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【読書記録】2024年1月7日〜1月13日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 昨日(1月13日)もつぶやきましたが、1月11日に待ちに待った伊吹有喜さんの〝犬がいた季節〟の文庫版が刊行されました。
 …で一番気になったのは単行本版にあったあの仕掛け。
 文庫版の刊行を知った時からこのことが気になって気になって。
 結果はつぶやいた通りですが、出版社の皆さんには、こういった「紙の本でしか味わえない仕掛け」をもっともっと企画していただきたいと切に願います。

 ちなみに単行本版の〝犬がいた季節〟について書いた私の駄文はこちら。

↓↓

では早速、今週出会った本たちをご紹介。

【2024年1月7日〜1月13日に出会った本たち】

⚪️森に願いを
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 深呼吸したくなる。涙と希望の光が差す〈読む森林浴〉ミステリー。森に迷い込んだ人々の心温まる出会いの物語。 いじめ、進学、就職、恋愛、不治の病……それぞれに人生の悩みを抱え、希望を失った人々。彼らが迷い込んだ街中の広大な森の中に、その青年はいた。能天気に見える森番の青年が語りかける言葉は不思議な力で彼らの心に届く。ふれあいの先にある彼らの運命は。そして、森と青年に隠された禁断の秘密とは――驚きと感動に満ちた、希望のミステリー。解説/青木千恵

出版書誌データベースより

【感想】
 不登校の小学生を抱える母親。自己評価が高すぎて就職できない女性。自分の存在意義を見出せない高校生。リストラを告げられた諦念間近の男性。同僚のせいで不幸になったと嘆く女性など、とにかくそれぞれ抱えている問題が深刻で、正直読んでいるこっちの気が滅入ってしまうほど。
 しかしそんな人たちにそっと寄り添ってくれる森とその管理をする青年。彼は決してお説教じみたことは言わず、ほんの少しだけ肩をポンと叩くような感じで森を訪れる人たちを気遣う。この距離感がとてもいい。
 どのエピソードも結末までは描かれませんが、どれも一筋の希望が見えるラストなのが素敵。そして最後に明かされる森の番人の秘密も。

⚪️君の波が聞こえる
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 一学期の終わりの日、ひとりぼっちで海を見ていた健太郎は、沖に浮かぶ謎の城に迷い込む。そこには同じように囚われた人々がいた。元の世界に戻るには「出城料」が必要だという。それはお金ではない何からしい。健太郎はもう一人の少年と次第に心を通わせ、誓いを立てる。二人でここを出るんだ、初めて見つけた友達だからー。思春期の友情が胸に響く青春小説。

裏表紙より

【感想】
 2011年に〝四龍海城〟として刊行された物語を文庫化にあたり改題。この改題したタイトルが読了後に心に沁みます。
 舞台は北海道の海辺の町。主人公は吃音のために周囲と距離を置いている中学一年生の健太郎。
 彼は一学期最後の日、海上に聳える四龍海城という建物に迷い込んでしまいます。
 その建物はいつ、どんな目的で建てられたのかとか、日本の中ではどのような扱いなのかとか色々疑問はありますが、そんな無粋な話は横に置いといて、とりあえずその建物から出るためには「出城料」を払わなくてはならないという。
 建物の秘密、変容していく囚われの人々、出城料の謎。メインは健太郎の成長譚ですが、とにかく最後が切ない。
 読了後こんなに切ない気持ちになったのは久しぶりです。

 物語の鍵を握るのがこの曲。↓
 ぜひ読了後にお聞きください。
 物語とは関係ありませんが、この映像の中に懐かしい映画のタイトルロゴがたくさん出てきて、これがまた…ね。

⚪️心音
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 城石明音は先天性の心疾患を患っていた。8歳の時に悪化し、両親は米国での心臓移植手術を決断する。募金活動により1億5千万円という莫大な費用を集め、明音は一命を取り留めたが、帰国した明音を待っていたのは、幸福だけではなかった。恨み、嫉妬、同情、愛情、様々な思いを抱えた人々が明音の人生を動かしていく。そして――。骨太の社会派エンターテインメント!

出版書誌データベースより

【感想】
 心臓移植と聞くとまず頭に浮かぶのが医療技術の進歩。そして移植に成功したレシピエントの明るい未来。
 心臓移植は果たして本当に幸せな未来をもたらすのか?
 移植を待ち望んでいる患者とその家族にとっては愚問かもしれないが…。
 この物語の主人公・城石明音は先天性の心疾患を患い、寄付を募って渡米し、心臓移植を受けた女性。とにかくいろんな立場の人たちの気持ちについて考えさせられる物語でした。
 明音が最後に見出した「自分が生きる意味」とは?
 連作短編形式ですが、どのエピソードもとにかく辛い。中盤に一瞬だけ見える「幸せな生活」でさえ、その後の…。

⚪️青い花は未来で眠る
 著者 乾ルカ

【内容紹介】
 私が生きていることに、意味はあるのかな。かつて自分をかばって姉を失った高校2年生の優香は、乗り込んだ修学旅行の飛行機でハイジャック事件に遭遇する。飛行機は不時着するが、生き残った乗客はわずかに5人。テロ事件の犯人は、見慣れない青い花を身につけた4人の美青年だった。謎を秘めたまま迫りくる彼らと対峙して、生きることに無気力だった優香は変わりはじめる――。少女が未来を切り拓く、鮮烈なSFサスペンス。
(『11月のジュリエット』を加筆修正のうえ改題)

出版書誌データベースより

【感想】
 ある日、成田から飛び立ったジャンボジェット機がハイジャックされ、どこかの湖面に着水する。生存者はハイジャックした4人の犯人と、修学旅行のために乗り込んでいた高校生の梅木優香と同級生の小田、引きこもりの青年・陣内、葬儀会社社員の白山、そして研究者のイグチ。
 彼ら5人と犯人たちの生き残りをかけた戦いが始まる!
 …というありがちな話にはなりません。なぜなら力の差が歴然で正直勝負にならないから。
 かと言って知恵と工夫で対抗という感じでもなく…。
 何より驚いたのは、序盤のジェット機に乗り合わせた乗客たちが狂っていくグロテスクな描写。そしてサスペンスかと思って読み進めていたら、犯人たちの目的が明かされる後半からSF的な話にシフトしていくという展開だったこと。

⚪️なぜ人と人は支え合うのか(再読)
 著者 渡辺一史

【内容紹介】
 障害者について考えることは、健常者について考えることであり、同時に、自分自身について考えることでもある。2016年に相模原市で起きた障害者殺傷事件などを通して、人と社会、人と人のあり方を根底から見つめ直す。

筑摩書房書誌情報より

【感想】
 乾ルカさんの〝心音〟を読んで思い出し再読。、
 2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件や、映画にもなった「こんな夜更けにバナナかよ」の主人公で、筋ジストロフィー患者の鹿野靖明さんと著者の関わりなどを通して、「障害」や「障害者」について考えていく本書。
 まず、
「障害者って、生きてる価値あるの?」
「なんで税金を重くしてまで、障害者や老人を助けなくちゃならないの?」
「自然界は弱肉強食なのに、なぜ人間社会では弱者を救おうとするの?」
なんて障害者や高齢者の存在意義についてネットであれこれ極論を言ってる人たち、「障害者」を「自分」に置き換えてみてほしい。そして自分ももしかしたら明日、不慮の事故や病気で障害を背負うかもしれない、もしそうならなくてもいつかは年をとり、誰かの世話になるということを。
 例えとして最もわかりやすかったのは「助けられる人」がいるから「助ける人」がいる。もし助けられる存在がいない世の中だったら…。という話。
 それから「福祉」とはそもそもシステマティックなものではなくて、「困っている人がいたら損得勘定なしで自然に手を差し伸べる気持ち」という話に納得。
 それにしても障害者運動黎明期の人たちの勢い。彼らの運動のおかげで公共施設や駅にスロープやエレベーターが設置され、それを障害者だけでなく高齢者やベビーカーをおすお母さん、そして大きなスーツケースを抱えたビジネスマンなどたくさんの人が便利に、そして快適に利用しているという現実。
 医療・福祉業界で働く人にはぜひ手に取っていただきたい1冊。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか・
 2023年12月の最終週から続けての乾ルカさんブーム。
 今回読んだ〝心音〟はかなりの衝撃で、2024年1月10日にして今年の読書の基準が決まってしまった感じです。
 さて、今年はこの本を超える作品に幾つ出会えるか。
 楽しみ楽しみ。

最後に
 読書っていいよね。


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