き来しながら、出会いとすれ違い、別れを繰り返す日々の中にある奇跡を鮮やかに描く。
『ひと』『まち』『いえ』の著者が、銀座という街とミニシアター、そこに集う人々、そして映画への愛を描き切った渾身の人生讃歌。

出版書誌データベースより

【感想】
 撮影した映画監督が亡くなった事で21年ぶりに上映された一本の映画と、その映画を観に来た観客六人それぞれの物語。
 その映画に深い思い入れがある人もいれば、たまたま観に来た人もいる。素敵な思い出がある人もいれば、苦い思い出がある人もいる。
 タイトルには「六人」とあるけれど実は…。という仕掛けや、連作短編集によくある各話の主人公同士の関わりがほとんどないというのも面白い。
 ただ物語に登場する映画がこの小説オリジナルのものなので、映画のシーンはというか、その映画の魅力みたいなものは自分はあまり感じ取れなかったのが残念でした。これが自分が観たことがある映画だったらもっと感情移入できたかもしれませんね。

⚪️水底のスピカ

著者 乾ルカ

【内容紹介】
 容姿端麗で頭脳明晰な転校生・汐谷美令は、白麗高校中から注目を集めるが、些細な事からクラスで孤立してしまう。最初の友達で孤高を演じる松島和奈、美令が孤立する原因を作った城之内更紗。それぞれに秘密を抱えながらも、深く関わっていゆく三人の濃密な一年の軌跡を描く。アンジェリーナ1/3との対談を収録。

出版書誌データベースより

【感想】
 眉目秀麗で成績優秀な転校生・美令、クラスのカースト上位・更紗、そして一歩離れて周囲を観察する和奈。この三人それぞれが抱える秘密、悩み。辛い現実もあるけれど、やっぱり高校時代って素敵だなぁと読み終えて感じました。
 メインは三人の女子が友情を育んでいくストーリーですが、ここに加わる男子二人・萌芽と清太がとてもいい味を出してます。
 子供達はしっかりしているのに美令の両親ときたら。子供からしたらまさに「ハズレくじ」。でも親だから逆らえないという辛さ。
 単行本では一人だった書影前面が、文庫化して三人になってるのがなんか素敵。

「人の秘密は借金みたいなものだよ。連帯保証人になる覚悟はある?」
(中略)
「ないなら知る資格もないんだよ」

本文より

という言葉が、強く心に残りました。

⚪️わたしの知る花

著者 町田そのこ

【内容紹介】
 「あんたは、俺から花をもらってくれるのか」
虫も殺せぬ優男、結婚詐欺師……?77歳で孤独死した老人の、誰も知らない波瀾に満ちた意外な人生とは?

出版書誌データベースより

【感想】
 公園で画板に向かって一心不乱に絵を描く風変わりな平老人と、女子高生・安珠の奇妙な交流から始まる物語。
 最近流行りのジェンダー問題なども絡めつつ、昭和から平成、そして令和を生きた平老人の壮絶な半生が、彼に関わった人たちによって語られます。
 若い頃いわゆるイケメンで根無草のような生き方をし、強盗未遂事件まで起こし服役したという平老人の不器用な優しさは、もしほんの少しタイミングが違っていたら、全然違った結末になっていたはず。
 平老人が物語を書き続けた理由に触れた時、そしてその物語のラストを読んだ時胸がつまりました。

【まとまらないまとめ】

  いかがでしたか。
 今週は冒頭でも触れた「読書メーター OF THE YEAR 2024」のノミネート作を4作(+1冊)、そして新刊をコンスタントに追いかけている作家さんの本が3冊。
 いやぁ、「成瀬シリーズ」、本屋大賞発表当時はなぜか触手が伸びなかったんですが、やっぱ噂通りすごいですね。圧倒されました。
 よく「キャラが立つ」といいますが、今週は成瀬あかりのキャラに全て持っていかれた感じです(おせーよ!)。際立ったキャラという意味では毒島刑事もそうだけど、まぁあっちは捻くれオヤジなんで、10代女子のド直球な魅力にはかないませんね。

最後に
 読書っていいよね。


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